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源流を求めて 農聖 松田喜一に学ぶ 第十四回

「初春の令月にして、気淑(よ)く風和(やわ)ぎ」、気品が感じられる「令和」との出会いに感動し、万葉集や日本書紀等、日本の歴史や文化の素晴らしさを誇らしく思いました。「令和」の時代の始まりを皆様と共に喜び合い、これを機に、元号に込められた「人々が美しく心寄せ合い文化育つ」に思いを致し、国民の一人として、自らの立場からささやかではあっても日本(文化)の発展、飛躍に繋いでいきたいと思います。
人間や社会の成長・発展、飛躍には、改元をはじめ入社・転勤等の節目や偉人賢者、本、自然等、様々な出会いが大切であり、それを生かしていくことが求められます。今回は、喜一先生に大きな影響を与え、成長に繋がった出会い、つまり先生の精神等の源流・原点を概観したいと思います。

喜一先生の出会い

先生は、生涯の折々に一瞬早すぎず、一瞬遅すぎない時に出会いがあっているように思います。祖父喜七の思いや偉業との出会いはもちろん、熊本農業学校の初代校長河村九淵との出会い、あるいは書物を通しての出会いもあっています。例えば、先生は志願兵の時、軍隊の厳しさを乗り越えるため手がかりを求め伝記を読み漁(あさ)り、退役後は農作業の合間にも本を読み、それらは、聖人賢者や名言との出会いに繫がっています。読書には、知識を得るだけでなく素晴らしい精神や言葉、教えとの出会いがあります。事実、先生は読書を通して、
二宮尊徳や織田信長、中江藤樹、吉田松陰の精神や生き方に、あるいは「論語」「大学」「孟子」等の名言に出会っています。先生は、このような出会いから深く学び、逆境や試練の体験を通して自らの精神を磨きあげ、それは「一角を破れ」「左に積善 右に生産」等の教えや月刊誌「農友」、50冊を超える著書に繋がったといえます。

縁を生かす

喜一先生は、熊本農業学校卒業後も縁を大切にし、積極的に恩師河村九淵校長が開いた果樹園を訪ね教えを求めています。恩師九淵に可愛がられ、北海道の栽培学の南博士を紹介されると、はるばる赴き教えを請い、また、南博士から紹介されたジャガイモ栽培の名人からも学んでいます。九淵との出会い・縁が新たな出会いに繫がっています。森信三は「縁を求めざるには生ぜず。内に求める心なくんば、たとえその人の前面にありとても、ついに縁を生ずるに至らずと知るべし」といっています。真の出会い・縁となるかどうかは自分故であり、勇気をもって積極的に出会いを求め、その縁を生かしていくことが大切だといえます。

熊本農業学校 初代校長河村九淵像
熊本地震後の松田神社(昭和日新町)

どのような人と出会うか

出会いには、求めた出会いも偶然の出会いもありますが、どのような人と出会うかは、自分が何に心を寄せて日々努力しているか、そして、その内なる心が満ちいることが求められます。だから一瞬早すぎず、一瞬遅すぎない時に出会うといえます。例えば、ニュートンは長年重力の問題に専心し研究を続けていたから、リンゴの落ちる現象から万有引力の法則を発見しました。プロ野球の大谷翔平選手は、投手とバッターの二刀流に心を寄せ準備ができていたから、栗山英樹監督との出会いでの道が開けました。私の場合は、教職に就き道徳の教材作りに心を寄せていたから、祖父喜七や先生の生き方が強く心に響き、真の出会いに繫がりました。
以上先生の出会い・源流としては、一つは祖父喜七、二つは恩師河村九淵、三つは二宮尊徳、中江藤樹、吉田松陰等の偉人、四つは古典や名言等です。次回からは、これらの偉人や書物に学びつつ、私達自身の源流を見つめる機会に、そして、あの人、あの本、あの言葉と出会ったから今があるという実感に繫がればと思います。出会いから学ぶだけでなく、人や社会を感化できるよう一人ひとりが自分の立場から学び高めていく、このことが、美しく心寄せ合い文化育つ「令和」の時代を築き、誇りある日本をつくっていくことになると思います

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