天草地域特産カンキツであるポンカン、「清見」、「河内晩柑」の温暖化に伴う生育変化
研究のねらい
天草地域では中晩柑の栽培が盛んで、特にポンカンの生産量は1,272t(県内生産量65%)、「河内晩柑」の生産量は1,950t(県内生産量61%)と県内1のシェアを誇ります(平成29年熊本県果樹振興実績)。
しかし、近年の温暖化に伴う気象変化により、天草特産カンキツであるポンカン、「清見」および「河内晩柑」の生育や果実品質等に影響が見られています。そこで、これらの生育変化を明らかにするとともに、今後の温暖化に対応した栽培管理を行うための基礎資料として下さい。
研究の成果
天草農業研究所内に設置されている天草市本渡の平成元~30年のアメダスデータと天草農業研究所のカンキツ生育調査のデータを用い、(ⅰ)平成元~10年(以下前期)、(ⅱ)平成11~20年(以下中期)、(ⅲ)平成21~30年(以下後期)の区分に分け、データを比較しました。
気温
気温の年平均値は同程度でしたが、昭和54~63年(昭和時代最終10年間)の平均気温に比べていずれも高く推移しました(表1)。
最低極温については後期が前期および中期に比べて、年次間差が大きく、-3℃以下の年間累計時間も長いことがわかりました(図1)。
生育状況
発芽期は30年間での変化はありませんでしたが、満開期については後期ほどやや早くなっており、発芽期から満開期までの日数は後期が前期、中期に比べ短くなりました(表2)。
着色については、着色始めから5分(ポンカン)および8分着色期(「清見」「河内晩柑」)までの日数は、前期に比べて後期は短くなりました(表2)。
果実品質
糖度およびクエン酸濃度は、前期に比べ後期が低い傾向にありました(表2、図2)。
普及上の留意点等
今回、平成時代30年間のアメダスデータを調査した結果、大きな差は見られませんでしたが、長いスパンで見てみると、温暖化により確実に気温は上がっており、特に、春期と秋期での最高気温の上昇が高く、そのことがカンキツの生育に大きく影響していることが考えられます。
最低極温について、後期は年次間差が大きいことから、冬場が低温傾向にある際は事前にす上がり等の凍害被害を懸念し、備える必要があると考えられます。また、糖度が低くなり品質が低下しているため、糖度向上対策が必要です。
お問い合わせ先
熊本県農業研究センター天草農業研究所 TEL 0969-22-4224
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