近年、「不知火」では、温暖化に伴う異常気象により、収穫前後や貯蔵中に発生する果皮障害、こはん症の発生が問題となっています。
そこで、「不知火」のこはん症(写真1)の発生要因を解明し、発生軽減技術を確立しましたので紹介します。
カンキツ「不知火」のこはん症は夏秋期の土壌水分維持と9月施肥で軽減できる
研究のねらい

研究の成果
1. 夏秋期(8~10月)、秋冬期(10~12月)に土壌を乾燥させると、こはん症の発生が多くなります。特に、夏秋期の土壌乾燥による影響が大きいと考えられます(図1)。
2. こはん症の発生が多い園は少ない園に比べ、葉色値、葉中窒素含有率および果皮中窒素含有率が低くなっています(表1)。

注)こはん症発生調査は、貯蔵約2か月後の結果

注1)数値は多発生園および少発生園とも各3園の平均値
注2)t検定により*は5%水準で有意差あり
注3)こはん症発生率は、2016年2月14日に調査
注4)葉色値、葉中窒素含有率は2015年8月7日に採取した葉を測定
注5)果皮中窒素含有率は、2015年12月16日に採取した果実の果皮を測定
3 . 夏秋期の少雨時(降雨が1週間以上無い時、以下同)にかん水を行なうことで、こはん症の発生が軽減されます(図2)。さらに、保水マルチを行なうことで土壌水分が長期間保持され、こはん症の発生が軽減されます(図3)。

注1)芦北地域のこはん症多発園で実施
注2)かん水区のかん水は、8~10月中に5回実施

注1)pf値は高いほど土壌が乾燥している指標
注2)図の矢印はにかん水を行った日
注3)図中の()内の数字はこはん症発生指標を示す(最大100)
4. 年間施肥量は同じでも、9月に施肥を行なうことで、こはん症の発生が軽減されます(図4)。

注1)こはん症発生率は貯蔵2か月後の結果。
注2)両区とも年間施肥量は26kg/10a。9月施肥ありは、3,4,6,9,11月に20%ずつ、9月施肥なしは、3,4,6,11月に25%ずつ分施
5. 以上のことから、こはん症は、夏秋期の土壌乾燥や樹体窒素含量の低下により発生が助長されます。対策として、少雨時のかん水(100L/樹)や保水マルチによる土壌水分維持(pF値おおむね2.4以下)と9月施肥をすることで、こはん症発生は軽減されます。
◆普及上の留意点等
収穫後のこはん症発生を軽減するためには、貯蔵管理(貯蔵庫内の湿度は85~90%が適しているため、湿度が低い場合には、打ち水やコンテナを不織布シートで囲う等により湿度を維持)にも十分注意する必要があります。
◆お問い合わせ先
農業研究センター 果樹研究所 常緑果樹研究室
【TEL】0964(32)1723
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