こだわっとる農

水稲、桑茶

美里町 身体にやさしくて良いものを追求 特栽米と桑茶づくり

坂口 誠也さん・真由美さん

はじめに

私の住む美里町は熊本県のほぼ中央に位置しています。中山間地域で、稲作のほかにもタバコや施設園芸、畜産など様々な農業が営まれる地域です。しかし、やはり高齢化による担い手不足が深刻です。地域を支えるためにも、今は水稲作業の受託をしながら、減農薬米と桑茶の生産を行っています。

減農薬米を始めたきっかけ

水稲の減農薬栽培を始めたのは昭和63年ごろ、地域で消費者と生産者の交流会が開催され、農作物の安全に生産者の関心が高まってきたころです。そんな中、農協の青壮年部の企画で講演会があり、「減農薬のイネづくり」の著者である宇根豊氏が招かれました。この講演会をきっかけに減農薬栽培について勉強するようになり、地域の有志と共に「減農薬稲作研究会」を立上げ、米の減農薬栽培の取組を始めました。
しかし、取組を始めたころは、農薬を使うのが当たり前の時代です。地域からの理解を得るのにも大変苦労しました。
農業の先輩である親の世代からは、農薬がなければ病気や虫が出る、と反対されました。一部の田で減農薬栽培を行うと、今度は隣の生産者から「防除をしないか」と注意を受けました。
それでも何とか仲間と共に取組みを続け、それまで地域では6回行われていた防除が、6年目には1回で済むようになりました。
続けることで、地域の生産者にも徐々に理解が進み、防除の適期を訪ねてこられる生産者も増えました。現在も、稲の病害虫の発生状況を確認する「虫見会」を年に3~4回して、防除時期を決めています。

虫見会の様子

水稲のアイガモ農法

減農薬の米の生産とは別に、アイガモを使った水稲栽培も行っています。アイガモ農法は完全無農薬です。
アイガモ農法を始めたのは平成5年ごろからです。アイガモは雑草や害虫を餌にして、排泄物も肥料になります。薬剤防除ができませんので、できるだけ病気が出ないよう、肥料は控えめに、やや疎植で風通しがよくなるようにしています。

田んぼで育ったアイガモ

消費者とのつながり

減農薬・無農薬で栽培したお米は、減農薬稲作研究会で、宇城地域の松橋町を中心とした消費者グループへ直接販売を行っています。
また、春には田植の体験会、秋には収穫祭を毎年開催しています。地域の活性化と消費者の農業理解推進の一助になればと、いつも夫婦二人で参加しています。
特に掛干し米は、食味の評判も大変よく、配達に伺うと消費者の皆さんからの声が直接聞け、励みになります。

桑茶の取り組み

一方で、地域では戦後すぐのころから養蚕が行われていました。私も農大の二期生として養蚕コースで基礎を学び、親の代を継いで養蚕農家となりました。繭の生産では平成9年に農林水産祭参加行事の繭生産性向上コンクールで賞も頂きましたが、その頃から徐々に養蚕農家も減り、私の家でも経営転換をすることになりました。周りの桑畑はなくなってしまいましたが、私は桑を一部残して、桑茶の生産をすることにしました。
桑の品種は、葉が大きく肉厚で生産量の多い「はやてさかり」を選んでいます。この品種は、倒伏や病害にも強い品種です。3年程度で台切り更新をしながら、収量を保っています。防除は葉を採らない冬季に行いますが、カミキリムシの被害がでることもあり、注意が必要です。

収穫した桑の枝から葉を丁寧に摘取ります
たばこ用乾燥機を活用
養蚕用桑葉裁断機

収穫は6月末と9月中旬からの年2回、朝早くに行います。桑の葉はデリケートです。特に蒸れるとよくないようで、収穫した枝を蒸れないように立てて保管したり、暑い時期の収穫では日陰に保管したりするなど、細心の注意を払いながら作業を行っています。
桑茶の乾燥加工は周りにも例がなかったため、たばこ生産農家などの他品目の生産者にも話を聞きながら、試行錯誤をしてきました。今は、養蚕用の桑葉の裁断機で葉を細かくした後、たばこの乾燥機で乾燥を行っています。このときも、蒸れないように丁寧に撹拌しながら仕上げていきます。
桑茶葉は原料として地元のお茶屋さんに販売しています。

桑茶は、きれいな緑色になります
農業女性アドバイザーの研修

今後取り組みたいこと

私たちは夫婦ともに主体的に経営に携わっていて、平成26年には妻が農業女性アドバイザーの認定を受けました。現在、6次産業化の研修に参加して知識を深めています。将来は、桑茶の仕上げや粉末加工などをして、桑茶を直接販売したいです。

プロフィール

坂口 誠也さん・真由美さん
●経営概要
水稲、桑茶、水稲作業受託
●所属組織
誠也さん
中央町作業受託組合
減農薬稲作研究会
真由美さん
農業女性アドバイザー

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