【Sat】

Vitamin Table 〜第39回 新じゃがのおはなし〜

カラっとした気持ちのいいお天気が続いていますが、いかがお過ごしでしょうか。
この気持ち良さも今のうち…そろそろジメジメした梅雨の季節に入り、気温差や湿度の高さから体内バランスを崩しがちな時期に入ります。そんな今月は、ビタミン類豊富で、優秀なエネルギー源にもなる定番野菜「じゃがいも」。なかでも春から初夏にかけて出回る新じゃがについて紐解きます。

じゃがいもはどこから?

インカ帝国の重要な作物だったじゃがいもは南米アンデス高原が原産地。その後、ヨーロッパに伝わり、日本へは1601年にオランダ人が東洋貿易の交易地としていたジャワ島のジャカトラから長崎に伝えたとされています。「ジャガタライモ」が後に「じゃがいも」に。

じゃがいもの呼び名

ポテトサラダに、フライドポテト…と、「ポテト」が共通言語のようになっていますが、実はポテトは英語名、フランスではポム・ド・テール、日本では、じゃがいも、…とお国柄があります。日本で「馬鈴薯(ばれいしょ)」とも呼ばれる名の由来は、じゃがいもを茎ごと掘ってみると、いもが鈴なりになって出てきます。馬の首に付ける鈴の形に似ているからとか…。主産地北海道で、その昔、開拓に馬が活躍していたことに、その逸話があるのかなと歴史に思いを馳せました。

じゃがいも前線は北上する!

じゃがいもの旬というと秋を思い浮かべますが、2月頃から沖縄や奄美などで収穫が始まり鹿児島へ、それから5月初夏を告げる頃に長崎へ。その後、静岡から千葉など本州の産地が続き、北海道では7月頃まで新じゃがと呼ばれるそうです。
冷涼な気候を好むじゃがいも!生育適温は15℃~21℃。涼しい気候を追って、南北に長い日本列島で産地をリレーしながら栽培されています。

新じゃがって品種?

新じゃがとは、掘りたての状態で選果・出荷され市場に出回るじゃがいものことです。地上にある葉や茎がまだ緑色のうちに収穫されるため、水分が多くて柔らかく、皮が薄くて香りがよいのが特徴です。

熊本にも新じゃがの産地が!

キリシタンの島天草では、その昔、宣教師がじゃがいもを持ち込んだとされ、「いじんがらいも」と呼ぶ地域が今でもあり、天草の新じゃがは4~5月に出荷されています。そして5月から6月にかけて出荷される八代には県内最大の産地として知られる地域があります。

八代の新じゃがといえば「愛ポテト」!

…ということで、八代市鏡町に向かいました。お邪魔したのはJAやつしろ北新地馬鈴薯部会、会長の山崎義行さん 千代美さんご夫妻。

八代は畳表の原料であるい草の栽培日本一の産地です。この北新地でもい草の栽培が盛んだったそうですが、約20年前にい草の転換作物として馬鈴薯の導入が決まり、まず土地改良事業が始まったそうです。客土と暗きょ排水で馬鈴薯に特化した畑地に改良し、土づくりに力を入れていよいよ栽培が始まりました。品種は「メークイン」、種いもは北海道、主に十勝地方から取り寄せているそうです。

今季は植え付け開始が12月から始まりました。雨天が多く植え付け作業に遅れが生じたものの、定植後の天候に恵まれて透明マルチ圃場の萌芽は早く、霜にも合わなかったので収穫も例年より早いそう。「順調に経過してきたと思うばってん、掘ってみらにゃわからんたい」「じゃ畑をみらなんね!」と案内していただくことに。碁盤の目のように網羅している農道の右も左も青々と茂ったじゃがいもの葉の光景…。それもそのはず、減少傾向にあるとはいえ北新地馬鈴薯部会は現在43戸、総面積82.5ヘクタールあるそうなのです。

