こだわっとる農

ブドウ(ワイン用)、水稲、クリ、タケノコ

山鹿市 最高のワインを目指して ~常に研究・常に努力~

平川 洋介さん・康子さん

はじめに

私の住む菊鹿地域は、中山間地に位置し、米、クリ、アスパラガスなどの農産物が高く評価されています。
私は昭和30年に米、クリ、タケノコの栽培を行いながら、土木建設業にも従事していました。平成12年に退職した後、新たにワイン用ブドウの栽培にも取り組み、高品質なブドウ生産に力を入れてきました。

経営面について

1.地域の特性を生かした品目の導入

ほ場は菊鹿町の中山間部(標高200m)にあるため、狭い耕地面積を有効に活用しています。昼夜の寒暖差を活かしたブドウ栽培を中心に、水稲、タケノコなど園内の立地条件に合った品目を組み合わせた複合経営を行い、年間を通して収入が得られる作付体系をとっています。

2.高齢者でも取り組み可能な軽労力・安定収益のブドウ栽培

ワイン用のブドウは、労働負担が比較的軽く、また、市況に左右されない契約栽培を行っているため、毎年安定した所得が確保でき、高齢者でも取り組み易い品目となっています。
生産したブドウは、熊本ワイン株式会社と全量出荷契約で、町内の集荷所にコンテナで搬入し、同社が引き取りに来ることで、出荷経費を抑制しています。

生産へのこだわり

1.樹体状況の把握と適期管理の実施

「シャルドネ」などのワイン専用種のブドウは、本来、ヨーロッパ地域の乾燥した気候に適応した作目です。このため、熊本県のような高温多湿な地域で栽培することは困難と言われています。このような不利な気象条件下で、病害虫被害が無く、かつ高品質なブドウを生産するためには、降雨を遮断する雨除け施設での栽培を前提に、日頃の観察と水管理、防除等の各管理を徹底することが重要となります。
そこで私は、これらのことを念頭に入れ、毎日早朝から園に足を運び、ブドウの樹の変化を観察しています。日々、注視することで、防除、新梢管理などの基本管理の実施時期を決定し、病気に弱いワイン専用種を確実に作りこなすよう心がけています。
雨が多い年には、地域内で果房への「灰色かび病」が多発しましたが、自園では病気の予兆に細心の注意を払い、雨間をぬって予防散布を徹底したことで被害を完全に抑え、収量を確保しました。

全面マルチの様子

2.より品質を高めるマルチ栽培

高品質なワインをつくるためには、高糖度の原料用ブドウが欠かせないことから、7月中旬から9月上旬の収穫期まで、不織布マルチ資材「タイベック」を樹冠下に展張しています。これにより、過剰な水分の吸収抑制と日照条件の改善を行い、毎年糖度19度以上の果実生産を行っています。特に平成30年産は梅雨明けが早く、夏季の乾燥した気象の影響もあり、21度を超えるこれまでの最高糖度を記録しました。

収穫前のシャルドネ

3.排水対策を基本とした園内環境の整備

常に園内の良好な生育環境を保つため、高畝とし、排水溝を設置することで速やかな排水を実現しています。
また、周辺を含めて園内は草を生やさない裸地栽培とし、病害発生や害虫の飛び込み抑制を図るとともに、園内に落果した果粒や葉も見逃すことなく、園外へ持ち出すなど、耕種的防除を徹底しています。

ワイン用ブドウ導入と菊鹿ワインの発展

山鹿市菊鹿町は面積の約3分の2を林野が占める山間の町で、就農者の高齢化・後継者不足がいち早く進んでいました。このため、耕作放棄地対策や新たな特産物の生産を図るため、平成11年からワイン用ブドウの生産を振興することとなりました。同時期から菊鹿町葡萄生産振興会(以下振興会)も発足し、講習会や勉強会を通して生産技術向上を目標に活動してきました。
私も平成12年に新たに導入を始めた4戸の生産者とともに栽培をスタートしました。導入からしばらくの間は、栽培技術が乏しく、暗中模索の年が続きました。
このような中、熊本ワイン株式会社や普及指導員から栽培管理に係るアドバイスを受けながら栽培努し、振興会員同士が切磋琢磨してきた結果、私が生産して9年目のブドウ(菊鹿ナイトハーベスト2007)が、平成20年の『2008国産ワインコンクール』の金賞を受賞しました。これ以降、菊鹿町で生産されたブドウで醸造したワインは毎年様々な賞を受賞し、現在では、『菊鹿ワイン』は国内ワインでも有数の銘柄ワインとしての地位を築きつつあり、振興会員と共により高品質なブドウ生産を目指しています。

全体勉強会の様子
ナイトハーベストの様子

今後の目標

将来の経営は、現在、他県に在住している長男が引き継ぐ予定です。長男が就農する時まで、ワイン用ブドウを柱とした中山間農業の確立し、経営規模拡大が目指せるよう頑張りたいと考えています。また、私自身はアドバイザーとして息子や振興会を支援できればと思っています。
昨年11月には「菊鹿ワイナリー」開業も開業しました。「日本ワイン」ブームを契機に、山鹿市菊鹿町が質の高い産地として全国で認知されることを願っています。そのためにも、一人の原料生産者でなく、ワインの質を左右するブドウを生産している者としての自覚を持ち続け、自己の農業経営と、ワインによる地域振興への貢献の両輪で、今後も頑張っていきたいと思います。

プロフィール

平川 洋介さん康子さん
●経営概要
ブドウ(ワイン用)35a
水稲 83a
クリ 40a
タケノコ 20a
●家族構成
(本人)洋介さん
(妻) 康子さん

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