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Vitamin Table 〜第27回 水田ごぼうのおはなし〜

気持ち良いお天気が続き、畑では野菜が力強く成長する時期を迎えています。いかがお過ごしでしょうか。今月は、清流菊池水源の美しい水で潤う菊池平野を、青々とした緑で彩っている、今が旬の「水田ごぼう」を紐解きます。

ごぼうはどこから・・・

キク科ゴボウ属に分類されるごぼうの原産地は、ユーラシア大陸北部に広く自生したものが原種。日本には、平安時代に渡来したとされ、最古の記録が、平安時代の「和名類聚抄」記されているといわれています。

食用にしているのはどの部分・・・

長く肥大した根の部分。漢字で「牛蒡」と書くが、元々は牛の尾という意味で「牛蒡」と書いたとの由来があります。

「水田ごぼう」って・・・

もともと畑で栽培されていた「ごぼう」。連作障害などの問題もあり、昭和40年頃、当時の旧菊池市農協管内でその対策として水田での栽培を試験してみたところ柔らかく、香り豊かなごぼうが生産できることがわかり、本格的に水稲の裏作として導入されることになったのだそうです。
10月下旬に稲刈りの後に播種し、3月から6月に収穫期を迎え、青々した大きな葉っぱが風にそよぎ、田植え前には丸々太ったごぼうの収穫最盛期を迎えるわけです。

ごぼうの葉っぱがそよいでいます

水田ごぼう農家の森本さんご夫婦を訪ねて

森本盛雄さんの軟らかくてアクのない真っ白なごぼうに出逢ってもう8年くらい、尊敬する生産者のおひとりです。『ごぼう畑は今が一番きれいよ!』と、多美さんの明るい声に誘われ、熊本市内から約30分で大きなごぼうの葉っぱが青々広がる畑に到着しました。
こちらでは、草は1本1本手でとり、稲わらやごぼうの葉もすきこんで緑肥として利用。グループで開発した「泉の力」を使用、土づくりにこだわって子どもたちに食べさせても安心・安全、手間と時間をかけて栽培されるごぼうは、「食と農を考える熊本の会」と「熊本大同青果」がタグを組んだ「熊本とっぺん野菜」として出荷なさっています。

尊敬する森本さんご夫妻

菊池地域でごぼう栽培が始まった当初は、畑で、30センチほど盛り土をしたところに植えつけていたので、長さも短かったとか…
お米を収穫した後の田んぼでの栽培を始めたところ、水分を豊富に含んだ土壌であるために、柔らかく長いごぼうが育つようになっていったのだそうです。

【水田ごぼう栽培の流れ】
①お米の収穫後トレンチャーで深く耕し
②シダーテープにはいった種を播種
③鎮圧作業
④ビニールハウスのパイプを1本1本手作業でほ場にさして、トンネル状のビニールハウスに仕立てていく
⑤最適な温度管理をしながら手作業で草をとり管理していく
⑥3月頃から天候と温度を見ながらビニールを開けたり閉めたりしながら徐々に外していき収穫の時を迎えていく
⑦育成の早い部分から順に、葉を刈っていき、掘り取り機で収穫していく
⑧掘り取ったごぼうは手作業で土を落とし、トラックにきれいに載せて日焼けや乾燥を防ぐために布団をかけて作業場まで運ぶ
⑨専用の機械で上下をカットし重量選別したあと、さらには目視で選別し出荷のための箱詰め

森本さんのところでは、一部洗っての出荷もなさいますが、土がついていることで乾燥を防ぎ、保存性もよく、掘りたての味を楽しんでいただけるので…と土付きでの出荷にこだわっておられます。
「おいしいごぼうをつくりたい」一筋に、30年以上試行錯誤を繰り返しながら取り組まれてきた「水田ごぼう」の先駆者的存在の森本家。機械も増え、ずいぶん作業軽減されてきたと伺いました。ビニールハウス栽培と、パオパオかけての露地栽培とリレーして、約2ヘクタールの圃場を現役のおばあちゃま加えてご家族7人で、チームワーク良く作業なさっている姿が印象的でした。
水分を豊富に含んだ土を深く掘り返し、ご家族の愛情を溢れんばかりに注がれることで香りは際立ち、まっすぐで、やわらかく美味しいごぼうができるのだと確信し、ほ場をあとにしました。

