キュウリについては、自分なりに日々工夫を続け、理想に近いものができるよう努力しています。
市場と消費者の嗜好について研究し、5年後に主流となる品種(イボが大きく、先端までトゲがあり、果皮が薄くタネが少ない)を種苗会社に直接相談しながら作り始めました。
キュウリくささがあって甘みもあるキュウリを目指しています。折っても再度くっつくほど粘質が高く味が濃いため、日持ちが良いのが特徴です。
量販店が扱いやすいよう、選別を徹底し、長さと大きさを揃えてきれいに並べ、定数詰めにすることで、平均価格より3割高の高評価を得ています。
市場に安定供給するため、4戸でグループ化して日量200~500ケースを可能にしました。今後もメンバーを増やす可能性はあります。
通常キュウリの生育には70~80%ほどの湿度が必要ですが、我が家のハウスでは収穫しても腕が濡れない程度に乾いており、訪れた方が驚かれます。
暖房費削減のため連棟ハウスの中にカーテンを垂らし単棟の状況を作り上げる、間口540cmで4列植えを3列植えにして空気や光の通りを良くする、冷たい雨が続く時には早めに暖房し谷の上部から空気を入れ替える、くん煙防除で徹底して病害を予防する、自動液肥装置の導入で労力を軽減するなど様々な工夫を心がけています。
また万田酵素を葉面散布液やかん水に混ぜているため、非常に根量が多く、地温が1~2℃高くなっています。
こだわっとる農
スイカ・キュウリ
山鹿市 ~皆が儲かり、地域が栄える農業を~
井上 敏幸さん
はじめに
私が住む山鹿市平小城地区は、火山灰由来の黒ボク土で水はけ・水もちが良く、古くからのスイカ産地です。
我が家は祖父の代からのスイカ農家でしたが、祖父の病気を機に福岡での会社勤めを辞めて20代後半でUターン就農しました。それまで全く農業経験がありませんでしたが、「人ができることは自分もできる。技術は上手い人から盗め。」との信念で、近隣の篤農家の栽培を観察し、徹底して真似をしたことで、3年ほどで栽培技術を身に着けることができました。
その後、30代半ばに家督を相続し、両親・妻には給料制で頑張ってもらいました。
今は妻と二人で、春夏作のスイカ延べ150aと加温のキュウリ25aを栽培しています。
スイカ栽培について
糖度と食味(シャリ感など)にはこだわりがありますが、栽培方法は長い歴史の中で確立されてきたJAのスイカ栽培マニュアル通りに行っております。夜間の換気に努めスイカにストレスをかけないよう心がけています。
しかし、近年は夏場の地温上昇により根が弱るため、透明マルチや白マルチなどの被覆材の違いによる地温変化の比較試験を農業普及・振興課やJA営農指導課の協力を得て行いました。植替え時には、白いクレフノンを透明マルチに塗ることで白マルチと同程度の地温低下効果が得られ、この技術は指導員の方々により産地に普及が図られています。
キュウリ栽培へのこだわりについて
私のモットーについて
私は自分だけ儲けてもしようがないと思っています。キュウリのグループでは互助方式で助け合い、技術は全て出し合って共有し、皆が儲かる農業を目指しています。
技術が他産地にも普及されてレベルアップしたら、さらに上を目指します。
隣人は一緒になって地域を支える仲間です。ミスをしたりミスをしそうな人には積極的にアドバイスをしていきます。指導員にも技術を伝え、地域に普及していただき、産地力の向上につながることを望んでいます。
今後の展開について
私も70歳を過ぎ、体力に合わせて春作のスイカの作付けを3割減らしました。今後は高い時期に売れる分だけ作り、収入は減らさず所得率を向上させ、自分の時給をアップさせるよう心がけていきます。
我が家には身内の後継者はいませんし、身内にこだわる必要もありません。できれば一から農業を志す新規参入者を育てて後継者にしたいと思っています。
栽培技術と経営手法を一人前になるまで指導し、最終的に農業の基盤を無償で譲ります。その代わりに私が働ける間は終身雇用してもらい、給料と年金で生活するというモデルになりたいと思います。
新規就農者の育成について
高齢化で地域の担い手が減る中で、いかに新規就農者を受け入れ育てていくかが産地や農村の維持発展のカギになります。新規参入者は、技術が未熟な上に、土地・施設・機械も持たず、人脈もありません。そこをフォローし、育てていく仕組みが必要です。
私は現在、鹿本地方農業経営者協議会の会長をさせていただいておりますが、山鹿市や県、JAなどの関係機関で構成される山鹿市担い手育成総合支援協議会と連携してその仕組みづくりに協力していきたいと思っています。
(紹介:県北広域本部 鹿本地域振興局 農業普及・振興課)
プロフィール
井上 敏幸さん
◯経営概要
大玉スイカ 80a(無加温単棟)4~5月出荷
小玉スイカ 70a(無加温単棟)7~8月出荷
キュウリ 25a(加温連棟) 9~翌2月出荷
◯労働力
本人、妻の2人