豚の唾液を用いたストレスマーカー測定法により精度の高いストレス評価が可能となりました

研究のねらい

豚の生産性向上や疾病対策、アニマルウェルフェア推進のため、豚にかかるストレスを評価する客観的手法への関心は高まっています。
そこで、養豚現場で活用しやすい採血が不要で、無保定により採取した(写真1)唾液を用いた、精度の高いストレスマーカー(コルチゾール)測定法を確立しましたので紹介します。

写真1 無保定での唾液採取

研究の成果

1.採材は豚房内の壁面(柵)付近で、作業者に対し興味を示した豚を1頭ずつコンパネ(合板)を用い仕切った状態にすると、ワイヤー等で保定することなく採材が可能でした。作業者は採材用のコットンを鉗子で保持し、豚の口元にコットンを近づけ、自発的にコットンを咬ませ、十分量の唾液を採取します。

2.床敷や糞など汚れが付着しやすいため、唾液採取に用いるコットンの表面をガーゼで巻くことで(写真2)、採取する唾液中への夾雑物の混入を防ぎます。
採取した唾液は現地で速やかに氷冷し、前処理から間接酵素免疫法による分析に供することで、安定したコルチゾール測定値が得られました(写真3)。

写真2 唾液採取用コットン
写真3 採取した唾液

3.本技術を用いて、県内の実証試験協力農場の肥育豚でストレス負荷の前後でストレスマーカーを測定したところ、コルチゾール値の上昇を高い精度で測定でき、農場における豚のストレスを客観的数値として評価できました(図1)。

図1 実証農場におけるコルチゾール測定によるストレス評価の例

※令和元年9月に実施した肥育豚(約140日齢)におけるデータ。豚群A・Bで異なる構造のオートソーティングシステム(出荷体重選別装置)を各15頭通過させ、その前後のコルチゾール値を測定。
《結果:豚群Bを通過させた構造のほうが豚にかかるストレスが強いと評価》

4.本技術は、肥育豚だけでなく繁殖母豚や子豚でも応用が可能で、養豚農場における様々なストレス発生状況の把握・分析評価にも活用できます。

普及上の留意点等

精度の高い評価のためには、唾液の採材によってストレスをかけないことが重要で、興奮させることなく慎重に行う必要があります。また、コルチゾール値は季節差や日内変動の影響を受けやすいため、実施時期や時間を統一することが重要です。

お問い合わせ先

農業研究センター 畜産研究所中小家畜研究室
TEL】096-248-6433