梅雨時期のアスパラガスの品質を保つ収穫後管理

農業研究センターアグリシステム総合研究所野菜栽培研究室

研究のねらい

アスパラガスは呼吸活性が高く、収穫後急速に水分を失うことで品質が低下します。品質保持のためには、収穫後の予冷や吸水処理が必要です。一方、長時間の吸水処理は、糖含量の低下や腐敗の発生といった品質低下を招くとされています。
近年、県内のアスパラガス産地では、梅雨時期の出荷において穂先の軟化症の発生が問題となっています。その一因として、夕方の収穫後から出荷までの予冷温度や長時間の吸水処理による影響が考えられます。
そこで、品質を保持しつつ軟化症の発生を抑える予冷温度および吸水時間について検討しましたので紹介します。

写真 吸水処理の様子

研究の成果

1.含水率は吸水処理により増加しますが、処理時間の違いによる有意な差はみられません。予冷温度8℃では、吸水処理を行わない場合、予冷前に比べ含水率が減少します(図1)。

図1 吸水処理後の含水率

2.表皮の強度は吸水時間が長いほど、また予冷温度が高いほど低下する傾向にあります(図2)。

図2 吸水処理後の表皮の破断荷重

3.吸水処理により保存後の重量が増加し、吸水時間が長いほど増加率が高くなります。一方、吸水処理を行わない場合、2%近くまで水分が減少し、萎れ発生のリスクが高まります(図3)。

図3 保存後の重量増減率

4.吸水時間が長いほど保存後の軟化症発生程度が高くなる傾向がみられ、慣行の12時間吸水で有意に高くなります。また、吸水時間が長いほど糖度が低下する傾向にあります(表1)。

以上のことから、梅雨時期のアスパラガスを5~8℃で予冷する場合、吸水時間を2~4時間とすることで品質を維持しつつ、軟化症の発生を抑えることができます。

成果活用面・留意点

1.供試サンプルは、梅雨時期(令和3年6月16日・17日・23日・24日)の16時頃に生産者ほ場にて収穫し、選別・洗浄を行ったものを用いました。
2.供試サンプルは、すぐに所内の予冷庫にて現地に合わせた予冷温度(5℃および8℃)で吸水処理を開始し、処理開始後2時間、4時間、12時間(慣行)で水揚げし、引き続き同じ温度で予冷しました。吸水無しは、各予冷温度で吸水をしない状態で12時間置いたものとしました。予冷後は、実際の温度変化を模して5日間(5℃1日間(選果場)、10℃2日間(輸送)、15℃2日間(棚もち))保存しました。品質調査は、吸水処理後および5日間の保存後に行いました。
3.静置試験で行った結果であり、輸送中の振動等による荷傷みは考慮していません。

 

No.995(令和4年(2022 年)6月)分類コード 02-04
梅雨時期のアスパラガスの品質を保つ収穫後管理