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Vitamin Table 〜第15回 お茶のおはなし〜

前回、伝統野菜・在来野菜についてのお話でお伝えした日本の野菜の原点…、いかがだったでしょうか。今回は日本人の食の原点、和食に大きく関わるお茶について紐解いてみたいと思います。

お茶は薬だった?

お茶の木はツバキ科に属する常緑の植物。
茶の発祥の地は中国といわれ、古くからお茶を薬、特に解毒薬として用いられていたといいます。人がお茶を飲むようになったのは三国時代に遡るといわれています。

日本へはいつ?

平安期の初期(約1200年前)、最澄や空海ら唐へ留学した僧侶たちによって中国から茶を持ち帰ったのが始まりとされます。
その後、鎌倉時代に栄西禅師が中国から茶を伝えるとともに「喫茶養生記」(1211年)を表し、『茶は養生の仙薬なり、延齢の妙術なり』と喫茶の効能を宣伝したために茶への関心が高まったそうです。
お茶が近年その効能に着目され健康食品の1つに数えられるのも、その昔「薬草」として日本に伝来したことを思うと当然なのかもしれない歴史です。

お茶の栄養や機能性成分

代表的な成分として、カテキン類(茶独特の渋みでタンニン)、カフェイン、アミノ酸類、ビタミン類も多く含みます。ビタミンCは水溶性なのですが、製茶の際に最初に行われる蒸し過程で、ビタミンC等を酸化させる酵素を死活させるために緑茶のビタミンCは壊されずに多く残るのです。他に体内に入るとビタミンAに変わるβカロテン、このカロテンはビタミンCとともに発がん性抑制に働くのではないかと注目され、ビタミンEは動脈硬化防止に役立ちます。

お茶博士

では、これらの栄養はいつ頃からわかってきたのでしょうか。お茶の栄養を発見された当時、外国人学者により出されていた研究結果は「緑茶にビタミンCは存在しない」が通説だったとか…。その学者の研究では分析に使用した検体が「沸騰したお湯で5分間煮だす」だったため、水溶性のビタミンCが溶けてしまっていたからではないかと、推察されています。
東京女子師範学校(現お茶の水女子大学)出身の辻村みちよ博士は東大理科学研究所時代に、「お茶を飲むときのように、60℃前後のお湯で1分間煮だす」という検体を使い分析し、「緑茶にビタミンCが含まれている」ことを立証したのだそうです。続いてカテキンを、その中からタンニンの結晶を取り出す等の研究成果により女性初農学博士授与に繋がりました。

出典:お茶の水女子大学資料

女性パワーの研究成果は現代女性の美容と健康に…

〇朝のお茶一杯…カフェインで頭スッキリ、下がり気味の血圧を適度に高めてくれたり

〇食事後のお茶一杯…カフェインが胃腸の働きを活発に、カテキンが口臭予防に。

〇美容に…ビタミンCは紫外線予防に寄るメラニン色素予防や肌のハリを保つコラーゲン生成に。カテキンは肥満防止や強い抗酸化力を発揮してアンチエイジングに。

こんなチカラがたっぷりなお茶…熊本は全国有数のお茶産地!

県内の茶処として有名な産地は、菊池川や緑川、球磨川や水俣川など清流の上流地帯に広がっています。そんな産地のひとつ水俣を訪ねました。
水俣市内からさらに奥地に入った鹿児島との県境にある標高600mの高原で無農薬・無化学肥料にこだわってお茶栽培に取り組む「天の製茶園」に。くまもとグリーン農業宣言者であり、水俣市環境マイスターでもある3代目の浩さんに案内していただきました。
昭和初期に開拓団として入植したお祖父様の代から育てられている茶園は、標高500m~60mの間に総面積7haにも及ぶとか。栽培品種も一部あるそうですが、在来種は樹勢が強く無農薬でもしっかり育ち、中には樹齢90年近いお祖父様が植えられたものもあるとか…、在来種を守り続ける意義や信念を語ってくださいました。無農薬栽培に取り組んで38年、完全無農薬にして21年め、約25年前から緑茶・ほうじ茶・ウーロン茶に加え、紅茶作りに力を注いで来られ、今では生産の8割が紅茶だそうです。全国的にも珍しい無農薬栽培の紅茶はバイヤーや紅茶通の間で人気を博し、高級和菓子で有名な「とらや」の紅茶羊羹の原料に採用されているほどです。
まず、天空の茶園との言葉がぴったりな茶園で手摘みを体験させていただきました。茶園を周りながら、生えている草でもその時の土壌の状態がわかる、ここは棘がある草が生えてきたからバランスが崩れている、柔らかい草が生えているときは土の状態が良い…。バランスが崩れているときは燻炭を入れたり炭を置いたりして調整し、生態系を意識した栽培を心掛けていらっしゃるそうです。そんな真摯な姿勢とお人柄が、Tea Roomで戴いたお茶にも現れていました。

