こだわっとる農

水稲

津奈木町 繋産繋醸 ~津奈木から産まれた酒米チャレンジ~

亀萬酒造合資会社

はじめに

津奈木町に位置する大正5年創業の亀萬酒造は、天然醸造では日本最南端の日本酒製造の会社です。地元に愛される、食事をしながら楽しんでもらえるお酒を目指し、「和醸良酒」をテーマに日本酒を醸造されています。
フランスで開催された「Kura Master日本酒コンクール」では、日本酒部門で「萬坊(まんぼう)」が2年連続プラチナ賞を受賞し、さらに「全国燗酒コンテスト2023」プレミアム燗酒部門で「純米限定酒」が金賞を受賞するなど、国内のみならず世界からも評価されています。
今回は、亀萬酒造での日本酒の原料となる酒米生産の取組を紹介します。

 

酒米づくりに挑戦

亀萬酒造4代目の竹田瑠典(りゅうすけ)さんは、「土地・水・米にこだわり、津奈木町産の山田錦で新たな日本酒を造りたい」と想いを抱き、平成29年に酒米づくりを始めました。当初、竹田さん個人で農地を借り、地元農家や津奈木町の協力を得て、栽培を始めました。
「山田錦」は酒米の王様と言われるほどお酒造りに適した品種ですが、生産面では、長稈(ちょうかん)で倒伏しやすく、脱粒性も高いため、栽培は難しい品種です。竹田さんも特に倒伏しやすいという特性に苦労され、疎植にしたり、肥料を減らしたり、試行錯誤を重ねてきました。

稲姿
(左:華錦、中央:山田錦、右:レイホウ)
写真提供 農産園芸研究所作物研究室
移植の様子

地元生産者・関係機関との連携 

このような中、倒伏を軽減する栽培技術を確立するため、令和3年度に生産者やメーカー、津奈木町と連携した酒米生産研究会を県と立ち上げ、活動を始めました。オリジナルの日本酒を醸造するには一定以上の面積も必要となるため、自社で生産するだけでなく、津奈木町の水稲生産者との契約栽培も行っています。津奈木町では、主食用米が主に作付されていますが、近年の主食用米需要の減少・米価の下落等もあり、高単価に販売できる酒米は水稲生産者にもメリットがあります。
研究会では、先進地視察研修により他地域の優良事例を取り入れたり、現地検討会を行うことでみんなで中干し時期を見極めたりするなど、倒伏軽減と収量アップを目指してきました。
令和5年には全生産者が倒状することなく収穫を迎えることができました。収量も393kg/10aとなり、目標としていた360kg/10aを達成しました。
現在、契約栽培している生産者は2戸ですが、今後、新規作付者も確保しさらなる面積拡大を目指していきます。

現地検討会の様子
収穫の様子

酒米づくりで農業参入

酒米安定生産の見込みが立ったことから、酒米づくり7年目となった令和5年5月に亀萬酒造は企業として農業参入されました。酒米生産を目的とした企業の農業参入は、県南地域では初めての事例です。津奈木町も耕作放棄地の解消や新たな高単価作物の導入を期待し、農業参入に伴う地域調和等に関する協定を締結しました。
農業参入して1年目の酒米づくりは、中干しの徹底により茎数を抑制し、土壌改良材の施用を行うなどレベルアップし続けており、今後も、酒米の技術向上を目指されています。

協定締結式の様子

酒造りのこだわり

津奈木町で生産した酒米は、日本酒に醸造され、「今茲(こんじ)」という純米吟醸酒として販売されています。津奈木町も被災した令和2年7月豪雨の直後に販売開始し、「今を大切に」そして「地元の人たちに愛される酒を造る」という想いを込められました。
また、日本最南端の天然醸造蔵元ならではの「南端氷仕込み」で酒造りをされています。これは、醪(もろみ)の温度を多量の氷を加えて調整する亀萬酒造独自の製法です。ふわっとした米の甘みの後に芳醇な味わいと深みが広がり、濃厚な料理もどっしりと受け止める力強い旨味が特徴です。
今後は、自社生産も含め更に津奈木町産の酒米を増やし、テロワール(土地の個性、酒を取り巻く環境)を津奈木町で造りたいと考えられています。

純米吟醸酒「今茲」

(紹介:県南広域本部 芦北地域振興局 農業普及・振興課)

<プロフィール>

亀萬酒造合資会社
◯経営概要 水稲:35a
◯お酒が買える主な場所
・店頭販売(直売所等)
・オンライン HPhttps://www.kameman.co.jp

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