こだわっとる農

ブーゲンビリア、ポインセチア等

玉名市 玉名発!オリジナル鉢花品種の育成と栽培にかけるこだわり ~抜きんでた観察と飽くなき探求心で唯一無二の品種が誕生~

山下 晴義さん

経営の概要・歩み

私は25歳のときに就農して以来、現在に至るまで約40年、一貫してブーゲンビリアやポインセチア等の鉢花生産を続けています。
私が就農した昭和50年代は、高度経済成長の流れの中で、花の需要拡大が著しい時代でした。そこで、花き産業の成長を感じ、当時はまだ珍しかったブーゲンビリア等の洋花に興味を持ち、鉢花農家への就農を決意しました。就農後、しばらくして、もっと消費者に喜ばれ、選ばれる商品づくりをしたいと考え、独自で品種育成に取り組むなどして、現在の経営に至っています。
そんな私ですが、就農前は造船技術者として7年間働いており、就農当時は鉢花はおろか、農業に関する知識・技術をほとんど持ち合わせないまま、この世界に飛び込んできました。
そのため、就農後の私を待ち受けていたのは、失敗や苦難の連続で、若いころは本当に多くの逆境の中で、あれこれと思い悩む日々を過ごしていたように思います。
そうした中、逆境に立ち向かう力となったのが、造船技術者時代に培ってきた『観察・研究力』でした。
それはモノづくりの現場に共通して求められる力であり、私の農業経営を継続・発展させた大きな原動力になったように思います。
そこで、今回、この観察・研究力を働かせて経営改善に役立てた取り組みについて、特に最近の事例を交えながら、具体的に紹介していきたいと思います。

オリジナル品種の育成

ブーゲンビリア等を生産する中で、花の美しさに魅了され、と同時に自分のオリジナル品種を育成したいという思いが高まり、取り組みを始めることになりました。
一般的に品種育成は、交雑によって行われることが多いですが、私の場合は、『枝変わり』を利用して、選抜・育成を行っています。
『枝変わり』は、意図して発生させることができないため、日頃から植物を注意深く観察し続けなければ、見つけることはできません。
また、必ずしも好ましい形質だけが現れるわけではなく、生産者・消費者の両方から支持される品種が生まれるのは極めて稀です。
さらに、育種過程で問題(病気に弱いなど)が判明することもあり、最終的に品種登録までたどり着く品種は、ほとんどありません。
数年に渡る厳しい育成過程を経て、市場関係者等の意見も参考にしながら、最終的に品種登録に出願する候補を絞り込み、そして、生産者・消費者から永く親しまれる品種に育つよう願いを込め、品種名称を名づけていきます。
こうして私が育成した品種の中には、現在、全国各地の鉢花農家で生産され、馴染みのブーゲンビリア品種(商品名:ピンクレデイ(ヒナタ))として、広く認知されているものもあります(表1)。
品種育成には粘り強さが必要で、多くの苦労や手間隙がかかりますが、自身が育成した品種がこうして皆に親しまれ、愛されている姿を見ると、まるで巣立った我が子が立派に成長して帰ってきたような、安堵感や誇らしさで胸がいっぱいになります。

出荷時期の調整

ブーゲンビリアやポインセチアは、需要時期が限定された品目です。ブーゲンビリアは母の日、ポインセチアはクリスマス時期に需要が高まるため、この時期に出荷を合わせる必要があります。
時には異常気象(高温・低温)の影響により、開花が早まったり、遅れたりすることがありますが、花芽発達の具合などを観察しながら、加温や換気などの温度管理に気を配り、開花時期を調節しています。また、出荷時期までにボリュームのある形の整った美しい姿に仕上げるために、施肥による養分供給を図る必要があります。しかし、過度な施肥は開花遅延や品質悪化などの原因になるため、繊細な肥培管理が求められます。植物をよく観察し、その生育状況に見合った適切な肥効が得られるよう、栽培環境(気温など)や肥料残量等も勘案しながら施肥量を計算するなど、施肥にはとても気を使っています。

需要動向への対応

出荷容器やラベルなど荷姿を工夫し、新たな価値を付与するなどにより、魅力的な商品の開発に取り組んでいます。
最近では、市場や消費者の意見・トレンドなどを参考に、仕立方法(トレリス仕立て)を改良した商品の出荷を始めています。存在感のあるトレリス仕立ては、市場で人気が高く、販売促進に繋がっています(写真1)。

写真1 ブーゲンビリアのトレリス仕立て

農作業の記録

農業を始めてから40年間、農作業日誌を欠かさず記帳しています。(写真2)年々書き溜めていくことで、自分の足跡と田畑の歩みが目に見えてわかりますし、蓄積されたノウハウから、経営改善のヒントを得る参考になります。農業の技術が進み、どんどん新しくなっていく今の時代だからこそ、しっかり記録を残し、技術を検証することが大切だと考えています。

写真2 書き留めてきた農作業日誌

今後の展望

現在、私が住んでいる玉名市は農家の減少・高齢化が深刻な状況です。私の育った自然豊かで、美しい故郷の農村も、残念ながら、耕作放棄地の増加や過疎の進行等により、活力が少しずつ失われつつあります。
そこで、現在、再び地域に活力を取り戻すため、中山間地域での栽培に向く薬草(ヤマトトウキ等)の産地化について研究を始めています(写真3)。
ヤマトトウキは、セリ科の多年草で、現在も婦人病薬などに多用されている重要な生薬です。製薬会社などによる需要が期待されますが、その一方で、発芽率が非常に低く、また産地が限定されていることなどから、供給量は多くありません。試行錯誤の結果、現在では、ようやく、安定した高い発芽率が得られるようになり、順調に生育させることができるようになりました。
将来の世代に対し、夢や希望の種を蒔くことも地域に根差して暮らしてきた農家の責務だと考えています。今は小さく始まったばかりの取り組みですが、大きく育て、地域の活力再生に繋げていきたいと考えています。

写真3 ヤマトトウキ発芽試験の様子

プロフィール

山下 晴義さん・和子さん
●経営概要
ブーゲンビリア・ポインセチア等
10a
●主な労働力
本人、妻 2名

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