トルコギキョウ夏秋産地における定植準備について

はじめに

トルコギキョウは、品種数が多く、冠婚葬祭やギフト、仏花など多様な場面で使われる切り花です。
県内では、平坦地と準高冷地で栽培することにより、周年出荷が行われ、全国で2番目の栽培面積と出荷量を誇ります。
阿蘇地域では、冷涼な気候を活かして夏秋期に出荷しています(表1)。
しかし、近年、土壌病害等の連作障害がみられることから、阿蘇地域で安定した生産に取り組むための定植準備について紹介します。

定植準備

トルコギキョウの安定した生産と出荷には、計画的なほ場準備が非常に重要です。準備が遅れてしまうと、定植後の生育不良や品質低下などを招く恐れがあります。このため、前作の終了後直ちに次作に向けた準備を開始します。次作の定植予定日から逆算し、余裕をもって土壌消毒や畝立てを行いましょう。

1 連作障害対策
阿蘇地域では、ほとんどの生産者が同じほ場を連続使用しているため、連作障害を回避する以下の対策が重要です。
(1)残さの除去
前作の根などが残っていると病原菌の増殖に繋がります。そのため、栽培終了後は速やかに残さを取り除き、ハウス外で埋却するなどして処分しましょう。地際部や太い根は、腐熟処理(後述)を行っても十分に分解しきれず残ってしまうことがあるので、丁寧に取り除きましょう。
また、土壌病害の発生ほ場で使用したフラワーネットの支柱やマルチ抑えは、次作や他のほ場への伝染源になりますので、使用後は洗浄・消毒を行いましょう。
(2)除塩
施設で連作すると塩類集積により根傷みしやすくなり、それに伴って土壌病害虫が発生しやすくなります。このため、収穫後にほ場全体の土壌表面を直接雨に当てるか、2週間以上湛水して除塩に努めましょう。

(3)腐熟処理
収穫後の株を抜き取っても細根の一部や途中で切れた根がほ場内に残ってしまうと病原菌の住処となります。残った根を分解させ、土壌消毒の効果を高めるため、完熟堆肥等を投入し、耕耘します。
その際、汚染した土壌をトラクターのタイヤやロータリーを介して未発生ほ場へ持ち込まないよう注意が必要です。土壌病害が発生したり、発生が疑われるほ場の耕起は最後に行うなどハウスを移動する際は、動力噴霧器などを用いて洗浄しましょう。
耕耘後は、土壌表面を古ビニルなどで被覆し、微生物の活動が活発になる適度な水分量を保ちます。阿蘇地域の季咲き作型では、30℃程度の地温を得るため、遅くても10月上旬までには被覆を終えるようにしましょう。
(4)土壌消毒と予熱処理
夏秋産地の場合、地温の低い時期に土壌消毒を行わざるを得ません。この時期は、太陽熱土壌消毒や土壌還元消毒に必要な地温を十分な深さまで確保することができないため、クロルピクリン等の土壌くん蒸剤を使用します(表2)。消毒開始1か月前に軽く散水してからほ場全体にビニルを被覆し、土壌水分と地温を一定に保つことで効果が高まります(予熱処理)。

2 土づくり
(1)有機物の投入
阿蘇地域の土壌の多くは、火山灰からできた黒ボク土です。黒ボク土は有機物が多いため、保水性や透水性が良く、耕起が容易であるなど他の土壌に比べて物理性は良好です。しかし、施設栽培では有機物の分解が早いので、完熟堆肥など有機物を定期的に投入する必要があります。有機物を適正に投入することで、土壌物理性が維持・改善されるだけでなく、微生物の働きが活発になり、微生物の多様性を維持し、病原菌の増殖を抑制する効果が期待されます。
(2)施肥
黒ボク土は、養分として重要なリン酸が効きにくいため、定期的に土壌診断を行い、化学肥料をバランス良く施用する必要があります。
(3)畝づくり
トルコギキョウは、土壌中の温度や水分の変化が大きいと細根が傷みやすくなるため、畝内全体が均一に十分湿った状態の畝を立てることが重要です。畝の硬さ(ち密度)は、親指に力を入れると指元まで入る程度にし、マルチの前には水が畝内で横にも広がるよう水圧を弱めてゆっくりと潅水を行います。こうして定植の1週間前には、作土層と心土層(作土層下の湿った土層)が連続し水分を十分に含んだ締まった畝を立て、マルチを行いましょう(図1)。

図1 畝づくりとかん水による定植準備

最後に

阿蘇地域のトルコギキョウは、九州内外からの需要が年々高まっています。この需要に応えるためにも、収量や品質を大きく左右するほ場準備を計画的かつ適期に行いましょう。

県北広域本部 阿蘇地域振興局 農業普及・振興課

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