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Vitamin Table 〜第21回 ショウガのおはなし〜

暦の上では「小雪」…寒さで野菜も凍ってしまう時期、あたたかい土の中でできる根菜や背の低い青菜が増えてきました。今月は、寒さと乾燥によって風邪をひきやすくなる季節におすすめの「ショウガ」について紐解きます。

ショウガの来歴は…

熱帯アジア原産。スパイスとしても世界中で古くから利用される薬効の高い野菜です。
縄文時代に日本に入ってきたという説もありますが、書物の中で記述が確認されたのは平安時代初期の「和名抄」が最初と言われています。

熊本では…

年間生産高全国2,3位を誇る熊本県のショウガ。中山間地域での栽培が盛んで、主な産地は、八代市東陽町や宇城市小川町…。県全体の約8割を占めています。明治時代から受け継がれてきた県内のショウガ栽培は、昭和40年代に稲作からの転作作物として大きく成長してきました。

貯蔵

擬灰岩の山肌を利用して壕を掘った貯蔵がま(横穴)、簡易ブロックの貯蔵庫はじめ散水装置付きの低温貯蔵庫等で収穫したショウガを泥付きのままコンテナに入れて保存します。
収穫直後はショウガの呼吸により庫内の温度がどんどん上昇し乾燥するために、天井から水をかけたり散水装置で乾燥防止を図るのだそうです。また、ショウガは寒さに弱いため気温が10℃以下になると腐りやすくなり、気温が高いと芽が動き出すために、庫内は14℃前後で調整されています。

ショウガの里東陽町へ

県内の主産地である東陽町は、八代平野と九州山脈に挟まれて位置し、東西12.15㎞、南北15.27㎞、総面積64.56㎡。気候は年平均15.3℃、年間雨量2437㎥で、比較的温暖多雨の地で、種山石工が築いた石橋の里としても知られています。
東陽地域山村活性化協議会の黒木亮太さんの案内で、40数年ショウガ一筋に栽培なさっておられる祖父黒木勝治さんのほ場を訪ねしました。

4月初めに種ショウガを植え付け、芽出しをよくするために藁などで畝を覆い、5月中旬に芽出してきたら土寄せを行い、この作業を9月中旬頃までに3回ほど行いショウガの生長を促していくのだそうです。
栽培の中で気を付けるのは最も甚大な病害被害を及ぼす根茎腐敗病。一旦この菌がほ場に侵入してしまうと、葉鞘が暗緑色水浸状に変色し、次第 に上部に進展して下葉から黄化します。症状が進むと全体が 黄化して倒伏し、根茎も腐敗、ほ場全体が壊滅してしまうという怖い病害。東陽町でも過去(昭和4446年)には、集中豪雨と多湿条件が続いてこれが発生し、産地存続の壊滅的な被害が発生し産地存続を揺るがすこともあったそうです。この予防管理のため靴にカバーをはめてほ場にいれてくださいました。
御年78歳のベテランの勝治さん曰く、『6月~7月頃の状態でだいたいその年の出来栄えが分かる』と…。栽培のコツを伺うと『気象条件が合っとるとたい』と。取材に伺った数日後に開催される第43回のショウガ祭りで作柄を見極める品評会に出される逸品に次ぐ?!と抜いてくださった株はよく太って見事なもの。品評会では、形・左右対称に広がっているバランス・玉太りなどが審査されるのだそうです。抜きたての馨しい香りに癒された美しい棚田風景でのひとときでした。

ショウガの栄養・効能

爽やかな辛みの主成分はジンゲロール。加熱するとショウガオールに変化します。強力なたんぱく質分解酵素を持ち、肉を柔らかくします。発汗や消化を促進するほか強力な殺菌力も持ちます。

ショウガの利用法

香辛料としてはもちろん、しょうが紅茶のほか、湿布などにも。
切ったり摺ったりするほど辛みが強くなるので好みに応じて調整しましょう。

ショウガの保存

冷暗所で新聞に包んで保存。冷凍する場合はスライスしたり擦りおろして密封袋に入れて平らにし菜箸で適当なサイズに跡をつけて凍らせると必要量だけ取り出せます。甘酢漬けや乾燥させてミルサーで粉にすると多様に、長く使えます。

ぱぱっと簡単レシピ

ショウガと鶏団子の米粉シチュー

<材料4人分>
鶏ひき肉 200
(ショウガ(すりおろす) 10g・玉ねぎ 中1/4 個・米粉 大さじ1・卵 1 /2個・塩 小さじ1/5・こしょう 少々)
しょうが 10g(千切り)
玉ねぎ 中13/4個(薄切り)
にんじん 1/2本(小さめの乱切り)
じゃがいも 中2個(ちいさめの乱切り)
サラダ油 大さじ2
水 1.5カップ
ブイヨンの素 2個
(牛乳 2カップ・米粉 大さじ2)
ロリエ 1
塩・こしょう 少々

 

<作り方>
⑴鶏団子を作る
玉ねぎをみじん切りにする。ボウルにすべての材料を入れて混ぜ合わせ、さらに手で練って、12個分丸める。
⑵鍋にサラダ油を入れ、しょうがと玉ねぎを炒め、透き通ってきたらじゃがいもにんじんを加えて軽く炒め合わせる。
⑶水、ブイヨンの素、ロリエを加えて中火で煮る。沸騰したら⑴の鶏団子を加えて煮込む。にんじんが柔らかくなったら牛乳で米粉を溶き入れる。とろみがついてきたら、塩・こしょうで味をととのえる。

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持田 成子Shigeko Mochida

野菜ソムリエ上級プロ
女子栄養大学生涯学習講師

女子栄養大学在学中に「野菜のビタミン分析」に携わったことがきっかけで野菜ソムリエ資格を取得。「旬の野菜果物のチカラはココロとカラダを元気にする」をテーマに食育やセミナー、レシピ開発など食の周りで活動中。

野菜ソムリエとは

日本野菜ソムリエ協会が認定する資格。野菜・果物の知識を活かし自らの生活に活かす「野菜ソムリエ」、野菜・果物の専門家「野菜ソムリエプロ」、専門家の最上位資格「野菜ソムリエ上級プロ」と、3段階の資格がある。

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