無加温栽培ヒリュウ台「肥の豊」では2本主枝にして植栽密度を高めることで収量が増加し、労働生産性も向上する

果樹研究所常緑果樹研究室

1 研究のねらい

無加温栽培の「不知火」「肥の豊」では、秋季に雨が多い年は果実糖度が上がりにくく、問題となっています。また、近年、生産農家の減少や高齢化などにより、生産量も減少傾向にあることから、生産性の向上が求められています。
そこで、高糖度果実が生産できるヒリュウ台「肥の豊」の導入を進めるにあたり、省力樹形である2本主枝と一般的な仕立て方である3本主枝を比較することで、省力効果や収量性を明らかにしましたのでご紹介します。

 

※一般的な台木(カラタチ台)よりも根からの養水分が地上部へ移動しにくく、土中の浅い位置までしか根が入らないことから、樹体に水ストレスがかかりやすく、高品質果実が生産されやすくなります。

写真 ヒリュウ台「肥の豊」2本主枝仕立ての着果状況

2 成果

2本主枝にして植栽密度を高めることで、10a当たりの作業時間は、3本主枝に比べて同程度からやや長くなりますが、収量が増加することで労働生産性が向上します。
(1)1樹当たりの収量は、3本主枝に比べて2本主枝が少なくなりますが、10a当たりの収量は植栽本数が多い2本主枝が多くなります(図1)。
(2)収穫果実1㎏の生産に要する時間は、3本主枝に比べて、2本主枝(株間2.5m)区は11%、2本主枝(株間2m)区で23%短縮されます(図2)。
(3)2本主枝、3本主枝で、果実品質に大きな差はありません。

図1 10a当たり収量の比較
図2 収穫果実1㎏の生産に要する時間

3 留意点

(1)2本主枝は3本主枝に比べて樹勢がやや強く、樹高が高くなる特性が見られます。
(2)2本主枝の植栽距離は、2mでは密植になりやすく、汚れ果症が発生する恐れがあります。そのため、肥沃なほ場に植栽する場合は2.5mとします。

 

No.752(令和5年(2023年)6月)分類コード 02-09
無加温栽培ヒリュウ台「肥の豊」では2本主枝にして植栽密度を高めることで単位面積当たりの収量が増加し、労働生産性も向上する

 

中晩柑