「ゆうべに」における収量・品質アップに向けた摘花(果)のポイントについて

はじめに

県育成イチゴ品種「ゆうべに」は、平成27年から導入され、現在県内のイチゴ栽培面積の約50%を占める本県の主要品種です。品種特性としては、早生で連続出蕾(しゅつらい)性が高いため、年内の収量が特に多く、収量性に優れています。しかし、その連続出蕾性から着果過多となった場合は、成り疲れによって草勢が弱まり、収量・品質が低下する事例も見られます。そのため、花房の連続性に応じた摘花を適切に行い、定植から厳寒期の草勢を維持することが重要です。そこで今回は、「ゆうべに」の収量・品質向上に向けた定植から年内の摘花(果)・摘花房管理のポイントをご紹介します。

(1)不時出蕾発生時の対策
不時出蕾は、育苗時もしくは定植後すぐに出蕾する花房です。不時出蕾は、苗の老化や育苗時の窒素不足等が発生要因で、着果させても果実品質が劣り、その後の生育・収量低下を招きます。そこで、平坦地及び中間地では105日までに出蕾した花房、準高冷地では930日までに出蕾した花房を必ず除去してください。

<準高冷地、中間地、平坦地の分類>
準高冷地:年間平均気温が概ね14℃未満(標高800m以下)の地域
中間地:年間平均気温が概ね1416℃の地域  平坦地:年間平均気温が概ね16℃以上の地域

(2)摘花(果)
頂花房の摘花は、年明けの収穫が予想される花(12月上旬以降に開花した頂花房の花)を摘花します。表1の着果目安を参考に土耕栽培、高設栽培についてそれぞれ管理しましょう。
なお、多段式高設栽培の場合は、下段をより強めに摘花することで成り疲れを防ぐことができます。
頂花房~第2花房の花房間葉数が23枚のときは、第2花房の開花時に頂花房の被り花(収穫期が重なる花)を摘花し、着果負担が重複しないようにします(写真1、図1)。

(3)摘花房
「ゆうべに」は、適切な管理を行っていても栽培環境によって過度に連続出蕾することがあります。頂花房と第2花房が過度に連続出蕾した場合は、第2花房(ダブル花房に限る)、1.5番花を花房ごと除去します。摘花房を行うとガクの萎れや糖度低下が軽減でき収穫の山谷も小さくなります。
※1.5番果:頂花房出蕾後、2芽に分かれた芽のうち片方が12枚で出蕾し、芯止まりになったもの(もう片方の芽は通常どおり葉が展開している)。

【展示ほの取り組み紹介】
令和3年産「ゆうべに」栽培において1.5番果の摘花房の有無が果実品質に及ぼす影響について、調査を行いましたのでその内容をご紹介します。
①調査内容(試験区)
.5番果を花房ごと除去した場合と、花房は除去せず摘花によって果数を調節した場合の収量性及び果実品質を比較しました。また、正常に出蕾し、1.5番果の発生がない株を対照としました(図2)。

図2 試験区の概要

②調査結果
収量・品質ともに1.5番果の発生がない正常出蕾株が最も優れる結果となりました。そのため、第一に花芽分化を揃えて定植後の不時出蕾、過度な連続出蕾および1.5番果の発生を抑える事が最も重要になります。1.5番果が発生した場合も、1.5番果を花房ごと除去することで正常出蕾株と同等の果実品質が維持されました。一方、1.5番果を除去せず摘花で調節した場合、成り疲れが生じて果実は小玉傾向になり、ガクの萎れ等の障害果が増加しました。また、成り疲れがひどい株は生育が停滞するもしくは、芽なし株(写真2:成長点が消滅する症状)が20%発生し、2月以降の収穫が出来ませんでした。
以上の結果から、1.5番果の摘花房は「ゆうべに」安定生産に欠かせない管理になります。

写真2 芽なし株

最後に

「ゆうべに」においては、土耕栽培・高設栽培のいずれにおいても成り疲れを防ぐ管理が重要です。健苗育成を基本に、適切な摘花(果)・摘花房作業と併せてこまめな温度管理、電照管理等を行い、イチゴの生育に合わせたきめ細やかな管理による収量・品質の向上につなげましょう。

県北広域本部 鹿本地域振興局 農業普及・振興課

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