こだわっとる農

米・小麦・大豆・ニンニク・アスパラ・バレイショ・シシトウ・そら豆・椎茸

嘉島町 ニンニクの産地化を目指して ~未来を耕す馬鹿になれ!!~

松永 雄治さん・陽子さん

私が専業経営になった経緯

我が家は、米、麦、大豆を栽培する兼業農家でした。父が農業者年金を受給するタイミングで経営移譲を受けましたが、まだ会社に勤めていましたので、会社が休みの時だけ農業をしていました。
しかし、今から6年前、私が41歳の時に18年間勤めた会社を辞め、専業農家になりました。農業経営だけに専念しようと思ったのは、周りの農家が高齢になり、田んぼを作ってくれないかという声が増えたのと、自分で経営してみたいという思いがあったからです。また、国の施策としても大規模経営の担い手に農地を集約していこうという動きもあり、農業を大きくするか、やめるかを選択する時期だと思いました。
私の考えに父は賛成してくれましたが、他の家族や会社の同僚は「やっていけるのか」と心配し、誰も賛成はしませんでした。特に妻は2人目の子供がお腹の中にいる時期だったので、不安だったと思います。しかし、私は「農業経営を通して雇用できる経営をやりたい」「社会貢献できるような経営者になりたい」と思い、決断したのです。

新たな作物を導入してスタート

我が家では小麦4ha、米2ha、大豆2.5haを栽培していましたが、専業経営としてスタートする際に収益をあげるため、新たにグリーンアスパラとニンニクを導入しました。
アスパラは1年目から20a、ニンニクは2年目から導入し、徐々に規模を増やして現在は160aとなっています。そのほか、今後の作物としてバレイショ、シシトウ、そら豆、椎茸などの栽培試験に取り組んでいます。
作物選定にあたっては、近くにJA上益城の直売所があるメリットを活かしたいと思い、他の人と競合しない品目、誰も作っていない品目を選びました。しかし、誰も作っていないため、栽培技術について聞く人もいませんでした。そこで、知人の紹介により、アスパラは八代の農家さん、ニンニクは玉名の生産者グループに出向いて様々なことを教えてもらい、栽培や出荷調製技術を習得していきました。現在も野菜の出荷先は、直売所と県内外の卸売市場がメインとなっています。

ニンニクの収穫作業の様子

雇用できる農業と農福連携

1年目から地域の雇用創出と障害者雇用に積極的に取り組み、現在は常時雇用3名と、忙しい時にはA型事業所から10名近い障がい者の方たちを雇用し、作業を手伝ってもらっています。障がいを持った方たちはとても真面目に働かれ、丁寧に作業されます。仕事内容もほぼお願いすることができるので、とても助かっています。もともと、地域社会に役立ちたいとの思いから農業を始めたので、これからも農福連携には積極的に取り組みたいと思っています。

ニンニクの調製作業の様子

農業を通して人への感謝の想いがより強く

本格的に農業をはじめて6年。1年目にハウスを導入した時に台風被害に会い、自然相手の農業の大変さを経験しました。しかし、農業は自分の思いどおりのことが実践できるので、楽しい!の延長だと感じています。妻からも「勤めていた時よりすごく楽しそうだね」と言われます。
今、改めて感じるのは、人への感謝しかないということです。いろいろな人に助けてもらって今の自分がいる。その思いは農業を通して、より強くなってきています。
現在、自分にできることで地域貢献に携わりたいとの思いから、嘉島町の農業委員や直売所出荷協議会の役員、地区の生産組合の役員など、役を積極的に引き受けています。今年から県の指導農業士にも選んでいただきました。若い人を育てたいという思いで、地域の子供たちに農業の魅力を感じてもらえるよう収穫体験やバーベキューなど、農業理解活動や食育にも力を入れています。
また、私のほ場を見て、「こんな経営をしてみたい」と思ってもらうため、県地域振興局の展示ほは、いつ見られてもいいようなモデル展示ほとなるよう心掛けています。

水稲の収穫体験の様子
水稲新品種「くまさんの輝き」展示ほ

女性の視点を活かした農業経営

アスパラを栽培していると、どうしても曲がっているものや細いものなど規格外品が出てしまいます。そこで、妻から「細いアスパラをそのまま調理できる長さにカットして、直売所に出荷してはどうか」と提案がありました。立派な商品を作って販売したい私は、当初、規格外品の販売に消極的でした。しかし、手頃な価格で、炒めてすぐ食べられることで、出荷したら完売の売れ筋商品となり、改めて女性の視点が大切だと気づかされました。
妻も農作業や家事、子育てで多忙ですが、現在、県の農業女性アドバイザーや嘉島町農村女性グループ員、JA女性部員としての活動のほか、「くまもとふるさと食の名人」にも認定され、活動の幅が広がっています。多くの人たちとの交流を通して、我が家の経営に新しいアイデアを提案してくれると楽しみにしています。

これからの目標

6年前に嘉島町で初めて取り組んだニンニク栽培でしたが、新規に4人が栽培を始めました。ぜひ、嘉島町で新たな産地化を目指したいと思います。また、ハウス施設費の価格高騰の中、過剰投資にならないよう、米、麦、大豆と付加価値の高い露地栽培作物の導入で専業経営が成りたつ経営体系を実現したいと思っています。
そして、これからも「人との繋がりを大切に」「出会いを大切に」をモットーに、若い人たちに魅力を感じてもらえるような楽しい農業経営に邁進していきたいと思います。

松永 雄治さん・陽子さん

●経営概要
米3ha、小麦4ha、大豆2.5ha、ニンニク1.6ha、アスパラ20a
他バレイショ、シシトウ、そら豆、椎茸

●主な労働力
本人と妻 2名

     

     

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