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Vitamin Table 〜第20回 さつまいものおはなし〜

豊穣の秋、紅葉シーズンになりました。そろそろ私たちの体も冬支度を始め、寒さから体を守るための脂肪を蓄える時期です。
今回は、ビタミンや食物繊維たっぷりで、美容と健康にも効果大の「さつまいも」について紐解きます。

さつまいもの歴史

原産地は中米~南米北部。日本への伝来は、1615年にイギリス人ウイリアム・アダムス(三浦按針)が平戸に持ち込んだ記録がありますが、その数年前には琉球(沖縄)から薩摩(鹿児島)に入っていたともいわれています。
本格的に広まったのは、享保の大飢饉(1732年)のとき。救荒作物として栽培されその特徴や作り方を「蕃諸考」として記述したのが儒学者青木昆陽でした。現在青木昆陽の墓碑には「甘藷先生墓」と刻まれ東京都の史跡(目黒不動尊)となっているそうです。

写真1 震災前年、西原村の生産者さんの「室」を訪問した時のもの

熊本では…

1786年(天明6年)頃に菊池地域で普及したと考えられています。食用として本格化したのは昭和36年に大津町でコンクリート製貯蔵庫が考案され、長期保存が可能になってからのことです。

貯蔵庫「室」

収穫したさつまいもを「室」で寝かせることで、熟成したさつまいもになるという先人の知恵から生まれた技術…。県内の主産地、大津町や西原村を走ると芋畑のところどころに、土が盛り上がった小山に、換気筒の風景が出現します。ですが、昨年の地震では、多くの畑の畝と共に貯蔵庫も損壊しました。貯蔵することができなくて収穫したらすぐ出荷せざるを得なかった昨シーズン…私もマルシェやHPで販売しました。
写真1は震災前年、生産者さんを訪問した時のもの。鉄製の扉を開けていただくと、冷んやりした空気の中に泥付きのさつまいもが入ったコンテナが並んでいました。さつまいもは収穫後すぐに出荷されるものもありますが、このように貯蔵し、時間をおくことで、少し水分が抜け、でんぷんが糖化して甘みが増していくのだとお聞きしていたので、地震の惨状にはその窮状をお察ししたものでした。

写真2 最新鋭の貯蔵庫内部

より熟成にこだわる農家へ…

熟成についてもっと知りたいと、「蔵出しベニーモ」とブランド化されているなかせ農園を訪ねました。約30年前から中瀬清則さんが、ミネラル豊富な火山灰土壌をもつこの大津の地で栽培スタート。農薬や化学肥料の使用を最小限に、良質な有機質の堆肥を豊富に使う農法を確立されてきました。収穫後、徹底した温湿管理で熟成管理した糖度の高いさつまいもだけを出荷されています。その熟成を支えてきた150年の歴史を誇る蔵が、昨年の地震で損壊し、苦慮されたと伺いました。中瀬家の宝ともいえる蔵の修復も考えられたそうですが、「ピンチはチャンス」、どうせ再建するのならと、長男靖幸さんの英断で導入され稼働開始したばかりの最新鋭の貯蔵庫にご案内いただきました(写真2)。
温度と湿度、CO2濃度と徹底的にシステム管理された貯蔵蔵では、長期貯蔵がより可能になり、8月初めから収穫スタートしたコンテナが整然と並んでいました。
阿蘇外輪山を望む広大な景観を望む圃場では、つるきりの手作業、その後を絶え間なく動く掘り取り機のエンジン音と笑顔…。
「認定農業者」「エコファーマー」「六次産業化推進事業計画認定」「グリーン農業生産者」「G-GAP」と次々に取得され理論と実践に裏打ちされた安心安全の味、なかせ農園の信念「自然との調和を拠り所とした農業」を納得しました。

さつまいもの栄養

〇主成分はでんぷん。でんぷんの分解酵素アミラーゼを含むので、60~70度でゆっくり加熱すると酵素が分解し、甘みが増す。

〇ビタミンCはりんごの約5倍。でんぷんに囲まれ加熱しても損失しにくい。

〇食物繊維、カリウムが豊富。

〇カットした時に出る白い液体、ヤラピンは整腸作用に力を発揮。皮ごと調理がお勧め。

さつまいもは種類も色も様々…。スイーツの材料になるだけでなく、おかずとしても煮物、揚げ物、グラタン、サラダ、汁物などその用途はいろいろです。体の内も外もキレイにしてくれる女性に嬉しいさつまいもを活用して、美味しさを発見してみませんか。

ぱぱっと簡単レシピ

さつまいもとりんごの重ね煮

<材料2人分>
さつまいも 100g
りんご 1/2
バター 10
水 70ml
グラニュー糖 大さじ1
シナモンシュガー 適量

 

<作り方>
⑴さつまいもは皮つきのまま薄切りにする。
⑵りんごは芯を取り、皮つきのまま縦に薄切りにする。
⑶鍋にバター半量を塗り、⑴のさつまいも、⑵のリンゴを交互に並べる。
⑷水、残りのバター、グラニュー糖を加えて煮る。
⑸器に盛りシナモンシュガーを振りかける。

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持田 成子Shigeko Mochida

野菜ソムリエ上級プロ
女子栄養大学生涯学習講師

女子栄養大学在学中に「野菜のビタミン分析」に携わったことがきっかけで野菜ソムリエ資格を取得。「旬の野菜果物のチカラはココロとカラダを元気にする」をテーマに食育やセミナー、レシピ開発など食の周りで活動中。

野菜ソムリエとは

日本野菜ソムリエ協会が認定する資格。野菜・果物の知識を活かし自らの生活に活かす「野菜ソムリエ」、野菜・果物の専門家「野菜ソムリエプロ」、専門家の最上位資格「野菜ソムリエ上級プロ」と、3段階の資格がある。

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