「ゆうべに」健苗育成に向けた育苗管理のポイントについて

はじめに

県育成イチゴ品種「ゆうべに」は、平成27年から導入され、現在県内のイチゴ栽培面積の約50%を占める本県の主要品種です。品種特性として早生で連続出蕾性が高いため、年内の収量が特に多く、収量性に優れています。「ゆうべに」の特性を生かした栽培を行うためには、適期の管理作業を基本とした健全な苗づくりが重要になります。管理の遅れは、苗の充実が図れないだけでなく、定植苗の不足や花芽分化のばらつきを招き、収量が安定しません。そこで、今回は「ゆうべに」の健苗育成に向けた育苗管理スケジュールと管理のポイントをご紹介します。

(1)育苗初期
育苗初期の病害発生は、定植苗の不足を招くばかりでなく、定植後も防除に多大な労力が必要になり収量が安定しません。特に、炭そ病の病害蔓延(水や泥はね)を防ぐ管理(図1)を徹底します。

図1 育苗施設対策ポイント

(2)採苗
①鉢受け
3寸(9cm)のポリポットを準備し、各地域の採苗時期(表1)に従い鉢受けを行います。早すぎる鉢受けは苗の老化を招きやすく、鉢受が遅れると苗の充実が図れず、苗生育や花芽分化のバラツキが発生します。鉢受けは1.5枚ほど葉が展開し、少し発根したタイミング(図2)で行います。ランナーの鉢受けタイミングが早過ぎると、葉焼け(図3)が発生するので注意しましょう。

図2 ランナー鉢受け時の目安
図3 早すぎる鉢受で葉焼けしたランナー

②かん水管理
鉢受け初期は、親株中心のかん水を行い、子苗はポット表面が乾燥してから、かん水をします。

③ランナー焼け(先枯れ)対策
生育が旺盛で蒸散量の多い採苗期は、ランナー焼けが発生しやすく、高温、多肥、乾燥、かん水過多、根痛みはランナー焼けの発生を助長します。
こまめな親株へのかん水を心掛けるとともに、高温対策として、古ビニル(2割程度遮光)を展張し、開口部を出来るだけ広くした換気を行います。また、梅雨の晴れ間は特に注意し、ランナー焼けを防ぐため徒長しない程度の遮光資材を臨機的に利用します。

(3)育苗管理
①施肥
子苗への施肥は2回に分けて置肥で行います。置肥1回目(切り離し前)は、鉢受け終了後の約5日後に施用し、置肥2回目(最終置肥)は下記の地域基準に合わせ施用(70mg/ポット)します。
準高冷地:8月5~10日  中間地:8月10~15日  平坦地:8月15~20日

②切り離し
親株からの切り離し:鉢受け終了15日後目安 子苗の切り離し:鉢受け終了20日後目安
切り離し直後は、萎れ・焼け対策のために遮光資材を一時的に展張しましょう。

③葉かぎ
最終の置肥施用まで葉数2.5~3枚程度を目安に、定植前は3.5~4枚程度に管理します。

最後に

近年の温暖化により、高温下の乾燥や過湿による株の弱りが増えています。管理の徹底により、健苗育成を図り収量向上を目指しましょう。
なお、鹿本地域では、高温対策の取組として、遮光(資材)の長期展張による徒長を防ぐため、育苗ハウスのフルオープン化(図4)が一部で進んでいます。
病害虫対策としては、前作炭そ病、アザミウマの発生が多かった事から、ローテーション防除暦を見直し、育苗段階からの防除体系の強化に取り組んでいます。

図4 フルオープン育苗ハウス

※図2~3、表1~2は、「ゆうべに」土耕栽培管理指針(改訂版)より参照、一部加筆修正

県北広域本部 鹿本地域振興局 農業普及・振興課

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