単為結果性ナス品種「PC筑陽」における仕立て本数の違いが収量に及ぼす影響

研究のねらい

熊本県のナス促成栽培では、省力を目的とした単為結果性品種「PC筑陽」(タキイ種苗)の導入が進みつつありますが、栽培体系の確立に至っていません。
そこで、仕立て本数の違いが収量性および収益性に及ぼす影響について明らかにすることを目的に、「PC筑陽」の品種特性に適した仕立て本数を解明しました。

研究の成果

1. 主枝収穫果実数は、仕立て本数に係わらず第1主枝から第4主枝の順に減少します(表1、図1)。
各主枝の平均側枝節数は、2本仕立て9.3個、3本仕立て9.3個、4本仕立て9.0個であり、4本仕立てで少なくなる傾向にあります。第1主枝の側枝節数は、仕立て本数が減るほど増加する傾向にあります(表1)。

表1 各主枝の収穫果実数および側枝節数
注1)主枝収穫果実数は各主枝の摘芯までの収穫果実数を、側枝節数は各主枝から側枝が発生した節数を示す。本調査では、主枝花序の直上葉の元から発生する側枝は含まない。
注2)平均値±標準誤差(n=12)。
図1 主枝展開図
注)第1主枝:主枝
  第2主枝:主枝の第1果下から発生する側枝
  第3主枝:主枝の第2果下から発生する側枝
第4主枝:第2主枝の第1果下から発生する側枝

2. 枝あたりの総果数は、2本仕立て40.4個、3本仕立て38.1個、4本仕立て35.4個と仕立て本数が減るほど増加し、可販果収量についても同様の傾向にあります(表2)。また、2本仕立ては全ての月で果数が多く、販売単価が高い時期(10月~11月)の収量も高いため、収益性が向上します(図2、表2)。

3. 可販果率は、すべての仕立て本数において約97%と同等です(表2)。

図2 月別果数の推移
表2 仕立て本数の違いによる収量性および収益性
 注1)表内の数値は6株/区×2反復の平均値。
 注2)販売金額は熊本県経済農業協同組合連合会の実績に基づき10ヵ年平均における販売単価より試算した。
 注3)種苗費は苗を購入した場合を想定し、190円/株で算出した。
 注4)差額は4本仕立てを基準とし、()内の値は差の比率を表す。

以上より、「PC筑陽」の仕立て本数は収量性および収益性が高い2本仕立てが適します。

 

◆普及上の留意点等
1. 本試験は平成30年(2018年)8月27日に定植し、108日~平成31年(2019年)4月30日の期間で収穫果実を調査しました。穂木品種に「PC筑陽」、台木品種に「トナシム」を供試し、収穫時は1芽切り戻しを徹底しました。

2. 平成30年(2018年)11月下旬~平成31年(2019年)3月末の期間、炭酸ガスを日中換気窓開時400ppm-閉時600ppmを維持するように施用しました。

3. 単位面積あたりの枝数を3.0/m2に揃えるため、株間は2本仕立て35cm1500/10a)、3本仕立て52cm1125/10a)、4本仕立て70cm750/10a)、畝幅1.9m、1条植えとし、同一ほ場で栽培しました。

 

◆お問い合わせ先
農業研究センター 農産園芸研究所野菜研究室
TEL096(248)6446