私はあさぎり町で電照ギクを生産・販売をしているキク専業農家です。20歳で就農し、JAくま菊生産部会(部会員数17名)に所属しています。部会のこだわりは、部会員全員で黄色の大輪ギクだけの生産・出荷です。黄色専門の産地は全国でも特に珍しく、年間を通しての出荷は大きな販売戦力の一つになっていて、広島平和記念式典の献花キクとして毎年使用していただいています。
こだわっとる農
キク
あさぎり町 喜んで働き 楽しく働いて 『収益アップ!!』
あさぎり町 森 幸一さん・あつ子さん 夫妻
はじめに
生産における心がけ
「夫婦仲良く、喜んで働き、計画的に、楽しいキク作りで収益アップ!」
1.植え付け本数を減らす
耐候性ハウス(面積約20a)このハウスでは年2作、8月と12月に出荷しています。以前は年間16万本以上の生産をしていましたが、現在は12万本。4万本も減らしたのに「収益はアップ!」キクを栽培することが楽しくなりました。
以前は、高収益を上げる為、植え付け本数を10a当たり45000本とし、牛糞堆肥を数トン投入、元肥として窒素30kg。植え付け日数は2日間、防除は10回以上、摘蕾日数は10日間、収穫作業は10日以上と、いつも作業に追われ、年々、キクの栽培が億劫になっていました。
しかし6年前から、あぜ草色で栽培する方法を知り、植え付け本数を10a当たり30000本に減らし、牛糞堆肥を止めてバーク堆肥に切り替え、元肥も減らすようにしました。すると、植え付けは1日で終り、摘蕾は6日間、収穫作業も1週間で終わるようになり、作業効率が向上しました。
疎植栽培により風通しが良くなり、窒素肥料を減らし、あぜ草色で栽培することで病害虫にも強くなり、防除が5回で済むようになりました。そのため、精神的にも肉体的にも、キクの生産が楽になりました。諸経費や人件費を抑えることが出来、品質が高まることで日持ちが良くなり、等級・階級も向上することで1本単価が上がり、作業のロスがなくなり、結果として『収益アップ!』に繋がることが出来ました。
そして何より「楽しいキク作り」ができるようになれたことが、一番の喜びです。本来は、楽しいはずのキク作りを難しくしていたのは、自分自身だったことに気付きました。
2.1年間の行事予定表の作成
正月休みの時に、1枚の年間カレンダーに全ての行事を書き込むことにしています。毎年の気候の変化に対応するためです。毎年同じ場所で同じ期日に、同じ時間に同じことをすると、いつもとは違う変化に気付き易くなります。これを繰り返すことで、失敗が軽減し、栽培技術が向上していきます。肥料のやり方、水のかけ方、風向き、光の入り方等、どのハウスにもそれぞれの特性があり、年を追うごとにそれを習得していきます。これが「楽しいキク作り」の秘訣だと思います。
3.苗8作
水稲では苗半作と言われますが、キクの場合は苗8作だと思います。大量の同一規格の穂木を生産することは至難の業です。いつも工場で出来たらと思うほどです。
育苗も毎年同じハウスで行い、同じ期日に植え付けます(かん水等も、同じ時間に同じ量を与える様にしています)。ふれあい直売所でも販売をしているので、スプレーギクの育苗も同様に行います。
穂木はコンテナに入れ、ポリで包んで冷蔵庫で1ヶ月保管します。
植え付ける本圃の2分の1を親株の面積とし、余裕のある採穂に努め、良質の穂木だけ選抜し、残りはスペアとして確保します。「楽しいキク作り」の極意だと思います。
4.後片付け
使用した道具はあった場所に戻しておく。「物の整理は心の整理」と言われるように、一日のスタートが最善であるように心掛けています。
5.夫婦仲良く、喜んで働く
喜んで働いているか、イヤイヤながら働いているか、仕方なく働いているか、その仕事の成否は明らかだと思います。
私は、植物は敏感な生き物だと思っています。生産者がどれだけの技術があるか、作り手がどれだけの思いがあるかを形で表してくれます。家族が仲良く、心を一つにして、喜んで働く時こそ、この上もない、上質の品物が出来上がると思います。
今後について
JAくま菊生産部会でも高齢化が進み、現状を維持するのが必至です。これからは、今までに経験したことのない暑さや、寒さが予想されています。
夏を乗り越える為の対策として、保温の為に使用していた自動3重カーテンを寒冷紗に切り替えて日光を遮光し、夏の作業が涼しい環境で出来るようにしています。
3月の彼岸用は、暖房機の加温不足にならないようハウス面積を少なくして、効率を向上させていきます。
これからは、無理をせず、旅行等楽しみながら、これからも、皆さんに喜んで頂けるキクを作り続けて参ります。
プロフィール
森 幸一さん
●経営概要 キク専業
12月:20a、 3月:15a、 8月:20a、 9月:5a
※出荷月別面積
●家族構成
本人、妻、父、母
●主な労働力
本人、妻