負の歴史がある水俣で栽培しているからゆえの信念を感じたひととき…『お茶は文化である。その文化を伝える活動をし続けていきたい』と…。天野さんと美味しいお茶たちの更なるご活躍を拝見していきたいと思っています。
県内の産地では、4月中旬に一番茶の収穫を迎え、8月中旬まで2番茶、3番茶と収穫が続き、毎年約1800tが出荷され、その量は全国9位とのことです。
健康寿命全国1位の茶処静岡県では、和食中心の食事で魚が多く摂取されていることはもとより、長寿の訳が全国一生産のお茶を摂取していることにある!と研究結果からも示されています。熊本の健康寿命は25位…、お茶を飲むことも茶葉を食べることもより効果が上がるといわれています。豊かな熊本の野菜・果物をしっかり摂り、お茶も飲んで食べて、美しく、健康に!健康寿命を延ばしていきましょう…。
※健康寿命の定義
「健康上の問題で日常生活に制限のない期間」最近では認知症やロコモティブシンドロームなども注意が必要となり健康的に暮らせる期間が短い傾向にあります。

ぱぱっと簡単レシピ

お茶のゼリー

<材料 約70ccカップ4個分>
緑茶  大さじ1
水  200cc
砂糖  大さじ3
粉ゼラチン 5g(水 大さじ3

<作り方>
⑴粉ゼラチンを分量の水でふやかしておく。
⑵鍋に分量の水を入れてパックに入れたお茶を水出しにする。
⑶⑵に砂糖を加えて弱火で軽く温め砂糖を溶かす。
⑷⑴のゼラチンを湯煎で溶かし、⑶に加えてよく混ぜ溶かす。
⑸カップに注ぎ入れ、冷蔵庫で冷やし固める。

緑茶のパンケーキ

<材料 約12cmのもの6~7枚分>
パンケーキミックス 200g1袋)
牛乳 200cc
緑茶 大さじ1
卵 1
砂糖 大さじ1
バター 適量
(好みで 生クリーム、砂糖、抹茶)

<作り方>
耐熱の容器(マグカップ等)に、緑茶と牛乳と砂糖を入れて、電子レンジで30秒ほど加熱する。
ボウルにパンケーキミックスを入れて、⑴と溶きほぐした卵を加えて混ぜる。
フライパンを弱火にかけてバターを溶かし、⑵の生地を流し入れて焼く。

緑茶×ちりめんのおにぎり

<材料 2個分>
ごはん 160g(大きめのお茶碗1杯)
緑茶  小さじ2
ちりめん佃煮 大さじ2
ごま油 小さじ1
塩 少々

 <作り方>
ごはんに緑茶とちりめん、ごま油、塩を混ぜ合わせ、2等分して握る。

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持田 成子Shigeko Mochida

野菜ソムリエ上級プロ
女子栄養大学生涯学習講師

女子栄養大学在学中に「野菜のビタミン分析」に携わったことがきっかけで野菜ソムリエ資格を取得。「旬の野菜果物のチカラはココロとカラダを元気にする」をテーマに食育やセミナー、レシピ開発など食の周りで活動中。

野菜ソムリエとは

日本野菜ソムリエ協会が認定する資格。野菜・果物の知識を活かし自らの生活に活かす「野菜ソムリエ」、野菜・果物の専門家「野菜ソムリエプロ」、専門家の最上位資格「野菜ソムリエ上級プロ」と、3段階の資格がある。

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