こだわっとる農

いぐさ、水稲

八代市 青ヘルおじさんの挑戦

林田 昌明 さん

はじめに

 国内最大のいぐさ・畳表の産地で知られる熊本県八代市地域。その南部に位置する金剛干拓で、県平均の約3倍にもなる3.6ha(国内最大)でいぐさを栽培する林田さん御夫婦をご紹介します。

経営の特色

 林田昌明さんは、妻の都さんと外国人技能実習生3名と共にいぐさ、水稲の栽培と畳表の生産を基幹とした経営を行われており、いぐさの作付面積は国内最大を誇ります。

 一般的に、いぐさ農家は原草の生産から畳表の加工までを家族単位で行いますが、畳表の加工作業人員がボトルネックとなり、規模拡大が難しいのが現状です。一方、林田さんは自家で畳表の加工も行いますが、生産したいぐさの大部分を「選別い」として近隣の加工専業農家へ販売する方法を取られています。

 また、平成27年度からは外国人技能実習生を雇用されており、自分たちが持つ技術を惜しみなく教えることにより、高い加工技術を習得されています。実習生は、林田さん御夫婦にとって「子供たち」同然であり、日頃のコミュニケーションによって信頼関係を築かれています。

 このように、家族経営から脱却し、人財育成と地域内での分業化に取り組んだことにより、いぐさでは県平均の約3倍となる3.6ha(国内最大)の経営面積を実現しています。

※原草:収穫・乾燥後のい製品の原料となるいぐさ
※選別い:長さ別に抜き分けられた状態のいぐさ

いぐさの選別作業
外国人技能実習生との食事会

いぐさ生産へのこだわり

 金剛干拓は排水不良田が多いため、林田さんはパワーショベルをリースして自力施工により毎年8反ずつ天地返しを行われています。また、いぐさの輪作、定期的な種苗の更新、れんげの鋤きこみ等の基本技術を励行することにより、長年にわたり安定した品質・収量を確保されています。

 6~10月にかけては、いぐさの収穫と水稲の田植えなどの管理作業が重なりますが、それぞれに早晩期の品種を組み合わせることで、作業の分散と適期収穫を実現されています。

販売戦略面

 生産したいぐさの大部分を原草として販売する林田さんは、原草の選別に力を入れられており、品質を重視する加工専業者には精細に選別した原草を、仲介業者には未選別の原草というように、取引先のニーズに合わせた販売を行われています。

 また、自家の畳表の生産についても品質にこだわり、熊本県産畳表の統一産地表示であるQRコード付きタグ※を挿入し、自信をもって生産し続けられています。その結果、神社仏閣の畳を中心に扱う業者と長年にわたり取引が続くなど、安定した価格での継続的な販売につなげられています。

 さらに、『青ヘルおじさん』としてYouTubeで日々の作業を紹介する動画を配信されており、いぐさや水稲のPRを行うとともに、外国人技能実習生の学習教材として有効に活用されています。

QRコード付きタグ:熊本県産畳表であることを証明し、リンク先には、いぐさ・畳表について情報が掲載されている。

青ヘルおじさんYouTubeトップ

地域への貢献

 「10年後には大部分の農地で作り手がいなくなるかもしれない」との声が聞かれるほど、金剛地域の担い手不足は危機的状況です。その様な中、林田さんは「私も担い手の一人として、地域の農地を守っていきたい」との思いが強く、これまでに託された農地はすべて受け入れられてきました。林田さんを信頼し、先祖代々受け継がれた大切な農地を託してくれた近隣の方々の思いに応えるため、地域の農地を守り続けていくにはどうすればよいか、という視点で常に農業経営を考えられています。

 併せて、大切にされているのが地域とのつながりです。特に、いぐさの植付けには人手が必要なため、以前はどの農家でも臨時雇用されていましたが、近年ではカセット移植機が開発され、機械化が進んでいます。林田さんも移植機を所持されていますが、今でも手植えを続けられているのは、雇用の場として地域のつながりを大切にしたいとの思いからです。当然、経営的には合いませんが、90歳を超えた近所のおばあちゃんがおしゃべりしながら苗割り作業を行う場を大切にしたいと考えられています。

 また、近年では、冬場のカモ被害も問題となっています。そのため、70歳になってから銃や罠の免許を取得され、「今後は地元猟友会とも協力しながら、地域の作物を守っていきます。」と思いを新たにされています。

いぐさの手植え作業

将来の目標

 林田さんは次のようにおっしゃいます。

 「70年前に、父母が入植して栄えた金剛干拓の農地を守り受け継いでいくことは、自分たちの責務であると考えています。そのためには、実習生をはじめとする多様な人材が安心して働くことができ、生活できる基盤を作っていかなければなりません。

 70歳ユーチューバー、これからも地域や産地を守るため、チャレンジを続けます!」

(紹介:県南広域本部 農林水産部 農業普及・振興課)

<プロフィール>

氏 名 林田 昌明さん

◯経営概要:いぐさ(3.6ha)、水稲(10.4ha

◯主な労働力:5人(本人・妻・外国人技能実習生3名)

◯YouTube 『青ヘルおじさん』〈YouTubeリンク〉

https://www.youtube.com/@aoheru

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