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Vitamin Table 〜第14回 伝統野菜・在来野菜のおはなし〜

前回は、未来の農業人が育つ「熊農」に潜入し、農業高校の現在をお伝えしました。いかがだったでしょうか。今回は、熊本県立熊本農業高等学校でも取り組んでいる伝統野菜・在来野菜について紐解いてみたいと思います。

日本の原産野菜ってある?

アジアの東の端に位置する日本では、現在栽培されている野菜のほとんどは海外から渡ってきたものなのです。南方や北方、乾燥地帯が原産の野菜たちは、何百年にもわたり、地域独特の野菜として根付きました。

その土地それぞれの文化が詰まった野菜に

土料理や伝統行事食として供されるなど、地域の食文化の礎となり、その土地に生きる人たちの食生活に馴染み、代々受け継がれる野菜となってきたのです。違う国、違う気候や土壌のところから伝播してきても、その土地に適応するためには自身で変化したり、自然淘汰されるしかありません。長い時を経て各地域に根ざしていったのが、伝統野菜です。
たとえば関西で食していた「天王寺かぶら」が長野へ伝わり、葉を漬物として食す「野沢菜」になったという言い伝えは有名なお話です。

 

ヒゴムラサキ(赤なす)
黒菜

伝統野菜の定義とは…

農林水産省のホームページを見ると、『その土地で古くから作られてきたもので、採種を繰り返していく中で、その土地の気候風土にあう野菜として確立されてきたもの』とあります。地域ごとに様々というわけです。たとえば、”栽培が始まった時期の古さ”という基準にしても様々。「昭和20年以前から栽培を始めた野菜」という地域があれば、「明治以前から」という地域もあるのです。

「くまもとふるさと野菜」と「ひご野菜」

熊本県では、平成17年度に、熊本の人や風土と関わりが深く、昭和20年以前から県内で栽培されてきた野菜や伝統料理と結びつき伝統的に栽培されてきた野菜14品目を、平成18年度に1つ加え15品目を「伝統野菜」と選定し、特産野菜13品目をあわせて「くまもとふるさと野菜」と認定しています。熊本市でも平成18年度に15品目を「ひご野菜」と認定し、互いにブランド化を図ってきました。そのような中、県内の地域に古くから根ざしてきた作物、有用植物の保全と普及を目指して、平成28年3月に熊本大学を中心に料理人・生産者・有識者が連携していく「くまもと在来種研究会」(筆者も所属・6/20にセミナーを開催します)が設立され、調査・研究が重ねられています。

どこで買えるのでしょう?

それぞれの伝統野菜が栽培される時期に、地域の直売所や道の駅、
品目や品種によっては八百屋さんやスーパーの野菜売り場で見つけることもできます。
ですが、どこででも買えるというわけでないのが現状です。もともと栽培している量が少なく、生産者の高齢化もあって、食べられる機会も限られてしまうのです。

なぜ生産量が少ないのでしょう…

生産効率のよい、周年いつでも食べることができるという生活者のニーズに合わせて「F1」という種でつくられる一般的な野菜が台頭し、それに比べて伝統野菜は作りにくく、形が不ぞろい、流通に向かない…などの点で影を潜めてしまった背景があります。
「F1」とは、収穫量を増やして安定的に供給でき、育ち方や食味の特性を揃えて栽培しやすい品種のこと。たとえば大根…辛みが少なく甘みが強く、収穫作業も楽な「青首大根」が年中売り場に並んでいるということです。作りやすいF1が登場したお陰で、伝統野菜は次第に姿を消しつつある一方、私たちの食卓は形や品質が揃い安定的に供給されるF1野菜の恩恵を受け、高度経済成長期には栄養改善を支えられ、より豊かなものになってきたのも事実です。

水前寺菜
弓削瓢柑
あか根れんこん

伝統野菜を見直す

地域に根付いた野菜を掘り起こし、地域ブランドにしようという動きが広がっています。伝統野菜は、その季節に、その土地でしか味わえない、旬が味わえるという特別感に、高まりつつある人気のヒミツがあるようです。

私たちにできること…食べることで繋ぐ

長年、自家採種して種を守り続け、親から子へ、子から孫へと受け継がれてきた地域独自の野菜たちも、生産者の高齢化や後継者不足で途絶えてしまうと危惧される品目があると聞きます。
前回ご紹介した熊本県立熊本農業高等学校の「ひご野菜プロジェクト」はじめ、県内の多くの農業高校では、地域独自の産物を掘り起こし受け継いでいく、未来の農業人たちが取り組んでいます。
熊本のそれぞれの地域の風土に馴染んで四季それぞれ、その地域ならではの伝統的な食文化を育んできた野菜の価値を知り、食べる機会を増やす…。和食が世界文化遺産に認定され、日本型食生活が健康に良いと再認識されてきた今だからこそ、年間を通して多種多様の野菜がある熊本に住んでいるからこそ味わえる幸せ…。伝統野菜で四季を感じる、味わう、直売所や野菜売り場で見かけたら、買って食べてみる!こんな楽しみ方をちょっと加えられたら、毎日がより心豊かに、そして健康に繋がる。熊本の宝である伝統野菜を食べて繋いでいく!大切なことではないかと思います。

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持田 成子Shigeko Mochida

野菜ソムリエ上級プロ
女子栄養大学生涯学習講師

女子栄養大学在学中に「野菜のビタミン分析」に携わったことがきっかけで野菜ソムリエ資格を取得。「旬の野菜果物のチカラはココロとカラダを元気にする」をテーマに食育やセミナー、レシピ開発など食の周りで活動中。

野菜ソムリエとは

日本野菜ソムリエ協会が認定する資格。野菜・果物の知識を活かし自らの生活に活かす「野菜ソムリエ」、野菜・果物の専門家「野菜ソムリエプロ」、専門家の最上位資格「野菜ソムリエ上級プロ」と、3段階の資格がある。

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