こだわっとる農

イチゴ(ゆうべに)、水稲

山鹿市 時代の要望に応えた安定出荷ができるイチゴ産地づくり

山鹿市 本田 和稔さん

はじめに

私は、山鹿市中地区にてイチゴを25a栽培しています。山鹿市は、言わずと知れたスイカ・メロンの一大産地で、スイカの作付面積においてJA鹿本は日本一を誇っています。イチゴは、昭和50年代頃から旧鹿本町・菊鹿町を中心に作付けされており、平成16年頃から県が開発したオリジナル品種「ひのしずく」を栽培し始め、現在は「ひのしずく」の県内一の産地となっています。
このイチゴにおいて、平成21年から6年間JA鹿本イチゴ部会の部会長を務めさせていただきました。今回は、部会長時代の取組と、今後の展望を紹介します。

イチゴ部会長として

不耕起栽培の導入

鹿本地域は、定植時期(9月)の天候が不安定なため、良い苗を育成しても定植後の活着がスムーズに行えずにいました。また、作土が浅く、礫が多いため畦つくりには大変苦労しました。活着については、紙ポット利用による促進ができないか検討を行ってきましたがうまくいきませんでした。このようなおり、JAさが唐津で不耕起栽培をされていることを聞き、視察を行いました。この地域に反収7~8トンの生産者がいることを知り、その方が不耕起栽培を14年続けていることが分かりました。この地域はリアス式海岸地帯で、鹿本地域と同じ様に、礫土が多い中、収量を上げるために高畦不耕起栽培を行っていました。
視察先で得た知識をもとに平成17年からは、不耕起栽培を鹿本で一番目に取組んできました。始めは、畦つくりに苦労しましたが、夜冷など様々な試験を繰り返しながら、5年間増収を続け、現在は安定した収量を上げています。
「ひのしずく」は、食味が良く高齢化した生産者の省力栽培品種として普及しました。現在では、山鹿市のイチゴ作付面積に対する「ひのしずく」の面積は、8割を占めています(平成28年度産)。

不耕起での畦づくり状況
パックセンターの作業風景

パックセンターの整備

イチゴ生産者の労力軽減と規格の均一化、パッケージの多様化に対応するため、パックセンターの設立に努めました。当初は、山鹿市のみで行っていたものを、鹿本地域全体で一元集荷を行うため、現鹿本町野菜集荷場にて施設を更新して設置しました。冷蔵庫も同時に整備し、個人毎に積み下ろしが容易にできる台車の導入も行いました。

最盛期でも積み下ろしが容易な台車

GAPへの取組

以前、他県においてイチゴの農薬不適正使用による事故が発生したのを受け、私はGAPの取組み手法について深く共感しました。
そこで、以前からトレーサビリティーには取り組んでいましたが、より生産に関する工程全体をチェックできるGAPの推進に部会で取り組みました。
JA-GAPを推進し、食品に対する工程管理の重要性を説いてきた結果、部会員全員が取得できたため、現在では、よりレベルの高い県版GAPについて新たに取り組んでいます。

今後の展望

イチゴ一途な生産

新たに県で開発された「ひのしずく」は、良食味果で市場からの要望も大きいため、今後も安定的な出荷を進めていきたいと考えています。
また、「ゆうべに」についてもH27に本地域で最初に作付けをスタートした一人ですが、本年度産から本格的に作り始めました。年内収量が格段に向上しましたので、「ゆうべに」の特性を活かした作付体系の確立を目指しています。

夢大地館での販売

鹿本地域では、昭和55年から県下でいち早く観光朝市を開催していました。私が若い頃所属していた4HC等が主催となり、毎週日曜日朝6時~8時までの時間帯で実施し、27年間も続けました。
現在は、JAかもと夢大地館がその役割を担っており、毎年販売金額を更新しています。おかげで生産者の出荷形態のバリエーションが多くなり所得向上にもつながっています。同館は、高品質な農産物が揃うため、県外からの消費者も多く連日にぎわいを見せていますので、私たちも積極的に同館に出していきたいと思います。

後継者育成

現在、イチゴ部会は58戸で構成していますが、60歳以上が7割を占め今後の産地維持が難しくなってきています。そこで、部会では、廃作予定者にかわって新規参入者が作付を行うことができるよう、マッチングを行い、技術支援を行ってきました。現在、JAかもとが新規就農者向けの研修施設を建設中ですが、研修終了後に部会や地域が受け入れるような組織作りができればと考えています。

土地利用型は地域ぐるみで

平成12年から集落営農組織である中営農組合を設立しました。現在、オペレータ4人を雇用し、6条刈コンバイン等の機械整備も行っています。隣接地区の古閑地区も合併し、遊休農地をなくす努力を行っています。農業は、いろんな形態があり、目標も異なっているため、部会組織になじまない生産者も増えています。
今後、産地を維持するため、どのようにすべきかJAや関係機関の協力を得ながら、楽しく農業を持続できる環境を作っていきたいです。

プロフィール

本田 和稔さん
●経営概要
イチゴ(ゆうべに) 25a
水稲(集落営農:3ha)

●主な労働力
3人(父、常雇用)

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