収穫の様子
ビニールハウスでの栽培
掘り取ったごぼう

ごぼうの栄養と機能性

食物繊維が多い野菜の代表格。水溶性と不溶性の両方の食物繊維を含むのが特徴。腸内でコレステロールなどを吸着して排出するとともに、消化吸収をゆっくりにすることで血中コレステロールや血糖の上昇を緩やかにすることが期待されます。また、カリウムなどのミネラルも豊富で、マグネシウムはトップクラス、少量ですがカロテンも含みます。
ポリフェノールの一種クロロゲン酸には強い抗酸化作用が期待されています。

皮の近くにうま味と香りあり・・・

ごぼうの風味とうま味は皮の近くに含まれるので。皮は包丁の背で軽くこそげたり、たわしで洗う程度、手早く調理するのが栄養や機能成分を逃がさないコツです。

 

そろそろ鬱陶しい梅雨が訪れます。雨が続くと体が冷えますが、ごぼうやにんにく、しょうが根菜を上手に使って体を温めたり、なるべく常温のものを食べるのも梅雨を乗り越えるのにおすすめです。

ぱぱっと簡単レシピ

ごぼうと牛肉の炊き込みご飯

<材料3~4人分>
米 2合
水田ごぼう 150g
牛切り落とし肉 150g
酒 大さじ2
赤酒 大さじ2
しょうゆ 大さじ2
塩 小さじ1/2
サラダ油 小さじ2
小ねぎ等 少々

<作り方>
⑴米は炊く30分ほど前に洗ってザルにあげておく。
水田ごぼうはたわしなどで洗い、笹がきにして水でさっと洗っておく。
牛肉は1㎝幅くらいに切る。
⑵フライパンにサラダ油を入れ、中火でごぼうを炒め、牛肉を加えて炒め
肉の色が変わったら調味料を加えて混ぜ、ふたをして弱火で5~6分煮る。
火を止めて具と煮汁に分けて冷ます。
⑶炊飯器の内釜に1の洗い米を入れて、⑵の煮汁を入れ、2合の目盛に合わせて水を入れ、⑵の具をのせて普通に炊く。
⑷炊き上がったらさっくり混ぜ、器に盛って、小ねぎ等を青みを添える。

ごぼうのプチケーキ

<材料:3×9×4cmのミニパウンド6個分>

ごぼう 100g
バター 10g
バター(食塩不使用) 100g
卵 2個
きび砂糖 90g
チョコレート 80g
米粉 60g

 

<作り方>
⑴ごぼうは皮をこそげ、5㎜くらいのあられ切りにして、さっとあく抜きする。
フライパンにバターを入れ、弱火でじっくり炒める。
⑵ボウルにチョコレートを粗く刻み、室温に戻しておいたバターを入れ,湯せんにしてとかす。
⑶卵は卵白と卵黄に分ける。卵白をボウルに入れ砂糖の約半量を入れて固いメレンゲをつくる。
⑷⑵のボウルに残りの砂糖と⑶の卵黄を入れて、よく混ぜる。
⑸⑶のボウルに⑷を入れてメレンゲをつぶさないように混ぜ、⑴と米粉を加えて混ぜる。
⑹型に生地を流し込み、180℃に予熱しておいたオーブンで20~25分焼く。

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持田 成子Shigeko Mochida

野菜ソムリエ上級プロ
女子栄養大学生涯学習講師

女子栄養大学在学中に「野菜のビタミン分析」に携わったことがきっかけで野菜ソムリエ資格を取得。「旬の野菜果物のチカラはココロとカラダを元気にする」をテーマに食育やセミナー、レシピ開発など食の周りで活動中。

野菜ソムリエとは

日本野菜ソムリエ協会が認定する資格。野菜・果物の知識を活かし自らの生活に活かす「野菜ソムリエ」、野菜・果物の専門家「野菜ソムリエプロ」、専門家の最上位資格「野菜ソムリエ上級プロ」と、3段階の資格がある。

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