キラッと輝く女性たち

肉用牛、タバコ、飼料用稲

天草市 山並流「牛育て」と「子育て」の両立

私のお気に入り「さちざくら」と共に

山並 洋子さん

プロフィール
〇家族構成 夫、娘、息子2人
〇経営規模 たばこ1.5ha、飼料用稲6ha、肉用牛繁殖130頭

はじめに

天草トップクラスの黒牛繁殖経営を営む「山並ファーム」は、現在、社長の正幸さんと妻の真由美さん、息子の彰一郎さん幸一郎さん兄弟、彰一郎さんの妻の洋子さんの家族5人で経営されています。
今回は、結婚と同時に就農され、山並ファームの一員として家族経営に取り組まれている洋子さんをご紹介します。

たばこ農家から畜産農家へ

朝夕2回の給餌。飼料の自給にも取り組まれています。

山並家は、元々は葉たばこ専業農家で、その傍らで黒牛も飼養されていました。
洋子さんが天草にきた当時は、母牛12頭規模で牛舎も1棟のみ。牛の規模拡大を考えていた正幸さんの協力を得て、タバコで得た利益を全て規模拡大の資金として投入し、現在では母牛130頭規模、牛舎も6棟まで拡大しています。

家族で行った「ミルク改革」

就農当時は、子牛の病気の発生で悩む日々が続いていました。
そこで、山並さん夫婦は当時天草では珍しい「超早期母子分離と市販のミルク給与」を開始。
しかし、なかなか子牛の病気は治まらず、ミルクやりを担当していた洋子さんは「自分のせいではないか」と牛舎に行くのも嫌になったそうです。
彰一郎さんと幸一郎さんが各地の先進農家で習ってきた哺乳技術を、洋子さんに教えながら、家族での試行錯誤を重ねた結果、子牛の病気は激減しました。
また、哺乳の時間短縮にも取り組まれており、多い時には、25頭に一人で手飲ませし、毎日6時間もの時間をミルクに費やしていましたが、7年前に哺乳ロボットを導入。大幅な時間短縮に成功しました。
洋子さんは「ロボットを導入して楽になったけど、機械に任せるだけではなく、浮いた時間を牛をみる時間や機械の管理に充てたい」と、より一層気を引き締めています。

ミルクの手飲ませ。5ヶ月齢までの管理を担当しています。

「牛育て」と「子育て」

「健康に育ってもらえればそれだけでいい」と牛と子どもの健康を願って、「牛育て」とともに、3人のお子さんの「子育て」にも奮闘されている洋子さん。
2人目のお子さんの出産当日は牛舎で仕事し、陣痛が15分おきになってからも、痛みに耐えながら子牛にミルクをやっていたとの衝撃のエピソードも。
お子さんたちはそれぞれ、獣医・後継者と、畜産の道を夢見られており今から将来が楽しみです。

笑顔が一番

普及指導員と一緒に。

洋子さんのモットーは、いつも笑顔でいること。
「家族経営は、プライベートと仕事の時間の区別ができないから、私が笑顔でいることで家族の雰囲気も良くなり、仕事も楽しくなります。」と洋子さん。
牛舎では、常に笑顔でユーモアたっぷりに話をして下さる山並家のみなさん。その中心にはいつも洋子さんの笑顔があります。

描く未来

現在は母校の生徒や、県の普及員、新規就農者、シンガポールからも数多くの研修生を受け入れています。また、今年からは夫婦で「指導農業士」となり、次世代の育成や地域の発展にも取り組まれています。
目下の目標は、母牛200頭への規模拡大。今年に入り新しい牛舎も建築し、着実に目標に向かって進んでいます。

後記

私も、昨年山並家で研修をさせて頂きました。研修中は飼料用イネの刈取り時期に台風襲来が重なったため、洋子さんは夜遅くまで男性陣に混じって機械に乗り、刈取り、牛の分娩の補助など昼夜を問わず作業をされていました。
そのかたわらで家事や育児もされていましたが、やんちゃ盛りな息子さんを怒る様子は何度見ても、まさに「肝っ玉母ちゃん。(笑)」
研修期間中、息子さんたちは、ちょうど夏休みで、家族で水族館に行く約束を楽しみにされていました。台風前の作業で旅行は中止になったのですが、息子さんは「お父さんとお母さんの仕事だから仕方ない」と話してくれました。
日頃から働く背中を見せているからこそ息子さん達が仕事に理解を示し、優しく育っているのだと思います。牛育てに子育てに一生懸命な洋子さん。女性の私から見ても、まさにキラッと輝く女性です。
(紹介 天草広域本部農業普及・振興課)

男性陣に混じって、大型機械も乗りこなします。
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