①草勢管理の目安
年内は、ゆっくりと生育させ草勢をつけすぎないようにします。特に天井ビニル被覆後の温度管理が重要となるため、表1の生育目安を確認しながら管理します。草高の目標は電照開始の11月中旬頃までは23㎝以下、電照開始以降は着色不良果が発生しないよう、30㎝を超えないように管理します。
「ゆうべに」高設栽培における定植から年内までの栽培管理のポイントについて
はじめに
県育成品種「ゆうべに」は、平成27年から導入され、現在県内のイチゴ栽培面積の約50%を占める本県の主要品種です。土耕栽培を主体に高設栽培でも普及していますが、不適切な栽培管理による収量・品質の低下が一部で見られます。そこで今回は、高設栽培における「ゆうべに」の収量・品質向上にむけた定植期から年内までの栽培管理のポイントをご紹介します。
ほ場準備(定植準備)
前年の病害発生程度に応じ、薬剤や太陽熱による土壌消毒を行います。
基肥は9月上旬頃(準高冷地は8月下旬頃)、全層に施肥し、土壌と混和します。
施肥量は、株あたりの窒素成分0.6g程度を基本とします。
定植
①定植時期
平坦地:9月23日~27日
中間地:9月18日~22日
準高冷地:9月10日~15日を目安に定植します。定植時期が早すぎると収穫の谷が生じやすくなり、逆に遅すぎると成り疲れや芯止まりが発生しやすくなるので、遵守します。
②定植位置
密植は、葉かぎ・玉だし等の作業が煩雑になり、不良果が発生しやすくなります。栽培期間を通じて収量・品質を確保するためには、適正な株間で植え付けます。また、当品種は果梗が長くなるため外なり方式とし、玉受けネットを設置します。
栽植様式:株間 23~26㎝
栽植密度 6500~7000(株/10a)
※平段方式の場合
③定植
活着すると株が培地中に引き込まれるため、深植えは避け、クラウン部が見えるように定植します。
④かん水管理
定植直後は、根鉢と培地の隙間がなくなるように、株元中心のかん水を行います。
定植後3~5日間は、活着促進のためクラウン部が乾かないように株元を中心とした十分な根回しかん水を行います。
本ぽ(定植後~年内の管理)
②不時出蕾の対策
不時出蕾の花房に着果させても果実品質が劣り、その後の生育・収量低下を招きます。そこで、平坦地及び中間地:10月5日までに出蕾した花房準高冷地:9月30日までに出蕾した花房をそれぞれ除去してください。
③マルチ被覆・追肥
マルチの種類は「白黒ダブルマルチ(白色面を表)」が基本です。マルチ被覆は基本的に頂花房の出蕾時に行います。
マルチ時の追肥は、第2花房の花芽分化を確認後行います。緩効性肥料を用いて、穴施肥とし、株あたり窒素成分1.4g程度を施用します。
④天井ビニル被覆
天井ビニル被覆は、
平坦地:10月27日~30日
中間地:10月22日~25日
準高冷地:10月18日~22日をそれぞれ目安とします。
被覆後は草勢が強くなるので、気温や草勢を見ながら表2を参考に展張時期を調整します
⑤カルシウム剤・発根剤の施用
カルシウム剤は、着色不良果の発生を抑制するため、頂花房の開花後から、10日に1回程度定期的に施用します。
発根剤は、地上部の生育をしっかり支える根を確保するため、着果負担が大きくなる前(11月中旬~12月上旬)から10日に1回程度定期的に施用します。
⑥暖房準備~保温開始
天井ビニル被覆から11月までの温度管理はとても重要です。表3、表4を参考に、高温管理にならないよう注意し、葉が厚く徒長のない株づくりを行います。
⑦電照
電照期間および時間の目安は表5のとおりです。12月下旬までに最長2時間程度となるように徐々に長くしていきます。ただし前述のとおり、草高は30㎝を超えないようにします。
⑧葉数管理
頂花房の収穫開始までに葉数10枚以上を確保します。また、黄化葉は除去し、発根促進剤を施用して新葉の展開を促します。
⑨摘花(果)・摘花房
頂花房の摘花は、年明けの収穫が予想される花(12月上旬以降に開花した頂花房の花)を摘花します。摘花の目安は10花程度です。なお、多段式高設の場合、下段はより強めに摘花をした方が成り疲れを防げます。高設栽培は、土耕栽培より強めに摘花(果)することが重要です。
また、頂花房と第2花房が過度に連続した場合は、第2花房(1.5番花を含む)を花房ごと除去します。
最後に
「ゆうべに」の高設栽培では、成り疲れを防ぐ管理が必須です。こまめな温度管理や定期的なカルシウム剤と発根剤の施用、適切な摘花・摘花房作業が必ず収量・品質向上につながります。いちごの生育に合わせてきめ細やかな管理を行い、収量・品質の向上につなげましょう。
県央広域本部 農林部 農業普及・振興課
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