約11ヘクタール栽培される山崎さんの畑に到着、掘ってくださった新じゃがはいまにもするっとむけそうな薄皮につつまれている…。
栽培のご苦労を伺うと、一番忙しいのは、芽だしのときと収穫、後は天候…と。掘りたてを蒸していただいた優しい味は格別!終始にこやかなご夫妻の笑顔を思い出し、栽培へのこだわりと愛情の深さを感じたひとときでした。
収穫・出荷は、トラクターで掘りおこしていく→コンテナに拾い入れる→作業小屋まで運んで2~3日おき、集荷所に運ぶ↠選果機にかけていかれるのです。選果機では、カメラ選別コンピューター選果、優良品が計状選別され小玉、規格外のものは作業員の手でよけられたあと、サイズ別に分かれていき瞬く間に箱詰めに。北新地「愛ポテト」として広島、関西、東京方面へと出荷されていく様子は畑とはまた違った光景で圧巻でした。
すぐそこは海。干拓地ならではの潮風も吹くほ場で育つ「愛ポテト」はミネラル分が豊富で荷崩れしにくいのが特徴で、市場から高い評価を受けられています。
前述のように県外出荷が中心で県内にはほとんど出回らないとのことですが、もし地元などでラッキーにも「愛ポテト」に出会えたら是非召し上がってみてください。

新じゃがの栄養

じゃがいもはみかんに匹敵するほどビタミンCが豊富、じゃがいものビタミンCはでんぷんに包まれているので熱を加えても壊れにくいことが特徴です。またエネルギー代謝に必要なビタミンB群、高血圧予防に大切なカリウムの供給源です。また最近はストレス対策に期待されるクロロゲン酸やGABAの機能性成分も注目されています。

 

季節限定の味、新じゃが。栄養たっぷりの優れもの定番野菜の旬を楽しんでみませんか。

(協力:JAやつしろ北新地馬鈴薯部会)

ぱぱっと簡単レシピ

ヴィシソワーズ(じゃがいもの冷製スープ)

<材料4人分>

新じゃが 中3個
玉ねぎ 中1個
水 200cc
ブイヨンの素(顆粒) 1個
牛乳 300cc
生クリーム 100cc
バター 15g
万能ねぎ(小口切り) 適量
塩 小さじ1

<作り方>
⑴玉ねぎはうすぎりにしてバターで炒める。
⑵新じゃがは使う直前にうす皮をこすってむき、薄切りにして⑴に加え炒める。
⑶水とブイヨンの素を加えてアクを取りながら弱火で15分から20分煮る
⑷新じゃががはしで触って崩れるくらいになったら、塩を入れミキサーにかけなめらかにする。
⑸氷水に当てながら十分に冷やし、生クリームと牛乳を入れてよく冷やす。召し上がる直前にグラスに盛り、万能ねぎを添える。

新じゃがのニョッキ トマトソース添え

<材料4人分>

新じゃが 200g
バター 大さじ2
粉類(強力粉 30g、薄力粉 30g)
塩 少々
トマトソース(市販のもの) 適量
粉チーズ、バジルの葉 適量

<作り方>
⑴新じゃがは洗って4つ割にし、耐熱容器に入れて電子レンジで約4分加熱する。皮をむいて熱いうちにつぶしてバターを加える。
⑵⑴に粉類をふるい入れ、よく練り混ぜる。生地を2等分にしてそれぞれ棒状にのばし、23㎝幅に切る。表面をフォークでかるくつぶす。
⑶鍋にたっぷりの湯を沸かし、塩を入れ2をゆでる。浮き上がってきたらざるにあげる。
⑷器にゆでたてのニョッキを盛り付け、温めたトマトソースをかけて粉チーズとバジルの葉を添える。

ハッシュドポテト

<材料1枚分>

新じゃが 3個
米粉 (薄力粉でも可) 大さじ2
オリーブオイル 大さじ2
塩、こしょう 少々
トマトケチャップ、マスタードなど 好みで適宜

<作り方>
⑴新じゃがは洗ってこするように皮をむき、細いせん切りにする。ボウルに入れて米粉と塩・こしょうをまぶす。
⑵フライパンにオリーブオイルを大さじ1入れて新じゃがを広げ焼く。焼き色がついたらオリーブオイル大さじ1を入れて裏返し同様に焼く。
⑶新じゃがに火が通り、カリカリに焼けたら皿に盛りつける。切り分けて好みでケチャップなどをつけていただく。

 

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持田 成子Shigeko Mochida

野菜ソムリエ上級プロ
女子栄養大学生涯学習講師

女子栄養大学在学中に「野菜のビタミン分析」に携わったことがきっかけで野菜ソムリエ資格を取得。「旬の野菜果物のチカラはココロとカラダを元気にする」をテーマに食育やセミナー、レシピ開発など食の周りで活動中。

野菜ソムリエとは

日本野菜ソムリエ協会が認定する資格。野菜・果物の知識を活かし自らの生活に活かす「野菜ソムリエ」、野菜・果物の専門家「野菜ソムリエプロ」、専門家の最上位資格「野菜ソムリエ上級プロ」と、3段階の資格がある。

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