倉田家は、おじいさんの代からの葉たばこ栽培。元々、跡を継ぐつもりはなかった裕美さんは、福祉施設に勤務していましたが、そこで夫となる圭悟さんと知り合ったことが転機に。非農家出身でしたが、農業に少し興味があった夫と結婚。ちょうど腰を痛めてしまい、一時的に農業ができなくなっていた父を助けて、二人で就農されました。
父はもちろんですが、たばこ栽培は、耕作組合の仲間が技術や考え方を教えてくれました。平成26年からの基盤整備事業期間中は、横島干拓にも5年ほど出作したことで、周辺の農家から毎日のように現地指導を受けられたそうです。近年の廃作事業により、作付面積は減ってしまいましたが、荒尾玉名地域では今も12戸が葉たばこを生産しています。その仲間の皆さんは、仲良しだけど競い合える大事な仲間だそうです。
5~7月は毎日のように収穫が必要な葉たばこですが、共同乾燥施設が整備されたことで、日曜日は収穫を休んで、手入れや消毒作業に充てるなどメリハリをつけた生産体系が実現できています。
キラッと輝く女性たち
葉たばこ、米(うるち、もち)
玉名市 紅一点!地域営農法人を担って
倉田 裕美(ゆみ) さん
プロフィール
◯家族構成
夫、子ども2人(娘、息子)、父、母の6人家族、犬1匹
◯経営類型
葉たばこ2.25ha、米(うるち2.5ha、もち2.7ha)
◯農事組合法人「岱明」代表理事組合長
はじめに
倉田裕美さんは、玉名市岱明町扇崎でご家族4人で葉たばこ主体の経営をされています。
扇崎・大野下地区は、ほ場整備事業や農地集積加速化事業に取り組んだことがきっかけとなり、令和3年4月に「農事組合法人岱明」を設立し、裕美さんは、現在2代目組合長として、地域の農地と農業を守る活動にも取り組まれています。
夫婦で葉たばこ農家の3代目に
先輩方の支えで法人代表へ
基盤整備事業の完了に合わせて、令和3年4月9日、「農事組合法人岱明」(経営面積41.5ha、構成員44人)が設立されました。当初は高収益作物としてトマト等の施設園芸を導入する予定でしたが、基盤整備事業参加者の農地を一括して法人に預けることで地域の農地を守れるならと、米麦以外に新規需要米やWCSなどの作付にも取り組むことになりました。
法人の発起人会の先輩方は、情報を持っていたり、あちこちに顔が利いたり、と経験が浅い裕美さんを支えてくださり、本当にありがたいとのこと。先輩方の助言を受け、先進地である隣町の農事組合法人「野口」でブロックローテーションを学ぶとともに、令和5年度にはくまもと土地利用型農業競争力強化支援事業で大型トラクターを導入しました。法人内部にオペレーター2人は確保していますが、裕美さんも12月には大特免許を取得される予定です。
「夫婦がともに補いあえるのが、農業の良いところ」
夫婦2人同時に始めた農業ですが、機械操作は、やはり圭悟さんが得意で、「芯止め」や「わき芽かき」などの手入れは裕美さんが得意。お互いに言い合いながらも、補いあえるのが農業の良いところだと、裕美さんは考えているそうです。
葉たばこが青々と美しい7月に写真を撮らせてほしいとお邪魔したところ、ご夫婦はお似合いのペアルックでほ場にいらっしゃいました。たまたま似たような恰好だったと後日明かしてくださいましたが、泥やたばこのヤニまみれではない「きれいな農業」や「カッコイイ姿」に憧れます、と作業着にも気を使っておられます。
2人の子どもには、必ず農業を継いでもらいたいとは考えていないそうですが、牛などの動物に興味がある娘さん、ものづくりに関心がある息子さんの将来を、できる限り応援したいと話してくださいました。
また、「女性の社会進出とか、男女共同参画とか言われることが多いけれど、『女性部』とか『婦人会』という仕組みに漠然とモヤモヤしたり、『こうでなければならない』という息苦しさを感じたりする」と率直なご意見を聞かせてくださいました。前例に縛られず、自然体で何事にも当たっていきたいという裕美さんなりのこだわりを感じました。
農閑期は夫婦でご褒美ゴルフ!
10~2月の葉たばこのオフシーズンは、ご夫婦共通の趣味としてゴルフコースを回られるそうです。「コンペに出る時は、毎週練習するのだけど、葉たばこが始まると練習にも行けないから、毎年リセットされる気がする」そうですが、ご夫婦のこの笑顔を拝見すると公私ともに楽しんでいらっしゃるなとお見受けしました。
まだまだ30歳代半ばの裕美さん、今後のご活躍に目が離せないと思いながら、出会いに感謝した取材でした。
(紹介:県北広域本部 玉名地域振興局 農業普及・振興課)