八代地域におけるトルコギキョウ栽培の土壌特性に応じた土づくり

はじめに

八代地域では、温暖な気候を活かして10月から翌年6月までトルコギキョウの長期出荷が行われており、県内トップクラスの出荷量となっています。
山沿いから海岸沿いまでの広い範囲で栽培され、砂質土壌から粘土質土壌まで多様な土壌が広がっており、ほ場ごとの土壌特性に応じた管理が必要となっています。
そこで、八代地域で安定して高品質なトルコギキョウ生産に取り組むため、土壌特性に応じた土づくりについて紹介します。

トルコギキョウ栽培に適した土づくり

トルコギキョウの自生地である北アメリカ大陸の気象条件では、生育初期は土壌が湿潤状態にあり、その後に乾燥状態となります。また、生育初期の高温や水不足など生育条件が整わないと、ロゼット化(休眠)しやすいという性質を持っています。品種改良が進んだ現在でも、自生地のような環境を作ることが安定したトルコギキョウ生産を行う上で大切です。
前述のとおり、トルコギキョウは土壌水分に敏感な性質を持ち、もともとは土壌中の水分を得やすい深根性の植物です。このため、トルコギキョウの生育に適した土壌の特性としては①保水性と排水性を併せ持ち、②十分な有効土層を持つことが重要です。

(1)土壌に保水性と排水性を持たせる団粒構造の形成
団粒構造とは、小さな土の粒子同士が集まって一つの塊(団粒)を作り、これらが集まっている状態を言います。小さな粒子同士の間に水を保持しやすく、大きな粒子同士の間で、排水ができるため、土壌は保水性と排水性の両方を併せ持つことができます。(図1)
一方、粒子が団粒を形成せず、それぞれがばらばらに存在している状態は単粒構造といいます。過乾燥や過湿状態での耕起により土壌粒子は単粒化しやすいため、適切な(適度に湿った)水分状態での耕起を心掛けてください。
土壌が単粒構造だと、砂の割合が高いほ場では、土壌粒子が大きいため保水性が悪く、乾燥しやすくなります。また、粘土の割合が高いほ場では、土壌粒子が小さいため透水性や通気性が悪く、土が硬くなり、根の伸張が抑制されます。
土壌がどの程度団粒を作っているかは、土の塊を弱い力で軽く崩した時の粒子の様子から知ることができます(表1、写真1)。
団粒構造は有機物の施用で促進されるため、団粒が未発達なほ場では有機物の積極的な施用により、土壌の団粒化を促しましょう。

 

図1:団粒構造のイメージ
※握ったり押したりするときに、塊をつぶさないように注意する
写真1:団粒化程度の確認

(2)有効土層の確保

有効土層とは、作物の根が容易に伸長できる土層のことです。耕盤などの硬い層があると、そこから先には根が伸びません。
有効土層の浅いほ場では、地表面の近くに根が密集しやすく、土壌水分や地温の変化の影響を受けやすくなります。
有効土層が浅い(30~40㎝程度)ほ場でも、土壌の特性を把握したうえで、適切な管理を行うことにより、トルコギキョウ栽培は可能ですが、有効土層を50~60㎝程度確保することが、無理のないトルコギキョウ栽培につながるポイントになります。
トルコギキョウは品種によっては浅く広がる根を持ちますが、本来は深根性の作物ですので、下層土や地下水位の状況を確認したうえで、十分な有効土層を確保するために、心土破砕や深耕ロータリ等で深耕しましょう。

(3)有機物の補給
八代地域のトルコギキョウ栽培は、台風の影響のリスクが高まる8月以降に定植が行われることから、耐候性ハウスでの栽培が増えています。耐候性ハウスでは、夏場に高温になりやすく、土壌が乾燥しやすいことから、土壌有機物が消耗しやすい環境になります。土壌有機物の減少は、土壌の単粒化や緩衝能の低下を招くため、定期的な有機物の供給が必要です(表2)。
団粒構造の形成が促進され、土壌のち密度も低下し、有効土層の確保につながります。
有機物の供給方法としては、堆肥等の施用のほか、緑肥の栽培や残渣のすき込みがあります(写真2)。堆肥の施用では、土壌の分析結果を参考に、養分過剰とならないようにしましょう。また、前作の残渣をすき込む場合は、病害虫対策として、発病株はほ場外へ持ち出し、土壌消毒を徹底してください。

写真2:トルコギキョウ栽培後のソルゴー(播種40日後)

土壌特性の把握と土壌特性に応じた管理

(1)土壌特性の把握
ほ場に応じた管理を実施するためには、土壌特性を把握することが重要になります。
土壌特性の把握には栽培後の土壌断面を調べることが効果的で、調査項目としては、①根の伸張、②土壌硬度、③土性の三項目を基本として、その他、地下水位の高さなどほ場に応じて必要な調査項目を追加します。

