露地野菜のカモ類被害対策について

はじめに

熊本県における冬期の露地野菜は、ブロッコリーが930ha、冬キャベツが399ha、冬レタス402haで作付けされており、本県の主要な品目となっています※1。しかし、近年、平野部を中心に生産上の大きな問題となっているのが「カモ等の鳥類による被害」の拡大です(写真1)。令和4年度の県内における野生鳥獣による農作物被害額は、5億9,678万円であり、うち鳥類による被害が1億9,439万円と全体の3割を占めています(図1)※2。中でもカモ類による被害額は、鳥類による被害額の半数を超えており、今後も継続したカモ類への対策の実施が重要です。
そこで今回は、八代地域で実施している鳥類被害対策の事例をご紹介します。

 

※1熊本県:「主要野菜生産状況調査について(令和3年産)」より引用。
※2熊本県:「令和4年度野生鳥獣による農作物被害について」より引用。

写真1 カモ類に外葉が食害を受けたブロッコリー
図1 熊本県における鳥獣種別被害額(令和4年度)

カモ類への被害対策

(1)農作物残渣(ざんさ)のすき込み
渡り鳥であるカモ類は、10月頃から飛来することが分かっています(図2)。飛来後は、餌場となる水稲の二番穂(ひこばえ)やブロッコリー等の露地野菜ほ場を探し移動します。また、カモ類は一度餌場と認識すると、その後対策を実施しても再飛来し、農作物へ被害を及ぼす傾向があります。
また、露地野菜の収穫残渣も地域へカモ類を寄せ付ける餌場となるため、収穫後は速やかに残渣のすき込みを行い、地域内の餌場を減らすようにします。
そのため、飛来する前までに、水稲収穫後の株をすき込み、餌場を無くすことが有効です(写真2)。

写真2 水稲収穫後の株のすき込み
図2 江津湖地点のカモ類月別平均飛来数
環境省:「渡り鳥の飛来状況調査」より引用

(2)水路へのテグス設置
カモ類は飛来後、河川や水路、ため池などの安心できる水辺で滞留します。特にほ場周辺の水路は、波が穏やかで、周辺に餌となる農作物があるため、カモ類にとって過ごしやすい環境です。そのため、水路へテグスを設置し、滞留場所を無くすことが、カモ類を寄せ付けない対策となります(写真3)。
水路にテグスを張る際は、テグスとテグスの間隔をカモが翼を広げた時の大きさ(1m)以下にします。設置に関しては下記リンク先※3「水路テグス設置の手引き」を参考にしてください。
また、水路にテグスを設置する際には水路所有者の許可が必要になりますので、各自治体へ確認し、設置してください。

 

写真3 水路へのテグス設置

(3)畝上のテグス設置
畝上にテグスを設置することは、カモ類の物理的な侵入防止効果があります(写真4)。テグスを設置する高さは地上0.5~1m、間隔はカモ類が翼を広げた大きさ(1m程度)で設置します。高低2段で設置しテグスにキラキラテープを付けることで効果が高まります。
設置する際には、ブームスプレーヤーでの防除作業など、管理作業に支障がないよう、支柱の高さや設置場所を調整してください。

写真4 畝上のテグス設置

(4)レーザーライトの設置
夜間ほ場を照射するレーザーライトは、カモ類への忌避効果があります。レーザーライトがカモ類の視覚に入ることで、危険な場所であると認識させることができます(写真5)。そのため設置する際には、レーザーライトがほ場全体に照射されることに加えて、カモ類に当たる高さ(地上50cm程度)に調整します。また、農作物の生育にあわせて定期的に高さを調整することで効果を長期化できます。
レーザーライトは夜間のみ有効であるため、他の対策と組み合わせて設置してください。
なお、民家や道路にレーザーライトが当たらないように照射方向を調整してください。

写真5 レーザーライト

(5)被覆資材によるべたがけ栽培
ブロッコリーやキャベツ、レタス等の露地野菜は、不織布で農作物を物理的に覆う「べたがけ栽培」が有効です(写真6)。
令和5年に八代地域で行った被覆資材の比較実証展示ほの結果、畝上にテグスを張っただけの慣行区では被害がみられたのに対し、ベタロンやパオパオを用いてべたがけ栽培を実施した区では被害が発生しませんでした(写真7)。
べたがけ栽培では、被覆資材の保温効果により、被覆資材下の平均気温と平均地温が慣行区に比べ高く推移するため生育が促進します。そのため、栽培面でも有効に活用してください。

写真6 レタスのべたがけ栽培
写真7 展示ほの被害発生状況
ベタロン: ポリビニルアルコール製の不織布
パオパオ:ポリプロピレン製の不織布

最後に

カモ類への対策は、対策を行った当初は有効ですが、同じ対策を続けると「慣れ」が生じ効果が低くなります。そのため、1つの対策を続けず、複数の対策を組み合わせて実施することが重要です。
また、これらの対策を一部の生産者だけではなく、地域全体で実施することで、カモ類にとって地域全体が居心地の悪い場所となり、効果がより高くなります。
下記リンク先※3に八代地方農産物鳥類被害防止対策連絡協議会で作成した「カモ被害動画」や「カモ類被害対策啓発パンフレット」を載せておりますので参考にしてください。
地域ぐるみで対策を行って、カモ類の飛来を抑制し、地域の農作物を守っていきましょう。

 

※3 リンク先 熊本県農業情報サイト「アグリくまもと」
「水路テグス設置の手引き」

カモ被害動画「地域で取組むカモ類被害防止対策について~八代地域の取組み~」

「カモ類被害対策啓発パンフレット」

県南広域本部 農林水産部 農業普及・振興課

野菜のカモ類被害対策について (PDFファイル)

 

 

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