湿地性カラーの年内収量を向上させる秋からの管理について ~秋からの株づくりで年内収量アップ~

はじめに

カラーは、サトイモ科に属する球根植物で、水分の豊富な場所を好む湿地種と乾いた土地を好む畑地種があります。熊本県では、豊かな水資源を活かし熊本市や八代市を中心に湿地性カラーの栽培が多く、熊本市では南区御幸地区を中心に栽培が行われています。
今回は、需要の高い年内から高収量を上げるための栽培のポイントをご紹介します。

9月の管理

(1)株整理

不要な塊茎を除去し、生育の良い株が根を張ることができるよう、スペース確保のため行います。軟腐病の発生が少なく根の発育が良い、最低気温が22~17℃の間に行います。(平坦地目安:9月下旬~10月上旬)。
株整理では、古くなった塊茎を除去します。古くなった塊茎には根が無く、地上部にせり出してくるため容易に除去できます。(写真1)
また、株整理時に合わせ、除草を行うことで、水の流れを確保します。

写真1 古くなった塊茎

(2)追肥
追肥は、株の養成を目的に行います。草丈、切り花長、苞長といった切り花品質の向上と収量を増やす効果があります。ただし、葉色が濃く、生育が旺盛な場合は年内の収量や苞の品質が低下する恐れがあるため、追肥を控えます。
肥効1~2ヶ月、N::(::)の肥料を20㎏/10a程度(目安)と消石灰を施用します。水を入れた状態で肥効が1ヶ月程度となる水田用の30日タイプや、レンコン栽培用のぼかし肥料を利用します。一時的な止水または浅水にしたうえで施用しましょう。
なお、低温期(12~4月)に肥料が残っていると、根腐れを誘発して減収の原因となります。そのため追肥は、根の活性が良く、株の徒長を抑え、根の発達を促すことが可能な、8月下旬~10月上旬までに行います。

3)ジャンボタニシ対策
ジャンボタニシは夜行性で、水面に近い展開前の新葉を好んで食べます。新芽が食害されるため、欠株や株の生育遅延を誘発します。
新植後や、夏の管理で株の草丈が低くなり、新芽の位置が低くなっているほ場は特に注意が必要です。特に、1年目株は草丈が低く、分げつ数も少ないため食害によるダメージが大きくなります。
耕種的防除として、夜間は落水し、日中も深水にせず、新芽が水面より上に出るように努めます。

(4)ヨトウ類・アザミウマ類の防除
この時期は、ヨトウ類の発生が多く、活発に活動します。葉の食害が大きくなるため、予防に努めます。また、アザミウマの発生も見られはじめます。アザミウマは、苞(ほう)の中心部へ入り込むことで商品価値を下げてしまうため、収穫前までに防除を行いましょう。

写真2 ヨトウ(左)、アザミウマ(中)、大小のジャンボタニシによる食害(右)

10月の管理

(1)寒冷紗(かんれいしゃ)除去
寒冷紗の除去は、日差しが弱まり、気温が25℃前後になった頃(平坦部目安:10月10日頃)が目安ですが、曇雨天の影響や強めの遮光等により徒長が見られたら早めに除去します。

(2)裾ビニル設置
草丈を確保するため、裾ビニルを設置して風よけを行います(図1、写真3)。ただし、裾ビニルの設置は寒冷紗の除去後です。寒冷紗を被覆したまま裾ビニルを張ると、徒長を助長するため注意します。落水を行うほ場では、寒冷紗を被覆した状態で裾ビニルを設置します。

(3)ビニル被覆
最低夜温が15℃を下回りだしたら天井ビニルを被覆します。(平坦地域目安:10月下旬頃)ビニル被覆をすると、生育は急激に促進されます。ビニル被覆が遅れ寒に当ててしまうと、収穫開始が遅くなり、年内の収量に影響するため、遅れないよう気を付けましょう。

図1 株元の湿度を保ち、草丈を確保します。また、株の上部で換気することで、樹勢を制御します。
写真3 裾ビニル設置の様子

11月~1月の管理

(1)水管理
基本的に、終日かけ流しを行い、ハウス内気温と地温の確保を行います。地温の極端な低下は、根腐れや生育不良の原因となるため、止水は厳禁です。

(2)換気
11月~12月中旬までの晴天日に関しては、早朝から間口(入口)を開放する程度の温度調整を行います。その後は、換気は基本的に行わず、閉め込みます。
充実した株は、ビニル被覆とともに旺盛な生育となります。
この時期は地温が適温で、根の活性が高い時期です。この時期までに根の確保が出来ている株では、蒸し込んで生育を促進することで、切り花品質と収量の確保が可能となります。

おわりに

湿地性カラーは、ブライダルやお祝いの場面で使われることが多い花です。需要の高い年内からしっかり出荷を行うことで、収益アップを狙いましょう。

県央広域本部 農林部 農業普及・振興課

添付PDF:湿地性カラーの年内収量を向上させる秋からの管理について