①根の伸張
作土の下まで穴を掘ることで、根の伸張具合がわかります。
根の伸張具合は土壌状態を反映しており、根の伸張具合を見るポイントとしては、根の入っている深さ、横への広がり、根の密度などがあります。
根の入っている深さは、耕盤までの深さや水の浸透具合、地下水位など、根が伸長できなくなる深さを表しています。
また、根の横への広がりは、畝内の土壌の硬さや水分状態が関係しています。
根の密度は、畝断面全体での根量の多少を見ます。根の密度が高いと作物が吸収できる水や養分が多くなります。
近年の大輪フリンジ系のトルコギキョウは細根が多く、細根が広範囲に密集できる(根の伸張を阻害しない)環境を作ることが高品質なトルコギキョウ生産につながります(写真3)。

写真3:細根の充実したトルコギキョウ

②土壌硬度
土壌硬度は土の硬さを表します。通常、山中式土壌硬度計(写真4)を用いて、ち密度(土壌の硬さを表す指標)を測定することで、土壌の硬さや土壌中での根の伸びやすさがわかります。
また、硬度計を用いなくても、親指で土壌断面を押すことで、土壌の硬さの目安を調べることができます(表3)。
土壌硬度は根の伸張や水の広がりに密接に関係しています。畝たて後の畝の硬さを確認することで、適切な畝づくりができているか確認することができます。
③土性
土性とは、土に含まれる粘土と砂の割合で決められ、土壌の持つ基本的な特性(土壌特性)を表します。
土性は手に少量の土を取り、指でこねて伸ばした時の長さや感触から砂や粘土の多さから判別できます(表4、写真5)。

写真4:山中式土壌硬度計
写真5:土性の調査
※判定の際は、土に少量の水を加えて行う。

(2)土性に応じた管理

①粘土質土壌
粘土質土壌の特徴として、水持ちの良さがあります。反面、排水不良につながりやすいため対策が必要です。
また、粘土質土壌は一度乾燥すると硬くなりやすいため、土壌水分の状態には注意が必要です。
排水性の改善には、明きょや暗きょの施工によりほ場自体の排水能力の向上を図るほか、けいそう土焼成粒やバーミキュライト等の透水性改善効果がある土壌改良資材の施用といった方法があります。また、粘土質土壌でも団粒構造が発達することによって、排水性が良くなることが期待できます。

②壌質土壌
壌質土壌の特徴としては、透水性や保水性が中程度であり、粘土質土壌と砂質土壌の中間的な性質となります。
壌質土壌の中でも粘土と砂の割合によって、粘土質土壌や砂質土壌のどちらかに近い性質になるため、ほ場の性質を把握する必要があります。

③砂質土壌
砂質土壌の特徴としては、水はけの良さがあります。また、畝たての際はち密度が低くなりやすいので、苗の活着や畝内でのかん水の横浸透が悪くなります。このため、砂質土壌では、「親指に力を入れて畝を押すと指元まで入る程度の硬さ」に畝を鎮圧することが有効です。
土壌の保水性を高める資材として、泥炭やパーライトが挙げられます。また、砂質土壌においても団粒構造を発達させることで、保水性を良くすることができます。砂質土壌で団粒を形成するためには、有機物の施用や緑肥のすき込みが有効です。

④客土の場合
客土用の土壌は、基本的に栽培に適した土壌を選ぶ必要があります。しかし、下層土が砂質か粘土質かで土壌特性は異なってきます。
例えば、客土の下の土壌に粘土が多く深まれている場合、客土部分は透水性が良く水が浸透しても、下層土で水が停滞し、排水不良から酸欠や根腐れを引き起こす場合があります。このような場合には下層土に対して土壌改良が必要になります。
このように客土されたほ場では、客土部分と下層土双方の特性を把握して栽培することが重要です。

おわりに

ほ場の状態に適した管理を行うためには、ほ場状態の把握(土壌診断)が必要です。土壌診断には大きく、化学性と物理性の診断があります。
化学性の分析には、経費も時間もかかりますが、物理性はスコップを用いて、掘ればすぐわかります(写真6)。
ほ場内に生育不良箇所がある場合は、まずは、自分のほ場を掘って、根の伸張の様子や土の硬さ、水の浸透具合について調べてみましょう。自分のほ場の特性と状態を把握し、適切な土づくりを行うことが良好な生育を得るための第一歩です。
土づくりは一度ですぐに結果が出るものではありません。あせらず「毎年少しずつ」を継続して、徐々にトルコギキョウを栽培しやすい土壌に改善しましょう(写真7)。

写真6:土壌断面調査の様子
写真7:収穫を待つトルコギキョウ

県南広域本部 農林水産部 農業普及・振興課

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