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Vitamin Table 〜第12回 冬春トマトのおはなし〜

第7回「夏秋トマトのおはなし」で栄養満点の夏秋トマトについて、熊本県では栽培面積も出荷量も、名実ともに日本一の産地だとお伝えしました。今回は、今盛りを迎えている「冬春トマトのおはなし」…。「はちべえトマト」でよく知られる八代地域、宇城、玉名、熊本市等、主に海沿いの温暖な平坦地で栽培されているトマトについて紐解きます。

冬春トマトの生産量は?

熊本県の年間トマト生産量は約82,000t(2014年)、そのうち12月~6月にかけて出荷される冬春トマトの生産量が全体の約7割(63,900t)を占め、この時期の生産量としては全国一を誇るのです。

トマトの味わいの決め手は?

ずばり!日照時間と生育期間。ですから、季節によって味わいが変わるのです。南米アンデス生まれのトマトの本来の旬である夏は、暑さと湿度の関係ですくすくと速いスピードで育ちます。そんな夏は実が大きめでさっぱりとした味わい。寒い冬を通して育つ春先のトマトはゆっくりと樹上で育つことから中身がぎゅっと濃く、こっくりした味わい…。春先が冬春トマトの旬といわれています。

もとは海だった?干拓地で育つ稀少なトマトのヒミツ!

海に近い八代や宇城、玉名の干拓地ではちょっと変わったトマトが栽培されています。
干拓地特有の塩分・ミネラルを多量に含んだ圃場の下には何本もの塩の道が通っていて、畝によっては塩が強く上がってくるところがあるのだそうです。すると根から水分を十分に吸い上げられないため、あまり大きくならず、甘さが凝縮されるのだといわれています。水やりを極力制限し、成分を凝縮させることで甘みや旨みを増した「フルーツトマト」の栽培原理と同じです。
干拓地の圃場だからといってどこでも獲れるわけでなく、同じ生産者さんの圃場でもこの畝は塩トマトになり、こちらの畝は普通のトマトになるという神秘的な産物。『ご先祖様からの贈り物…』と話される生産者もいらっしゃいます。
かつては、小玉で売りものにならない規格外品とされ、自家消費されることが多かったのですが、イタリア料理がブームになった1995年頃からフルーツトマトの普及とともに、人気が出始め高値がつくようになったのだそうです。
その美味しさの目印は、雌しべの側からガクにかけてくっきり筋張って出ている放射状のライン…吸い上げている水分が少ないからで糖度が高い証といわれています。

あるある…さまざまなブランド!

日本野菜ソムリエ協会主催の野菜ソムリエサミット2014において購入評価部門で大賞を受賞した玉名蘇鉄園芸の「高糖度桃太郎トマト」。同じく食味評価部門で4位のJA八代の「ロイヤルセレブ」をはじめ、生産者ならではのストーリーあふれるブランド名で流通しています。

美味しいだけでなく、カラダにいい!

トマトの底力は、様々な栄養素をバランスよく含むことはもちろん、赤い色素「リコピン」の含有量がとびぬけて高いことにあるといえます。
抗酸化作用が強いことがわかってきたリコピン…。この抗酸化作用とは、生活習慣病の原因となる活性酸素(カラダの錆びつき)を取り除く働きのこと。リコピンを摂取することで、糖尿病や肥満の改善、がん予防効果の可能性があるといわれています。リコピンは油に溶ける性質があるので、オリーブオイル等ともに食べると効率よく吸収でき、熱にも強いのでトマトソースや煮込み料理など理にかなった調理法です。

トマトは素材であり、調味料でもある!

トマトのうまみは、アミノ酸の一種であるグルタミン酸によるもの。これは昆布やしいたけに含まれるのと同じものです。イタリアの家庭でトマトが料理に欠かせないのは、日本の家庭でいう味噌や醤油の役割を果たしている、トマトがダシとして使われているということ。すなわちトマトは、健康を守り育てる調味料といえるのでしょう。

目指そう!トマト美人

生で良し、煮て、焼いて、冷凍に良し。サラダにもなればジュースにもソースにもなる、旨みが凝縮したドライトマトも作れる。こんな食べやすく様々に加工できる野菜がほかにあるでしょうか。
色もとってもきれいでまるでフルーツみたい、しかも火を通しても鮮やかな色は変わりません。オイルと共に調理したら栄養成分の吸収率はアップ!栄養価も高い野菜のスーパースターなのです。
全国各地で不動の人気を誇る熊本の赤!お宝トマトを、地元の私たちももっともっと食べて健康にキレイに!トマト美人を目指しましょう。

ぱぱっと簡単レシピ

トマトとアボカドのマリネ

<材料2人分>
塩トマト 2個
アボカド  1個
レモンの絞り汁 小さじ2
タコ 適量

・ドレッシング
酢 大さじ1
オリーブオイル 小さじ2
しょうゆ 小さじ1
わさび  小さじ1

<作り方>
⑴ 塩トマトはヘタをとって2㎝角に切る。アボカドは包丁で種を中心に切り目を入れて両手でずらすようにして2つに分ける。皮をむき、種をはずして2㎝角に切ってレモン汁をかけておく。タコは食べやすい大きさに切る。
⑵ボウルにドレッシングの材料を入れて混ぜ、⑴を混ぜ合わせる。

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持田 成子Shigeko Mochida

野菜ソムリエ上級プロ
女子栄養大学生涯学習講師

女子栄養大学在学中に「野菜のビタミン分析」に携わったことがきっかけで野菜ソムリエ資格を取得。「旬の野菜果物のチカラはココロとカラダを元気にする」をテーマに食育やセミナー、レシピ開発など食の周りで活動中。

野菜ソムリエとは

日本野菜ソムリエ協会が認定する資格。野菜・果物の知識を活かし自らの生活に活かす「野菜ソムリエ」、野菜・果物の専門家「野菜ソムリエプロ」、専門家の最上位資格「野菜ソムリエ上級プロ」と、3段階の資格がある。

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