ヒリュウ台「河内晩柑」の連年安定生産のための着果程度

農業研究センター天草農業研究所

研究のねらい

熊本県での「河内晩柑」は、天草地域や玉名地域を中心として、175ha(令和2年産熊本県果樹振興実績)で栽培されています。「河内晩柑」は、わい性台木である「ヒリュウ」を利用することでカラタチ台に比べて低樹高となり、作業がしやすくなり省力化が図られることから、近年導入が進んでいます。しかし、ヒリュウ台は着花しやすいため、着果過多となりやすく、樹勢も弱い傾向にあるため、小玉果の割合が高くなり、商品化率の低下にもつながります。
そこで、商品化率の向上と連年安定生産を図るため、生産現場において活用しやすい指標として、単位樹容積当たり(m³当たり)の着果程度を明らかにしましたのでご紹介します。

研究の成果

1.10aあたりの収量は、単位樹容積あたりの着果数を13果及び15果にすると4t以上となり、11果より多くなります(表1)。単位樹容積あたり着果数の違いでМ~2L果の個数割合の差はないものの(図1)、M~2L果の収量は13果及び15果が多くなります(表1)。

図1 単位樹容積あたりの着果数の違いが階級別個数割合に及ぼす影響
注)2017年~2019年産の3カ年分平均値

2.1樹あたりの収量は、どの単位樹容積あたりの着果数でも隔年結果の傾向は見られず、3年間の収量は毎年安定していました(図2)。

図2 単位樹容積あたりの着果数の違いが1樹あたりの収量に及ぼす影響

3.単位樹容積あたりの着果数の違いで果実品質に差はありませんでした(表2)。

以上のことから、ヒリュウ台「河内晩柑」は、単位樹容積あたりの着果数を13果~15果にすると、商品性の高いМ~2L果の収量が高く、連年安定生産が可能です。

成果活用面・留意点

1. 本試験は、2017~2019年に天草農業研究所植栽の12~14年生ヒリュウ台「河内晩柑」において、粗摘果は7月上旬、仕上げ摘果は8月中旬に実施し、収穫を3月上旬に終える栽培方法の結果です。

2.単位樹容積あたりの着果数11果、13果、15果に対する葉果比は、おおよそ130、100、70に相当します。

3.園地や気象条件によっては、着果負担により樹勢が低下する恐れがあるため、摘果後に夏芽(なつめ)の発生を確認するなど状況に応じて摘果量を調整してください。

中晩柑