こだわっとる農

トマト、水稲

山都町 県庁から畑へ ― 農業を“クリエイティブ”にする挑戦

梶原 甲亮 さん

はじめに

山都町は、九州のど真ん中にあり、阿蘇南外輪山と標高1,600m以上の山々が連なる九州脊梁山地に囲まれた自然豊かな地域です。
熊本県職員として勤務していた私は、農業をクリエイティブな職業として次の世代にバトンタッチしたいと考え、39歳で県庁を退職しUターンして親元へ就農。令和2年には経営移譲を受けました。

圃場上空から九州脊梁を望む

生物性にこだわった土づくりと作業の省力化

トマト栽培では慣例的に行われている土壌消毒を、今年から全面的に止めました。理由は「本来の土の力を信じてみよう」と思ったからです。科学的に土をリセットするやり方ではなく、微生物の多様性を生かして、ゆっくりとバランスを取り戻す方法を選びました。
現在は、微生物資材を定期的に投与し、圃場の生物性を高める取組を行っています。放線菌、酵母菌、乳酸菌、納豆菌など様々な微生物が共存することで、根圏環境が安定し、明らかに根張りが良くなっていると感じています。
また、作業の効率化、省力化にも取り組んでおり、昨年は県の補助を受けて自動灌水装置を導入しました。これまで大きな負担となっていた灌水・追肥作業が楽になったことで、その分トマトの管理作業に時間を費やすことが可能になりました。

ミニトマト「ほれまる」
管理作業の様子

販路拡大と商品展開

かつて我が家のトマトは全量JA出荷でした。生産に集中できるメリットがある一方、消費者の反応を得たいとの思いから、BtoC(個人販売)に着手しました。ネットショップ等での販売を通じて、お客様からダイレクトに反応が返ってくるようになりました。
その後、小売店や飲食店などとのBtoB(企業間取引)も年々拡大しており、「うちのトマトがここで使われているんだ」という喜びもあります。その反応が次の栽培や商品開発のヒントになることもあります。
さらに、生果販売だけに頼らない経営を目指して、加工品開発にも力を入れています。完熟のミニトマト「ほれまる」だけを絞って作ったトマトジュース『百年』は、濃厚で上品な味に仕上がっています。今後はドライトマトの開発も予定しており、農業の新しい価値を創るきっかけにしたいと考えています。

晩秋の秀麗トマト「日の宮」
ミニトマトジュース「百年」

地域農業のモデルケースを目指す

昨年4月、地元農家4名で農業法人「GREENTIDE合同会社」を設立しました。山都町の中山間地特有の気候を生かしつつ、有機農業を核に高品質で安定した生産を実現することが目的です。
山都町は個人農家が多く、個々の経営規模には限界があり、販路開拓や設備投資、人材確保に課題を抱えています。法人化により規模の経済を生かし、生産性と収益性を向上させたいと考えています。
また、新規就農希望者のための新たな雇用の受け皿となることで、農業の担い手を増やし、地域農業の持続可能性を高めることも目的のつです。

これからの目標

山都町の強みである高冷地の気候風土を生かした高品質な野菜づくりにより、中山間地農業のモデルケースとして持続可能な農業経営を確立したいとか考えています。
法人経営では、生産者側と仕入業者側双方が協力して事業を推進し、農地を団地化して、産地としての競争力を確保する取組みを視野に入れています。個人経営では、これまでBtoC販売により培ってきたお客様との信頼関係を軸に、高品質かつ高付加価値の商品開発を進め、農業の新しい価値づくりを続けていきます。
なお、5年後以内を目標に、全役員が個人経営から法人経営への完全移行を図る予定で、町内の流通業者「㈱肥後やまと」と協業し、生産から加工、販売まで一気通貫で行うことで、持続可能な生産モデルを確立していきます。

(県央広域本部上益城地域振興農業普及・振興課)

<プロフィール>
梶原 甲亮 さん

 

〇経営概要
大玉トマト、ミニトマト、水稲

〇家族構成
父、母、本人、妻、息子3人

〇主な労働力
父、母、本人、臨時雇用1名 等

HPなど
https://kajiwara-kougei.com/

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