高冷地におけるエゴマの省力安定生産技術

研究のねらい

エゴマはイノシシやシカの食害を受けにくい事が知られていますが、九州での栽培事例は少なく、栽培技術が確立されていませんでした。
そこで、イノシシやシカの被害が比較的多い高冷地に適する品種を選定し、機械化に対応した栽培技術を確立したので紹介します。

研究の成果

1.高冷地に適するエゴマ品種は「田村種中生黒」、「田村種中生白」、「島根在来」です。早生種は日長反応による生育障害がみられ、収穫期が早いことからカワラヒワ等による鳥害を受けやすくなります。晩生種の「韓国在来」は高冷地では収穫期前に霜害を受ける場合があります(1、図1)

図1 日長反応による生育障害

2.エゴマの播種適期は6月1日から7月10日頃です。5月上旬に播種すると日長反応による生育障害がみられる場合があり、7月20日播種では生育量が確保できないまま開花して収量の低下幅が大きくなります(表1、表2)。

3.エゴマは128穴セルトレイで25日程育苗後、露地野菜用移植機で定植できます。徒長して苗丈が22cmを超えると定植精度が低下するため、培養土の窒素含有量は雨天で適期に定植できない場合でも徒長しにくい150㎎/Lが適します(図2、図3)。

図3 野菜移植機によるエゴマの定植

4.収穫には雑穀を収穫可能な汎用コンバインが利用できます。その場合、半分程度落葉した頃から落葉が終わる頃までに刈取ることで収穫ロスを低減できます(図4、図5)。

図4 収穫適期頃のエゴマ

5.機械化体系によるエゴマの作業時間は10a当たり約18時間でした(表3)。

6.以上のことから、高冷地のエゴマ栽培では「田村種中生黒」、「田村種中生白」、「島根在来」が適し、播種適期は61日から710日頃です。
露地野菜用移植機や汎用コンバインを用いることで省力栽培が可能です。

普及上の留意点等

1.エゴマは収穫期頃にカワラヒワ等による鳥害を受けやすいので対策が必要です。

2.エゴマは収穫適期幅が1週間程度と短く、播種時期をずらしても収穫期は変わりにくいので、規模拡大により収穫期の幅を広げる必要がある場合は収穫期の違う品種を組み合わせましょう。

3.イノシシやシカによる食害が頻発する現地ほ場でも、エゴマに対する食害は認められませんが、ほ場を通過する際の踏圧程度の被害は発生する場合があります。

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農業研究センター 高原農業研究所
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