こだわっとる農

主食用米、大麦、そば、飼料用作物

南阿蘇村 喜びや楽しみを共に創り、共に分かち合う集落づくり

農事組合法人久石ファーム 代表理事 藤原 孝誠 さん

はじめに

法人がある南阿蘇村は、阿蘇カルデラの南部に位置し、雄大な自然に囲まれ、「日本名水百選」白川水源など豊かな水資源を有する風光明媚な農山村地帯です。そんな南阿蘇村の第二駐在地区で、私が代表を務める農事組合法人久石ファーム(以下、(農)久石ファーム)は水稲14ha、そば5ha、もち麦1.8haを栽培しています。

稲刈り

(農)久石ファーム設立まで

第二駐在地区では、生産者の高齢化や担い手不足が進み、今後の集落の人や農地をどう守っていくかが課題となっていました。また、地区の水稲基幹作業を受託していた営農組合(昭和58年設立)が保有する農業機械が老朽化し、更新費用が組合運営の大きな負担となっていました。この問題は以前から集落内で話し合っていましたが、平成30年6月から県や農業公社からの支援を受け、営農組合の法人化や農地集積等について徹底した話し合いを始めました。まずは、個々の意見を把握することが大切と考え、地主(約50名)に対して、今後の農業経営に関するアンケート調査を実施しました。調査では、役員と協力して、一軒一軒周って直接アンケートを回収し、意見の漏れがないようにしました。その結果、法人化による営農への期待感が高いことが判明したので、集落内での話し合いを短期間で集中的に行い、個々の意見を丁寧に聞きながら地域住民の理解を得ました。また、他の法人への視察研修を行い、法人経営について学びながら、法人設立に対するモチベーション向上に努めました。

その結果、平成3012月に集落の農業の新たな担い手となる(農)久石ファームが設立されました。法人設立により、各生産者は水稲やそばの栽培を法人に任せることで、収益性が高いアスパラガスやトマト等の栽培に専念できるようになりました。

新規作物を導入

法人の新たな取り組みとして、令和2年からもち麦を栽培しています。収益確保や水田有効活用のため、新規作物を検討していた際、もち麦が物産館で販売されているのを見て、昔は集落で麦を栽培していたことを思い出しました。冬場の作物がなかったこともあり、再び麦を栽培することで地域の活性化に繋げたいと考え、もち麦を導入しました。導入にあたって、精麦業者の乾燥施設への視察研修を実施し、乾燥・調製手法や販売価格等について意見交換しました。また、法人で生産したもち麦の精麦を業者から買い戻してパック詰めし、地域の物産館で販売しています。令和5年度からは新たに法人で精麦機を導入し、法人が生産~販売までを一貫して行っていきます。

 

将来的には大豆も導入し、法人で生産した大豆と麦で味噌をつくり、味噌作りの農業体験もやってみたいと思っています。

パック詰めされたもち麦
もち麦収穫

地域との繋がりづくり

私は、以前「国立阿蘇青少年交流の家」で野外活動の指導に20年以上携わっていました。そのノウハウを活かし、(農)久石ファームの前身組織である営農組合時代から農業体験活動を行っており、かれこれ10年くらい経ちます。この活動では、法人が農業体験用の田んぼ3aを設置し、県内外からの小中高校の修学旅行生や家族連れ等を受け入れ、田植え・稲刈りを体験してもらっています。現在は、この農業体験が口コミで広がり、学校や知人の知人から直接依頼があっており、令和5年度は地元の小学生20数名を受け入れています。

稲刈り体験
焼き芋の試食

農地を守る

集落に法人が設立し、新たな担い手が誕生したことで、農地貸借等の合意形成が行いやすくなり、現在、(農)久石ファームでは集落内の農地の約半数を集積しています。さらに、第二駐在地区の南側で進められている基盤整備事業の受益地(約15ha)の多くが(農)久石ファームに集積する計画になっています。このため、法人の規模拡大が見込まれ、作業の省力化や生産コスト削減を目的に、今後、大型農業機械の導入を検討しています。また、基盤整備するほ場は山際にあり、鳥獣被害が発生する恐れがあるので、この整備を契機に防護柵設置などの対策をしっかり講じた上で、農地を守っていきます。

基盤整備が予定されている地域

おわりに

昔は、生産者自身が「農業はキツイ」や「農業ではなく、勤めにいけ」と漏らしていましたが、時が経ち、今となっては「跡取りがいない」と嘆いています。そうではなく、まず自分たちが農業を楽しまないといけないと思います。集落の人たちが「楽しいこと・おもしろいこと」を話し合うことでアイデアが生まれ、それを形にしていくのが(農)久石ファームの役割だと考えています。また、法人だけが稼ぐのではなく、地域全体が潤い、活気づく仕組みを築いていきたいです。

これらを踏まえて、私の目標は、地域全体を“物産館”のようにすることです。地域での農業体験や観光等のイベントを通して、一般の人が農産物を直接買いに来てもらえる活気ある地域づくりを目標に、今後も活動を行っていきます。

 (紹介:県北広域本部 阿蘇地域振興局 農業普及・振興課)

<プロフィール>

農事組合法人久石ファーム 代表理事 藤原 孝誠

◯栽培品目
主食用米、大麦、そば、飼料用作物
◯構成員等
組合員:36名、オペレーター:11

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