こだわっとる農

水稲

水俣市 「水俣・芦北だからこそ!」 安全・安心な米作りにこだわる

福山 幹雄さん

はじめに

私は水俣市越小場地区で水稲を栽培しています。水田は水俣市と芦北町の境界に位置する大関山麓水系にあり、その豊かな清水を生かして、約20年前から減農薬・無化学肥料による「大関米」を生産しています。
水俣・芦北地域における「大関米」栽培は、平成6年に同じ大関山麓にある芦北町大野の生産者5名が、安全安心な付加価値の高い米づくりとして始めました。標高約300mの山間地では経営規模の拡大が難しく、効率的な生産ができないため、通常の栽培では収益の向上は見込めません。
そのような中で私は、付加価値の高い米を生産し収益の向上を目指すため、長年に渡って当地域の米生産に関わり、「大関米」の生産や、アイガモ農法による酒米の有機栽培等、特色ある米の生産に取り組んできました。
平成29年からは、あしきた農業協同組合大関米・特栽米研究会の副代表も務めており、今回は、栽培のこだわりや研究会での取組みなどについて紹介します。

栽培のこだわり

水俣・芦北の米だからこそ安心安全で付加価値の高い米の生産にこだわり、栽培を行っています。

大関米田植えの様子

1.特別栽培による「大関米」の生産

「大関米」栽培では、化学農薬の使用量を熊本県慣行レベルの2分の1以下として、化学肥料を全く使用せずに栽培しています。化学農薬は栽培期間中9成分までしか使用できないため、病害を出さないための耕種的防除として、牛ふん堆肥施用等の土づくりによる地力向上や、除草剤の使用回数も制限されているため、ヒエ等の雑草は手取り除草を行っています。

2.無農薬栽培における酒米生産

酒米の栽培では約20年前からアイガモ農法で無農薬無化学肥料栽培に取り組んでいます。
地元酒造会社の「水俣で作る酒米だからこそ、環境にやさしい農法で栽培された米を原料とした酒づくりにこだわりたい」という思いに賛同し、水俣市越小場地区の数名で始めました。現在、酒米栽培を継続しているのは私だけになりましたが、毎年40aほど作付しています。
以前は「レイホウ」、「神力」を栽培していましたが、3年前からは「華錦」を導入しています。「華錦」はこれまでの品種と比べると、いもち病や倒伏に強く、収量も安定しているため、非常に作りやすい品種だと感じています。田植え後にアイガモを放し、出穂するまでの期間は、アイガモが本田を動き回ることで土壌を撹拌し、水面を濁らせ、日光を遮ることで雑草を抑制します。

研究会での活動

あしきた農業協同組合大関米・特栽米研究会では、生産者同士の情報共有と技術研鑚のため活動しています。
昨年度は山都町での有機農業の先進事例調査や、熊本県病害虫防除所で研修を行い、環境に配慮した大関米生産に対する研究会員の意識が高まりました。

病害虫防除所での研修

今後の展望

「大関米」は生産者が厳しい基準をしっかりと守り栽培し、安全安心を保証したからこそ、地元の農産物販売所やJA直販センター等を通じて消費者に届けられるほか、芦北町オリジナルの焼酎原料として利用されるなど、地域のブランドとして定着してきたと思っています。しかし、高齢化に併せ、多くの作業を人力で行っていることから労働力不足も問題となってきています。
そのような状況だからこそ生産者同士で補いながら作業の手助けを行い地域での米生産を続けていきたいと思っています。
またアイガモ農法はアイガモが鳥などの天敵に狙われやすく管理が難しいため、最初は苦労しましたが、テグスを張ったり、カイトを飛ばしたりと様々な方法で対策を行っており、被害も少なくなってきました。今後も試行錯誤を重ねながらアイガモ農法による酒米の有機栽培と減農薬無化学肥料による「大関米」の栽培を続けていきます。

山都町での先進事例調査

プロフィール

福山 幹雄さん
●経営概要
水稲 70a
●大関米・特栽米研究会
会員数 23名

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