キラッと輝く女性たち

繁殖雌牛

阿蘇市 女性が輝く農業社会へ!

知里口 香穂里さん

プロフィール
〇家族構成 夫(42)、長男(5)、二男(3)、長女(1
〇経営 繁殖雌牛 約60

就農のきっかけ

一昔前の一般的な農家において、家業を継ぐのは長男であり、長男以外は外へ働きに出るのが常識でした。祖父の代から畜産業を営む香穂里さんの実家も例にもれず、当然、長男である弟が跡を継ぐものだと考えていたそうです。
外へ出て働くため、香穂里さんは県外の大学院まで進学し、教員免許を取得しました。しかし、就職難だった当時、免許を取得した社会科教諭は3040倍の高倍率であり、なかなか就職先が見つかりませんでした。そんな折に、実家が乳肉複合の大規模農場へと移行することとなり、労働力不足解消のため子牛育成担当として実家へ戻ったのが、就農のきっかけでした。

仕事へのこだわりと経営観念

8年前、弟が酪農部門を継いで別経営となったことで、父親と二人で繁殖経営を行うことになり、現在に至っています。香穂里さんは主に子牛を担当しており、なかでも一番のこだわりは「第一胃(ルーメン)づくり」です。単純にミルクをたくさん与えて育成するより、牧草やスターター(離乳食)をしっかり食べさせて丈夫な強い胃をつくることを目標とし、毎日試行錯誤しながら最善のやり方を模索しています。
父の積夫さんはまだまだ現役ですが、いずれは牛や機械等を全て買い取り、跡を継ぐ予定です。結婚後は、管理は共同で行うものの、自分の牛や機械を持ち独立し、自分名義で子牛を出荷するようになりました。子牛を購入する肥育業者は、牛はもちろんですが、これまで子牛を育成してきた飼養者もしっかり見ています。圧倒的に男性が多い畜産社会において、女性が対等に渡り合っていくためにも、早くから名前を売っていくことが大事だと香穂里さんは言います。

リラックスした様子の子牛たち

結婚と子育て

香穂里さんと夫である真さんは、出会い系サイトで知り合いました。約1か月間メールを続け、実際に数回会ってから即入籍。交際0日婚でした。決め手は、お金の使い方や経営に対する考え方が一致したことだそうです。
ダンプ運送業を経営していた真さんは、香穂里さんの仕事を知り、一緒に働くことを希望していました。しかし結婚後に災害が続いたため引く手あまたとなり、今も運送業経営を続けています。現在は運送業と畜産業、それぞれの仕事を続けながら、お互いをサポートしています。
また、香穂里さんには3人のお子さんがいます。5歳、3歳、1歳と手のかかる年頃です。しかし、保育園に預けられない土日等は職場近くの目の届く場所で遊ばせたり、作業の間だけ両親に預けたりするなど、自由が利く自営業である強みを生かし、工夫しながら両立しています。

男女共同参画社会づくり

香穂里さんは学生時代から男女共同参画活動を行っており、現在も市の審議会の委員や県の推進員活動をされています。地震の影響で交通の便が悪くなり、遠方で行われる活動にはなかなか参加できませんが、今回のように雑誌や新聞等において、日々の仕事や家事、子育てをする中で感じたことや気付いたことを積極的に発信しています。
農業社会においては、女性の参画が一般社会以上に進んでいません。例えば、子牛市場におけるセリ名簿には、女性の名前はほぼありません。同じように働いて、意見を言うことはあっても、自分の名前で経営する人は希少です。農業社会では女性はもちろん、若い年代もなかなか表に出ることがありません。男女の比も、年代の比も等しくあることが大切です。全員が等しく自分の名前を出せてこそ、本当の共同参画になるのです。

独立して初めて自分で購入した機械

現在、仕事に子育て、男女共同参画活動等、日々忙しく過ごしている香穂里さんですが、父親から経営を引き継ぐであろう10年後頃には、繁殖雌牛100頭までの規模拡大を考えています。また、今回紹介した活動の他にも様々なことをされていますが、全てにおいて、「人の役に立ちたい」という思いが根底にあるそうです。様々なことに取り組む香穂里さんの姿を見て「私も頑張ろう」と思う女性が増えれば、社会は少しずつ変わるかもしれません。
近年の農業分野では、高齢化や担い手不足等、様々な解決すべき課題があります。これらの課題に対応し、新たな農業のあり方を切り開くのは、香穂里さんのように一歩前に出る勇気を持つ女性の力ではないでしょうか。これからの未来、女性が輝く農業社会になることを期待しています。

(紹介 県北広域本部 阿蘇地域振興局 農業普及・振興課)

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