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Vitamin Table 〜第18回 栗のおはなし〜

澄み渡る空に、ほんの少し秋の訪れを感じる頃になってきました。前回のぶどうのお話はいかがでしたか。
今回は秋の味覚を代表する食材のひとつ、滋養たっぷりの「栗」について紐解きます

写真:熊日提供

栗の歴史

栗の歴史はとても古く、石器時代の縄文遺跡から炭化した栗が発掘されていることから、9000年も以前から日本に栗があったことがわかっています。

全国2位を誇る生産量

熊本で栗栽培が盛んになったのは、昭和36年に果樹振興法ができ、重点果樹に指定されてからといわれています。平成26年の生産量は2,840tです。
球磨地域を中心に県北などで盛んに栽培されています。全国のトップを切って8月20日頃から収穫が始まるのも熊本の強みです。

豊永さんが育てた栗。右のかごの色の濃い栗が「やまえ栗」を代表する品種「利平」 写真:熊日提供

県内で生産される栗の主な品種

品種によって甘味が強いもの、風味が強いもの、加工に向いているものなど特性は様々、早生(わせ)、中生(なかて)、晩生(おくて)と、成熟期も品種によって異なり8月下旬から10月中旬まで収穫期が続きます。

丹沢(たんざわ)

実が大きく甘い。

杉光(すぎひかり)

早生種としては実が大きく、鬼皮に縦線がはっきり見えるのが特徴。食味が良い。

銀寄(ぎんよせ)

中生種でホクホクして甘いと人気。

筑波(つくば)

中生種。一般的に栽培量も多く実も平均して大きい。甘みが強い。

利平(りへい)

中生種。栗の王様と称される大玉の栗。甘みが強く食味に優れ外観も黒褐色で美しい。

ぽろたん

その名の通り、電子レンジで加熱するだけでポロッと楽に皮がむけます。

県内の主要産地山江村へ…

熊本市内から高速で約1時間、のどかな田園風景と緑豊かな山々に囲まれた山江村に到着、万江地区に山江村果樹研究会会長の豊永高希(たかき)さんを訪ねました。
山江村は、農地を潤す山田川と清流万江川を有し、肥沃な土壌では良質な米や野菜・果樹が育ちます。しかし、山林が90%を占め、農地の面積が少ないことから米・野菜・和牛等組み合わせて経営する必要がありました。
1931年、熊本県から栗の原種の配布を受け、村で採種畑を設置したことが「やまえ栗」栽培のルーツとされています。約50年前、豊永さんのご両親も『栗は大型機械も要らない、手が要らない…』と導入されたそうです。
栗は比較的取り組みやすい作物とはいえ、傾斜地が多く園地造成は容易くはなかったそうですが、村基幹作物として苗木や元肥の補助、選果場の建設もあり、導入が進みました。
比重が高い、風味が良い、甘みが強い…良質な栗に繋がったのは、盆地特有の朝晩の寒暖の差、南向きの丘陵で水はけが良いこと、赤土で肥沃な土壌に恵まれたためと言われます。ですが、収穫・出荷に向けた作業について伺うと、収穫後自宅で「ムシ・割れ・傷」を取り除き…選果場に持ち込むまでの作業は全5回、これを全て一人でこなされるとか…やまえ栗の質の高さは、生産者の弛まぬ努力の賜物に支えられるものと思いました。

豊永さんのほ場にて

村の誇りの品質を次世代まで

約40年前に皇室献上栗に選ばれ、出荷量は410tに達して最盛期を迎えるなど「やまえ栗」の歩みは順調かと思えました。しかし、1992年農協の合併により「球磨栗」名での出荷を余儀なくされた歴史もあります。近年では、ブランド再構築への動きが加速化しているそうです。
豊永さんは、生産者のトップリーダーとして生産に会議にと走り回られる一方、次世代を担う子どもたちへ出前授業を行ったり、栗拾いに招いたりと食育も重ねておられます。

万江小学校の子どもたちから豊永さんに届いた手紙

球磨盆地を一望できる園地へ

「自家不和合性が強い栗は別品種を一緒に植えること」等、特性を説明していただきながらほ場を案内していただきました。栽培管理の中で大きな位置を占める下草刈りも、近年は「イタリアンライグラス」という草丈50㎝を植える草生栽培を導入。梅雨から夏場かけて自然に枯れ、そのまま有機の肥料になる特性を生かした効率の良い園地もありました。
様々なバイヤーからも高い評価を受け多方面に出荷される「やまえ栗」。その価値をさらに高め、生産量もアップさせていきたいとイキイキ語られる豊永さん。地域の宝「やまえ栗」の今後が楽しみです。

栄養

栗は、炭水化物と食物繊維を豊富に含み、ビタミン類もバランスよく含みます。特にビタミンCはでんぷん質に包まれているので加熱による損失もあまりありません。渋皮に含まれるタンニンには強い抗酸化作用があります。

選び方と保存法

皮にハリとツヤがあるものを選び、早く食べます。冷蔵するならチルドやパーシャル保存がおすすめ。栗の糖分が増加します。
豊穣の秋、栗拾いに出かけのも楽しそうですね。滋養たっぷりの栗で秋を堪能しましょう。

 

ぱぱっと簡単レシピ

栗ごはん

<材料 3~4人分>
栗皮つき 300ℊ
米 2合
昆布(5㎝角) 1枚
塩 少々

<作り方>
⑴栗の鬼皮と渋皮をむく。(鍋に栗を入れてひたひたの水を入れて火にかけ、沸騰して5分ほど茹でて、そのまま冷ましてからむくと、むきやすい)
⑵米をとぎ、炊飯器にいれて水を分量まで注ぎ、塩を入れてひと混ぜしたあと、昆布をのせる。
⑶⑴の栗をざっと洗って⑵に加え、普通に炊く。炊き上がったら上下を返してよく混ぜる。

栗蒸しようかん

<材料(11×14×4.5の型1個分)>
こしあん(市販品) 500ℊ
茹で栗(甘露煮でも可) 20粒(4等分に切る)
米粉 45ℊ
水(甘露煮のシロップ) 100ml

<作り方>
⑴ボウルにこしあんをいれ、米粉を加えて手でもみこむように混ぜる。
⑵⑴に水(シロップ)を2~3回に分けて、ゴムベラで混ぜる。
⑶型に⑵を半分程度流し入れ、栗の半量をちらし、残りの生地を流す。残りの栗を均等に並べ、蒸し器に入れて中火で約40分蒸す。

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持田 成子Shigeko Mochida

野菜ソムリエ上級プロ
女子栄養大学生涯学習講師

女子栄養大学在学中に「野菜のビタミン分析」に携わったことがきっかけで野菜ソムリエ資格を取得。「旬の野菜果物のチカラはココロとカラダを元気にする」をテーマに食育やセミナー、レシピ開発など食の周りで活動中。

野菜ソムリエとは

日本野菜ソムリエ協会が認定する資格。野菜・果物の知識を活かし自らの生活に活かす「野菜ソムリエ」、野菜・果物の専門家「野菜ソムリエプロ」、専門家の最上位資格「野菜ソムリエ上級プロ」と、3段階の資格がある。

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