こだわっとる農

いちご(ゆうべに)

八代市 “データで読み解く”イチゴづくり ~八代でつなぐ次世代へのバトン~

橋本 修 さん・香菜 さん

はじめに

八代地域は、熊本を代表する産地として県内最大のイチゴ栽培面積(R7年産・45.6ha)を誇っています。このような八代地域の八代市昭和日進町で約65aという大規模栽培を家族で営んでおられる、イチゴ生産の次世代リーダーとなられる橋本修さんをご紹介します。橋本家はお父さんの代にいぐさからイチゴに転換し、約30年イチゴ栽培を続けられています。その中で、修さんもイチゴ栽培歴21年を迎えられました。部会員の皆さんとの強い絆や様々な経験を通じて磨かれてきた知識や技術について、多くのお話を伺いました。

最も大切なのは、「根拠に基づくこと」。

近年、全国的に異常とも言える夏季高温によって、作物の安定生産が危ぶまれています。八代地域のイチゴも例外ではなく、高温による定植期遅延、さらに収穫始期遅延が特に大きな問題となっています。また、定植後の急激な温度変化も、イチゴにとっては強いストレスとなり、生育不良につながります。このような問題の解決に向けて、橋本さんの圃場では、「科学的なデータに基づいた栽培管理」として3つのことを実践されています。

環境モニタリング装置

1つ目は、DXによるハウス内環境の把握です。環境モニタリング装置を各ハウスに1台ずつ設置し、温度や湿度、CO2濃度、水分張力(pF)など様々な項目を計測されています。そして、橋本さんは積算温度について特に注意して管理されており、開花~収穫までの積算温度を指標に栽培計画を立て、温度管理による収穫ピークのタイミングを調整されています。
約半年間に及ぶ収穫期の中で、クリスマスや正月、バレンタインデー、ひなまつりなど、イチゴの全国的な需要期は複数あり、積算温度を読み解くことによって、イチゴが高単価の時期に照準を合わせているのです。
また、スマートフォンからリアルタイムでハウス内のデータを確認し、そのまま暖房機の操作をすることも可能で、出先でもいつでも圃場の状況をチェックすることが出来ます。

2つ目は、月1回の樹液分析(葉の分析)です。橋本さんは、約4年前から種苗開発メーカーに月に一度約20枚の葉をサンプルとして分析を依頼し、葉に含まれている各成分の増減率や適性について具体的なデータを取っています。そして、このデータを基に、葉面散布や液肥施用についてメーカーからアドバイスを受け、各月の肥培管理に役立てています。
また、過去約4年のデータをこまめに振り返り、「例年●月に△△が足りなくなっている」など過去同月の実際のデータを参考にしながら、毎月の管理を継続されています。

3つ目は、生育調査です。草高や新葉高、開花日について定期的に自ら調査し、環境モニタリングの数値と実際の株の姿を照らし合わせて生育状況を把握しておられます。「環境モニタリングの各数値が適正値であっても、実際の株の状態が必ずしも良いとは限らない。数値で見るだけではなく、イチゴの状況が実際どうなのか合わせて見るからこそ、環境モニタリングは意味がある。」と橋本さんは話されます。生育調査を行うことで、イチゴにとって良い圃場環境を作れているかどうか、客観的に評価できるのです。
このように、橋本さんのイチゴ圃場では、勘や感覚に頼る栽培管理ではなく、具体的な根拠に基づいた管理を徹底されています。1棟1棟のハウスの特徴・特性を踏まえたうえで、これらの科学的なデータを最大限に活用し、栽培管理に直結させています。

樹液分析結果
橋本さんの「ゆうべに」

今後の展望

橋本さんは、今後目指していきたい農業として「持続可能な農業」、「改善し続けていく農業」という言葉を挙げられました。環境モニタリングや定期的な調査・分析によって反省を生かし、昨年より今年、今年より来年と段々と良くなっていける農業を目指したいとおっしゃっていました。
また、かつては、イチゴ栽培管理の多くを個人の経験に基づく生産者が多かった中、この十数年で状況は大きく変わり、橋本さんが取り組むようなデータ活用による環境制御システムをはじめとした多様な技術が実践的な手段として活用されるようになりました。橋本さんは、根拠に基づいた管理の重要性をご自身で実感しているからこそ、若手農家たちにもこれらをどんどん取り入れていってほしいと話します。そして、橋本さんが所属する昭和いちご部会の発展、さらには八代地域がイチゴ産地であり続けるために、「データ」で解決していける農業を推し進めたいという強い信念も感じられました。

おわりに

このような橋本さんの取り組みは、八代のイチゴづくりの未来を力強く支える原動力となり、地域全体へ普及拡大していくものだと強く感じました。橋本さんの技術や思いが、次の世代へと大切に受け継がれていくよう、普及員として引き続き支援していきます。

(紹介:県南広域本部農業普及・振興課)

<プロフィール>
橋本修さん

 

◯経営概要
いちご65a(ゆうべに)

◯出荷先
昭和いちご部会

◯経歴
2005年(20歳):九州沖縄農業研究センター卒業。卒業後すぐに就農しイチゴ栽培を開始。

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