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Vitamin Table 〜第13回 人を育てる〜

おかげさまで2年めを迎えました「ビタミンテーブル」、今年度も、熊本の農のタカラを紐解き、お伝えしていきたいと思います。
新入学・新級の季節…今月は「人を育てる」…熊本の農業の未来を握るフレッシュなキーパーソンたちが学ぶ、熊本県立熊本農業高等学校、通称「熊農」のおはなしです。

伝統校の歴史は…

明治32年に本県農業界の強い要望に応えて開校というエピソードを持ち、「熊本農業学校」として創設された、来年創立120周年を迎える歴史と伝統ある学校です。初代校長は、札幌農学校でクラーク博士に学ばれ、その精神を受け継ぐ河村九淵先生…。農聖と呼ばれ多くの農業者を育成した3期生の松田喜一先生はじめ、2万名を超す卒業生を輩出しています。本誌読者の方にも卒業生が多数いらっしゃるのでは…と思います。

其の手足を低き地に働かし 心を天に置けよ

これは、本館玄関前に立つ初代校長河村先生の銅像とともに立つ「建学の精神」の石碑に刻まれた言葉…。
熊農で展開される食育や栽培される作物に興味を抱いて伺うようになってもう10年…。
お邪魔する度に、この石碑の前に立つと、敬虔な気持ちになる、重厚で心打たれる言葉です。
校訓「敬天愛人」とは、森山校長先生によると、
敬天とは天地自然の法則を畏れ敬うこと。
天とは自然の大道であり、言い換えれば天地自然のはたらきである。
天すなわち大自然の恩恵のもとに学理を応用して人事を尽くすことを学ぶのである。私たちはこの大自然のはたらきを敬い、畏れるとともに人間同胞互いに敬愛し、信じ合い人間らしい生活を過ごすために努め励むことがなければならない。人を敬愛する心があってこそ、諸々の道徳は維持され、私たちの人格は向上するのである。即ち、「敬天愛人」の徳を培うことは、修養の根本であり、我が熊農教育の大理念である…、そして、この熊農の源流が、前述の河村先生が示された格調高い建学の精神にあると、おっしゃいます。

総勢876名の生徒が集う広大な校地…

奈良時代に肥後国府がおかれた国府寺一帯南園の地(現在の熊本市中央区出水)で創設、県内各地にあった分校・分室等もまとめて現在の元三の地に全面移転したのは、昭和49年のこと。総面積194000㎡の中に、全七学科、生徒数876名、教職員100名(平成28年度)の大規模の農業専門学校です。

どんなことを学べる?

農業科…創設時より設置。幅広く農業の基礎的知識や栽培技術を学ぶ。
園芸・果樹科…野菜・草花・果樹の栽培を中心に学ぶ。
畜産科…畜産後継者の育成や関連産業人育成のために牛・豚・鶏の3部門からなる専門教育を学ぶ。
生活科…農業教科と家庭教科を専門的に学ぶ。
農業経済科…農業の基礎から農業の仕組みや流通等経済の視点から学ぶ。
食品工業科…食品に関する基礎から応用まで様々な知識を学ぶ。
農業土木科…専門教科+普通教科の学を大切に資格取得とともに技術者を育成する。
このように特色ある7学科では、それぞれの専門領域を担うスペシャリスト、100名もの先生方が一丸となって教育に取り組んでおられます。

熊本の農作物を継承していくために…

7学科の中でも、熊本の在来種「ひご野菜」の継承活動に取り組む園芸・果樹科にお邪魔しました。
ひご野菜は、平成18年から栽培開始、見本園では現在11品目の栽培が行われています。授業・実習等の教材のみならず小中学生との交流の場、各種連携を通した活動にも取り組まれているのです。例えば、熊本県立大学との高大連携では、毎年11月19日の食育の日に「熊農ランチ」を企画、今年度で6回目になった「ひご野菜セット」の販売会は、毎年12月28日に…。このセットには12月半ばに江津湖畔の湧水地芭蕉園で栽培し、27日に収穫する「水前寺もやし」があります。
市内に2軒しかない生産者さんから栽培を学ぶのです。冷たい水の中で、倣いながら播種し、収穫の時を迎えるのですが、校外に出て生産者さんと触れ合いながら伝統の作業を学ぶ姿は心温まるものです。
通常の授業では、2年の後半から野菜、草花、果樹に分かれて取り組みます。
お邪魔した日は、野菜専攻は、とうもろこしの定植を…。先生の説明後、チームワーク良く作業し、あっという間に900近い苗を植えていました。一方、果樹専攻は桃のハウスで、摘蕾作業を。ここで短果枝から6割くらい蕾を摘み、次に花の時期に摘み、最終的には1割が実になるのだと…。先生から板書で説明受けた後、実際に脚立と鋏を持って作業をする姿には、真剣な目と緊迫感が感じられました。

熊農ブランド!

各学科で大切に育てられる熊農ブランド品は、人気商品。南園祭では長蛇の行列必死、収穫期にはご贔屓の常連様で売り切れ続出のレアものです。

「くまべん」「くまおに」って…

創立110周年のプレイベントとして始まった「くまべん」「くまおに」とは、全校で取り組まれる熊農の食育のことです。2009年度に農林水産省の「地域に根差した食育」全国コンクールで農林水産大臣賞受賞したほどの素晴らしい全校食育は現在も、続けられています。
担当の先生にその趣旨を伺うと、『自分や家族が生産した農作物を使い、工夫にあふれた料理で表現することで、食べ物に関して興味をより深め、優しい心遣いや思いやりの心を持つ。 また、自分の食事に関心を持ち“食べる”ことの重要性を実感する機会とするだけでなく、クラスメイト同士お互いの料理を見ることを通してクラスで交流し、コミュニケーションの場とする。』という目的に基づいているんですよ、と。

『小さい時からここに入るのが夢だった』『お兄ちゃんが来てて楽しそうだったからここに入学した』『卒業したら就農する』『ここで育てた作物を導入したい』…と、キラキラした瞳で楽しそうに語ってくれるみんなに出逢えました。広大な敷地の中で伸び伸びと学ぶ生徒と指導なさる全先生方の情熱と優しさが響き合っている、いつ訪れても礼儀正しく、爽やかな笑顔に出会える訳がココにもありました。未来の農業人の可能性とパワーを感じて学校をあとにしました。

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持田 成子Shigeko Mochida

野菜ソムリエ上級プロ
女子栄養大学生涯学習講師

女子栄養大学在学中に「野菜のビタミン分析」に携わったことがきっかけで野菜ソムリエ資格を取得。「旬の野菜果物のチカラはココロとカラダを元気にする」をテーマに食育やセミナー、レシピ開発など食の周りで活動中。

野菜ソムリエとは

日本野菜ソムリエ協会が認定する資格。野菜・果物の知識を活かし自らの生活に活かす「野菜ソムリエ」、野菜・果物の専門家「野菜ソムリエプロ」、専門家の最上位資格「野菜ソムリエ上級プロ」と、3段階の資格がある。

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