潜熱蓄熱材の設置で半促成無加温スイカの着果率が向上する

研究のねらい

半促成無加温スイカ栽培において、1~2月に交配を行う作型は本県の主要な作型ですが、低温時の着果不良による再交配の実施など労力の増大が問題となっています。そこで、特定の温度で相変化により蓄熱と放熱を繰り返す潜熱蓄熱材(Phase Change Material、以下PCM)の設置による、着果率の向上・交配作業効率化技術を開発しましたので紹介します。

研究の成果

1 畝中央部に15℃タイプのPCMカプセルを1株につき1枚設置し、子づるの伸長期から交配前までの間、つる引き作業を行いながら子づるの成長点を継続的にPCMに載せておき、交配から着果確認までは雌花(果実)をPCMに載せて保温を行います。(図1、図2)

図1 ほ場内におけるPCMの設置状況
(子づるの伸長期、単棟ハウスの畝面を真上から見た図)
図2 生育ステージ毎のPCM設置状況

2 PCM上面の夜間の温度は、無設置に比べ平均2.4℃高く保たれ、16℃以上に保温することができます。(表1)

3 スイカの成長点を子づるの伸長期から交配前までPCM上に載せて保温することにより、子づる16節以降に着生する最初の雌花の着生節位は低く、開花時期が早まり、開花日のばらつきが縮小しました。(表2)

4 雌花を交配時期から着果確認までPCM上に載せて保温することにより、子づる16節以降に着生する最初の雌花の着果率および株全体の雌花着果率が向上し、交配回数を減らすことができました。また、収穫に至らない未着果株率が低下しました。(表2)

5 着果後、保温を続けても果実肥大促進効果は無く、平均果重や品質に差は認められませんでした。(データ省略)

 

以上の結果から、 PCMでの保温により1~2月に交配する半促成無加温スイカの着果率が向上し、交配作業が省力化され、未着果株の発生を低減できました。その効果は、厳冬年で大きくなりました。

 

普及上の留意点等

〇周辺温度15℃以上で吸熱し15℃以下で放熱する板状のPCM(縦28cm×14.5cm×厚さ2.7cm1kg)を使用しました。本製品はポリエチレン製のカプセルに内容液が充填されており、繰り返しの使用が可能です。

〇本試験は無加温ハウス(外張 厚さ0.15mmPO農ビ、内張 厚さ0.05mm農ビ3)における半促成スイカ(穂木「朝ひかりSR」、台木「かちどき2号」、花粉品種「SA-75」、畝幅260cm×株間65cmN:P2O5:K2O=1.4:1.4:0.7(kg/a)、3本仕立て1果どり)での結果。定植は2016年度:1214日、2017年度:1219日、2018年度:1226日に実施。なお、交配に用いた花粉品種「SA-75」は試験と同一ハウスで栽培。

〇導入にあたってはハウス内の低温箇所への限定的な設置や、交配・着果完了後、次に交配するほ場に利用し利用率の向上を図るなど、コストを下げることが重要です。

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