こだわっとる農

温州みかん、デコポン、かすみ草

宇城市 戸馳島発!! 儲かる農業へのこだわり

戸馳みかん研究会 山下 幸治さん

はじめに

宇城市三角町は、温暖な気候を生かした県内でも有数の柑橘産地であり、私の住む戸馳島も、同様に柑橘や花きが盛んな産地です。
私は、平成19年まで21年間農協職員として勤務していましたが、親類の農地を父が管理することになり、父を支えるため農協を退職し就農。柑橘と宿根かすみ草を生産することになりました。農協職員として、農業に携わる(販売、指導)ことが多くあったため、情報と知識はそれなりにありましたが、実戦となると最初は大変でした。しかし最初から、農業者として自営するからには、儲からなければいけないという思いを強く持っていました。「柑橘で売れるものを作るにはどうすればいいのか」、常にそのようなことを考えて農業に励んでいます。消費者に喜んで買ってもらうには、おいしいということが絶対条件だと思います。おいしいと感動してくれるようなみかんを安定して作るためには、『高品質果実を生産するための栽培技術』、『栽培管理が徹底できる適正面積』、『営農計画』がとても大事になってくると思います。そのため、現在は柑橘の面積が少ないので規模拡大を図り、かすみ草では適正面積にし、栽培技術のレベルアップを目標に努力しています。

生産へのこだわり

柑橘の安定生産をするには、基本管理を適期・適正に行うことが前提条件です。特に栽培の基本である土壌管理はとても大切にしています。そのため、定期的に土壌分析を行い、有機物の投入、施肥設計に努めています。
また近年、消費者は食味へのこだわりが強く、美味しいみかんでなければ買っていただけません。高糖度みかんを栽培するには、初期の水分ストレスが大事になってきます。そのため、マルチ被覆やほ場内に雨水がたまらないように排水対策を徹底して行っています。
さらに、降雨の状態を見極め、発根の状態を確認しフィガロン乳剤の散布を行います。しかし、樹に水分ストレスがかかり、ダメージが大きいため土壌を健全に管理しておかなければ収穫後、樹勢が回復しきれず枯れてしまうことがあるので葉面散布を3回以上行うなど収穫後のケアも大事にしています。永年性作物であるみかんは毎年結実させなければ、品質の良い果実を作ることができません。高品質果実を生産し、翌年の着花を得るために予備枝の作成・ホルモン剤での花芽の形成等にも力を入れています。

全面マルチ

現在JA熊本うき柑橘部会では、糖度の高いこだわり商品作りに力を入れています。普通のみかん『レギュラー品』を作っていても儲かりません。ならば、いかにしてブランド品、特に糖度が13度、14度になるトップブランド品を作るかがポイントになります。みかん栽培の年間作業はレギュラー品だろうとこだわり品だろうと同じです。同じことをするなら、単価で倍以上するこだわり品を生産することが絶対良いに決まっています。人よりも少し工夫して、少し努力するだけでよいのです。このような考え方が柑橘部会でも徐々に浸透し、特に若手の生産者は高糖度の果実を作るために努力しています。

計画的な改植と園地改造

本年、耕作放棄地解消事業を利用し70aの新規の園地を造成しました。園地造成をするにあたり、近年の異常気象に対応した園地であり、かつ作業効率の良い園地を目指して造成を行いました。まず園地に3%の傾斜をつけ排水効率の良い園地にし、自然に水分ストレスをかけることができる園地へ整備し、園内道を効率的に配置し作業性の向上を図っています。また、高糖度果実を生産するため、品種構成も、興津早生・尾崎温州(佐世保温州)とし、マルチ栽培を行うことで高糖度になる品種構成にしています。

新規植栽園地

複合経営だからできること

前述したとおり、私は宿根かすみ草の栽培も行っています。近年、宿根かすみ草は、冠婚葬祭には欠かせない花として需要が高まっているため、JAを通じて全国へ出荷することで、安定した収益を上げることのできる品目です。
そこで、私は、9月中旬~1月上旬までを柑橘の収穫、1月~6月上旬までを宿根かすみ草の収穫とすることで、労力配分を行い、経営の安定化を図っています。
また、私は、柑橘と宿根かすみ草と、まったく異なる品目を栽培しているため、いろいろな違いに気付かされています。宿根かすみ草の栽培はデリケートなことが多く、柑橘以上に適期に管理しなければならない作業が多くあります。こう言った部分では柑橘栽培よりシビアですが、柑橘においても高品質果実生産という点では、同じく奥が深いと思っています。そこがまた面白く感じているところで、毎日、楽しく作業を行っています。

宿根かすみ草

地域への貢献と今後の目標

私は、生まれてから一度もこの戸馳島から出たことはありません。私が小さいころは、戸馳の島中でみかんの栽培が行われてきました。以前、私の地区では20数名の生産者がいましたが、現在は6名に減少しました。私はこの島が大好きなので、私が小さいころの景色を自分の手の届く範囲で残したいと思っています。
現在は、地域の後継者たちと、「戸馳みかん研究会」というグループを作り、戸馳島からみかんの火を絶やさぬように活動しています。グループの中で常に私が言っているのは、『安いみかんは作るな』、『自営業は儲からなければウソだけん』ということです。また、露地栽培ではありますが、みかんで『10アールあたり百万円の収入を上げよう』といっています。実際に私にできたのだからできるはずです。
「おいしいみかんを生産し、このくらいの収益を得るために何をする」といった栽培目標を立てて実践し、〝私がこだわって作ったみかんでより多くの人に喜んでもらう〟これが私の目標です。

プロフィール

山下 幸治さん
○経営概要
温州みかん 1.6ha
デコポン  4a
かすみ草  3.2a
○主な労働力
本人、ご両親

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ご紹介
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178

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