子どもの頃から、実家のスイカ栽培、温州みかんの収穫の手伝いを経験し、農業に触れ合う機会はありましたが、当時は、農家を継ぐことは頭にありませんでした。その後、高校、大学を卒業し、福岡で会社員として勤めている最中、体調を崩したことをきっかけに一時実家へ帰ることになりました。その間、実家の農作業の手伝いをしているうちに、自分自身の中で農業に対する思いが強くなるとともに、地域の方々の後押しもあり、親の跡を継ぐことを決意しました。就農して今年で20年目になります。
こだわっとる農
温州みかん・米・スイカ
山鹿市 -温州みかん栽培を主体とした経営で-
山鹿市 池田 良助さん
はじめに
温州みかんへのこだわり
私が就農した当初は、スイカ100a、温州みかん150aを栽培していました。スイカが5月から8月、温州みかんが10月から1月までと出荷時期は異なりますが、管理作業が重なり、両立を難しく感じていました。また、温州みかんにおいては、極早生温州が大半を占め、収穫、出荷時期が集中してしまうという問題がありました。また、私の園の周辺地域では、高齢化によるみかん園の放棄園も目立つようになっていました。
このような状況の中で、私は、温州みかんにこだわり、温州みかん専業の経営を目指しました。
まずは、就農して2年目から周辺の放棄園を買い取り、少しずつ面積の拡大を進めました。その結果、現在までに350aまで拡大することができました。
温州みかんの植栽に当たっては、収穫、出荷時期の分散を考慮しました。9月下旬から収穫できる「肥のあかり」を筆頭に、「豊福早生」「肥のさやか」「肥のあけぼの」「興津早生」「肥のみらい」「白川」「青島温州」と、県育成品種を中心に収穫時期が異なる品種をバランスよく配置しました。これにより、9月中旬から12月上旬までの収穫、その後徹底した貯蔵管理を経て、3月まで安定した出荷ができるようになりました。
中生温州「熊本EC11」への更新
「熊本EC11」は、熊本県で開発された中生温州みかんです。「熊本EC11」は、糖度が高く食味が優れていることや、最近温州みかんで問題になっている浮き皮が発生しにくいことから、いち早く導入に取り組みました。ただ、着果が不安定であるため、ジベレリン処理や着果法、せん定などを工夫しながら現在35aを栽培しています。
栽培へのこだわり
温州みかんの高品質果実生産のためには水分のコントロールが重要です。特に雨水の侵入を防ぐシートマルチは必須です。
シートマルチに加えて、今まではフィガロンによる発根抑制、養水分吸収抑制で、品質向上対策を行っていました。しかし、フィガロン処理を毎年実施したことで、樹勢の低下が目立つようになってきました。この経験から、フィガロンを控え、前期肥大期に着果量を多くして着果ストレスをかける方法(後期重点摘果法)で高品質化を狙っています。令和2年産は、果実肥大が良好で、大玉果傾向になったので出荷と販売に苦労しました。しかし、この方法は中玉~小玉果の生産のためにも有効と考えています。さらに、フィガロン処理によって減った根を増やせるよう、堆肥や地下部管理も併せて行っています。
もう一つのこだわりとして、新植や改植時には、「ヒリュウ」台木を利用した苗木へ積極的に転換しています。「ヒリュウ」台木の特徴は、根が浅く入るため、水分コントロールがしやすい点が挙げられます。以前は、直根が土壌深くまで伸び、水分コントロールが難しかったのですが、現在は、コントロールが出来るようになりました。これらの管理にこだわることで、高品質果実の安定生産・出荷を行っています。
また、JA鹿本の青年部の「みかん研究班」にも積極的に参加しています。そこではみかんの高品質安定栽培技術のみならず、販路拡大のための各種勉強会も実施しています。
販売、地域へのこだわり
私は、JA鹿本への出荷が9割を占めます。その中で、収益性を高めるためにJA鹿本のトップブランド「きわみ」としての出荷や、普通温州の2~3月の後期出荷などに力を入れています。
また、令和2年度から、JA鹿本みかん部会副部会長として活動しています。ニーズに応えられる品質のみかんを地域で生産することができるよう、また、生産者にも納得のいく価格での販売ができるよう、消費者、生産者、JA職員とコミュニケーションを取り、積極的に相談、提案をしています。
令和2年は、コロナウイルスの影響もあり、部会の会議や検討会、講習会を数回しか開くことができませんでした。しかし、地元の生産者と関係機関の強い協力のもとで、地域全体のみかんのほとんどを販売することができました。
一方、私の農園では、地元の旅館と連携し、旅行ツアーの一環として直売所や体験農園に取り組んでいます。また、直販と体験農園を紹介するため、SNSを利用し、「農園の今」を発信しています。
今後の展望
今後は、根域制限栽培、マルチドリップ栽培に挑戦して、高品質安定生産への更なるステップアップを図ります。そのうえで、現在栽培している全ての品種で、JA鹿本のトップブランド「きわみ」としての出荷ができるようになりたいと思っています。そして、みかん農家で儲かる姿を地域の若者に見せて、地域の農業の維持発展に貢献できればと思います。
池田 良助さん
〇経営概要
温州みかん 350a
米 150a
スイカ 30a
〇主な労働力
本人、父、母、(繁忙期雇用:6名)