カンキツ栽培においては、経営面積の拡大や生産者の高齢化により、省力化技術の開発が求められています。
近年、温州ミカンや施設カンキツでは、自動点滴かん水同時施肥装置を利用したマルドリ栽培など、高品質果実生産と省力化の取組みが行われていますが、加温栽培ヒリュウ台「肥の豊」においては、同装置を利用した栽培技術が確立していませんでした。
そのため、自動点滴かん水同時施肥装置を用い、かん水と施肥の省力効果等について試験をおこなったので、その成果を紹介します。
ヒリュウ台「肥の豊」の自動点滴かん水同時施肥装置による省力化と施肥コスト削減
農業研究センター果樹研究所常緑果樹研究室
研究のねらい
研究の成果
1 自動点滴かん水同時施肥区(以下、自動点滴かん水施肥区)では、11月下旬に慣行区と同程度の糖度13以上、クエン酸濃度1%以下の高品質果実が生産でき、収量も同程度でした(表1)。
2 また、自動点滴かん水施肥区では、窒素量を慣行区より3割削減しても、生育期間中の葉色(SPAD値)と葉の窒素量(葉柄中の硝酸イオン濃度)は慣行区と同程度でした(表2)。
3 自動点滴かん水施肥区の10a当たりの施肥・かん水時間は慣行の17%、肥料代は慣行の62%でした(表3)。
以上のことから、加温栽培ヒリュウ台「肥の豊」では、自動点滴かん水同時施肥装置を用いて施用窒素量を慣行より3割削減しても、慣行と同等の収量を確保しながら、高品質果実の生産が可能であることが確認できました。また、施肥・かん水時間は8割程度削減でき、肥料代は4割程度削減できることが確認できました。
【処理内容】
◯2月上旬から15℃で加温開始し、段階的に25℃まで昇温し、6月に加温停止した作型の、9~10年生ヒリュウ台「肥の豊」で試験をおこないました。
◯自動点滴かん水同時施肥装置は、液肥混入器、液肥用タンク、電磁弁、制御盤、点滴かん水チューブで構成された装置で、点滴かん水チューブは1列に2本設置し、点滴孔は30cm間隔で吐出量は1時間当たり3ℓのチューブを用いました(写真2、写真3)。
◯自動点滴かん水施肥区と慣行区は、表4により施肥とかん水を行いました。
◯施肥は、自動点滴かん水同時施肥区では慣行の7割の窒素量としました。慣行区では、県基準を参考に、有機配合肥料を手作業で施用しました。
◯かん水は、いずれの区も時期毎の県基準の果実品質と日肥大量を確認しながら、自動点滴かん水施肥区では点滴チューブ、慣行区では地表に設置したスプリンクラーでかん水しました。
成果活用面・留意点
1 自動かん水同時施肥装置を用いた栽培を行う場合は、各産地の時期毎の品質や肥大目安を確認しながら、表4を参考にかん水量等の調整を行ってください。
2 点滴かん水を行う場合は、根は点滴孔付近に増加することから、点滴チューブが動かないように固定します。また、点滴孔が詰まることがあるので、適宜、確認を行う必要があります。
3 今回の試験に用いた自動かん水同時施肥装置の資材費は、約35万円/10a(工事費除く)でした。
No.998(令和4年(2022 年)6月)分類コード 02-09
998_成果情報_果樹_加温ヒリュウ台「肥の豊」自動かん水 (PDFファイル)
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