研究のねらい
褐毛和種で明らかになっている経済形質遺伝子(家畜の経済的に重要な形質に影響する遺伝子)には、枝肉重量に関連するCW-2(Carcass Weight 2)や脂肪に含まれる一価不飽和脂肪酸(MUFA)に影響を及ぼすとされるSCD(Stearoyl-CoA Desaturase)、FASN2(Fatty Acid synthase 2)などがあり、これらの遺伝子について種雄牛のSNP(一塩基多型:DNAの塩基配列において1つの塩基が他の塩基に置き換わっているもの)型を調べています。
今回、これまでに蓄積したCW-2、SCD、FASN2に関連するSNP型が判明している種雄牛について各遺伝子型の保有状況を整理するとともに、産子の枝肉成績及び脂肪酸組成との関連を調査し、種雄牛の経済形質遺伝子が産子に及ぼす効果を検討しました。
研究の成果
1 種雄牛のCW-2 SNP型※1の保有状況はGG型が15頭(28.3%)、GT型29頭(54.7%)、TT型9頭(17.0%)となりました(表1)。
※1 CW-2のSNP型はGG>GT>TTの順に枝肉重量が大きくなるとされています。
※2 アリル頻度・・・ある集団において対立遺伝子(アリル)が出現する頻度
2 SCDのSNP型※3の保有状況は、HH型17頭(50.0%)、HL型17頭(50.0%)、LL型0頭でした。FASN2ではHH型29頭(85.3%)、HL型5頭(14.7%)、LL型0頭でした(表2)。
※3 SCD及びFASN2のSNP型は、HH>HL>LLの順にMUFAが高くなるとされています。
3 系統とCW-2のSNP型の組合せ間で枝肉重量を比較すると、「重波GG型」が最も大きく、「光武TT型」が最も小さくなりました(図1)。
以上から、近年供用されている褐毛和種種雄牛の多くは優良型の経済形質遺伝子を保有しており,CW-2の効果を確認することができました。
普及上の留意点等
脂肪酸組成関連遺伝子については、SCD及びFASN2のSNP型が判明している種雄牛頭数も少なく、また産子の脂肪酸組成については母の遺伝子型や飼養管理、性別など他の要因も影響していると考えられるため、さらなるデータ蓄積と分析方法の検討が必要と考えられます。
お問い合わせ先
農業研究センター 畜産研究所生産基礎技術研究室
【TEL】096-248-6433