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逆境を生きる 農聖 松田喜一に学ぶ 第九回

松田神社の近くにある昭和小学校の5・6年生は、喜一先生についての学びを校区文化祭で発表しました。先生の母校豊川小学校の4・5年生も先生や祖父七について学習を重ねて発表しています。子供たちの堂々とした発表や演技、演奏を聴きながら、改めて郷土の偉人の生き方や教えに学ぶことの大切さを実感するとともに、地域の活力に繋がっているように思いました。

八代市昭和日進町にある松田神社
昭和小学校 校区文化祭(喜一登場場面)

農技なければ農魂なし 農魂を養い農技を磨け

農魂は「人間相手でなく、天地を相手とする魂である。天地の積みおかれたる無尽蔵の宝をいただいて国家社会に尽くす魂で、忘我育成の魂である」と、忘我育成については「無我の境地に立った、一切合切相手本位になり切った愛の姿である」と教えています。農魂は、人間だけでなく稲・麦や牛・鶏等、天地をも先生であるということです。それは「稲のことは稲から学べ、世の中のことは世の中から学べ」の教えと重なりあいます。「農技あるものは、皆農作物の心が判る」「農作物の心が判る者は、天地の心が判る」と。結局「農技なければ農魂なし」です。農技を磨くことが、農魂を培うことになり、農魂と農技は二元一体といえます。何事も技術を見れば精神が分かるように思います。

無尽蔵の宝を生かす

人間は、これまで天地の積みおかれたる無尽蔵の宝を生かし、農業はもちろん科学や医学等を発展させてきたといえます。ニュートンはりんごが落ちる自然現象を見て万有引力の法則を発見したといわれています。それが科学技術の発展、人工衛星にもつながりました。
平成27年度にノーベル生理学医学賞を受賞した大村智・北里大学特別栄誉教授(80歳)は、ゴルフ場で見つけた土壌の微生物の力を使って、失明の危険がある熱帯病の特効薬「イベルメクチン」をつくり多くの病気の人を救って社会や人類の発展に尽くしました。まさに天地の積みおかれたる無尽蔵の宝を生かしたといえます。大村智氏は、その授賞記念講演で『地球からのすてきな贈り物』と題して「われわれ人間がかかえる課題の答えは自然の中にあると信じてきた。微生物は無限の資源だ。」「微生物たちに深い尊敬と思いやりを抱き続けることが大切だ。」「世界中の人々に健康と社会的、経済的な利益をもたらすような物質を探し続けていきたい。」と。この考えや行いは利他・積善であり、先生のいう「忘我育成の魂」に繋がるといえるでしょう。本年度のノーベル生理医学賞受賞の本庶佑京都大特別教授(76歳)も自然界にある無尽の宝を生かし、基礎研究にとどまらず、ガンの免疫療法に道を開き、新薬「オプジーボ」の開発まで主導しました。研究者の醍醐味については「多くの人が石ころと見向きもしなかったものを、10年、20年かけて磨き上げ、ダイヤモンドであることを実証すること」と、いっています。

実演して説明する喜一先生(左)

憧れる人をもち実証する

大村智氏は北里柴三郎、本庶佑氏は野口英世に憧れ「論より証拠」で示しました。憧れる人をもち「論より証拠」の考えの基、挑戦していけば精神と技術が磨かれ、大きな成果に繋がるといえるでしょう。喜一先生は、祖父喜七翁の生き方に憧れ、生まれ甲斐のある人生を目を創設しました。先生の精神・農魂と技術・農技は、松田式麦作法等の様々な栽培法をあみだし、農友服や地下タビ、肥後鍬等の考案にも繋がりました。先生に憧れ農場に学んだ卒業生3400人、教えを請いに来た講習生43000人です。農魂と農技の大切さを身をもって導き育てました。農業の発展を通して国家社会に尽くした先生の精神や生き方は、昭和小や豊川小の子供たちの心にも響き続け、将来、憧れられるような立派な人間に成長することを願っています。

豊川小祭(祖父喜七を称える底井樋太鼓)
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