【Sun】

Vitamin Table 〜第28回 桃のおはなし〜

夏の果物の王様、桃がたわわに実る頃を迎えています。今月は甘い香り、ふっくらした美しい姿が優雅な果物、桃について紐解きます。

桃の歴史

桃の歴史は古く、中国が起源で、中国の中で育種されていた場所により華北系と華中系に分かれます。日本に入ってきた桃が華北系か華中系かは明らかになっていませんが、纏向遺跡(まきむくいせき)で壺に入った桃の種が2千個発見されたことから、奈良時代(三世紀頃)には日本でも栽培されていたと考えられています。
日本では食用というより、主に観賞用として栽培されてきました。また、江戸時代までは滋養強壮などを目的に、桃を漢方として使用していたようです。江戸時代には、接ぎ木方法の記述が残っていることから、観賞用として花桃の栽培が盛んであったことがわかるそうです。
食用の栽培としての品種は明治6年にヨーロッパから桃7品種、ネクタリン6品種、明治8年に清から「天津水蜜桃」「上海水蜜桃」「播桃」が入り、日本独特の白い果肉を持つ白桃のルーツとなり、品種改良したものがほとんどとされています。

明治以降の桃栽培…

明治17年に岡山で袋かけ栽培が始まり、明治28年には岡山で「金桃」が果樹栽培の祖といわれる小山益太により育種。さらに明治34年には岡山で大久保重五郎によって「白桃」、神奈川で「日月桃」など、熱心な栽培家たちは新品種の発見・開発を競うようになり、新品種・育種が続々と生まれていきました。

県下最大の桃の産地はどこ?

人吉・球磨地方は山に囲まれた盆地の気候で、特に季節の寒暖の差が激しく、夏冬の気温差は40℃を超えます。また、昼夜の気温差も大きいため、農産物の糖度が高いという特徴があります。
その中でも、特に錦町は「フルーツの町」として名高く、県下最大の桃の産地として知られており、栽培されている桃は豊かな香りと上品な甘みが特徴です。

3代続く果樹園に、生産者さまを訪ねて…

祖父母様の代から続く勘米良農園をご両親と営む、坂本美鈴さんを訪ねました。
雨よけトンネル栽培、4本仕立ての平棚栽培という方法で、美しく整えられた園地に入った途端、甘い香りに包まれ、とっても幸せな気分に…。
こちらでは、梨と桃を栽培されていますがご両親が継承されてもう40年…、『桃は祖母の前の代からあったそうで、導入のきっかけなどはもうわからないくらい…』小さい頃から袋かけなどの手伝いをしながら育った美鈴さんですが、本格的に農業をやろう!と思ったのは、高校から県立農業大学校に進む頃からだったとか…。県立農業大学校卒業後、ご両親のもとで就農して15年あまり…。最初の10年くらいはただひたすら日々の作業をすること!だったそうです。

ハウスと露地、合わせて80aの規模での桃栽培は、ふくおとめ→はなよめ→日川早生→日川白鳳→あかつき→なつおとめ→つきあかり→川中島→等、栽培法と様々な品種をリレーしながらの出荷です。
桃は、収穫前の気温と降雨量で糖度や品質を左右される栽培の難しい果実のひとつ。その作業は開花→受粉→摘果→袋かけ→収穫時期に反射シートを敷いたり、外したり。収穫もひとつひとつタイミングを図りながら、なるべく大切にもいでいく…。地道かつ丁寧な手作業の賜物で、かぐわしい甘い香りの桃が仕上がっていく、生産現場のご苦労を垣間見た気がしました。

ここ数年は、ようやく段取りもできるようになったと…謙遜される美鈴さんですが、平成26年度の熊本県農業コンクールでは「新人王部門」で受賞、熊本県農業経営塾6期生、昨年度まで熊本県青年農業者クラブ(4Hクラブ)球磨支部の会長を務めるなど、自社の後継者としてのみならず、地域の仲間のリーダーとしても活躍なさっています。
いつも笑顔を絶やさず、一見のんびりそうにお見受けするのですが、内に秘められた農業愛は相当なもの…。園地を案内しながら説明してくださる言葉のひとつひとつにも情熱を感じました。
取材後すぐに待望の第一子をご出産なさった美鈴さん。きっとご自身がそうであったように、甘い香りの桃の木のもとで背中を見せながら素敵な農業ママを実践していかれるのだろうな…。これからのご活躍と美味しい桃の進化形がとても楽しみです。

栄養と機能性

ビタミン・ミネラルはそれほど多くないものの、カリウムは100g180㎎含み、ナトリウムとの体内バランスを保ち血圧を下げる働きをします。
水溶性食物繊維のペクチンは便秘改善効果が期待され、コレステロール値上昇を抑え、動脈硬化予防効果も期待できます。また、豊富なクエン酸やリンゴ酸は疲労回復に役立ち、ナイアシンは冷え性予防に効果が期待できるといわれています。

選び方

形が丸く整い、持つと重みがあって甘い香りを放っているもの。色づきがきれいで、産毛が生えているものがおすすめ。

保存方法

風通しの良い常温で保存。冷やし過ぎると甘みが薄れるので、食べる23時間前に冷蔵庫で冷やすと美味しくいただけます。

甘くてジューシーな桃は健康効果、美容効果も抜群。是非いろいろな品種のなかから好みのものも見つけ、シーズン中にたくさん召し上がって、暑い夏を乗り切っていただけたらと思います。

 

ぱぱっと簡単レシピ

桃のフレッシュゼリー

<材料2人分>

桃 1
砂糖 2530g
水 量は作り方参照
粉ゼラチン 5g
ミントの葉等 適宜

<作り方>
⑴桃のよく洗って皮をむき、皮はゼリー液に使うので鍋に、果肉はくし切りにする。
⑵⑴の皮を入れた鍋に水200ml、砂糖を入れて火にかけ、砂糖が溶けたら桃の皮の色がほんのりピンクに煮だすまで約2分煮る。
⑶⑵を万能こし器でこして皮を取り出し、粉ゼラチンを少しづつ加えては泡だて器でよく混ぜる。水を加えて250mlにする。
⑷⑶のボウルを氷水にあててとろみをつけ、1の桃を合わせて容器に入れて冷蔵庫で冷やし固める。
⑸器にゼリーと桃を層になるように盛り付け、ミントの葉等を添える。

桃と新じゃがの冷たいスープ

<材料2人分>

桃 1
じゃがいも 中2
玉ねぎ 1/4
水 2カップ
塩 小さじ1
生クリーム 大さじ2
パセリのみじん切り 適量

<作り方>
⑴じゃがいもは皮をむき、1㎝の輪切りに、玉ねぎは薄切りにする。
⑵鍋に、じゃがいもと玉ねぎ、水を入れて火にかけ弱火でコトコト煮る。じゃがいもがやわらかくなったら火からおろし、あら熱をとる。
⑶⑵をミキサーに入れ、皮をむいて種を取り除いた桃を乱切りにして加え、なめらかになるまで攪拌する。
⑷冷蔵庫に入れて冷やし、盛り付ける前に生クリームを加えてひと混ぜして器に盛り、パセリを添える。

 

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持田 成子Shigeko Mochida

野菜ソムリエ上級プロ
女子栄養大学生涯学習講師

女子栄養大学在学中に「野菜のビタミン分析」に携わったことがきっかけで野菜ソムリエ資格を取得。「旬の野菜果物のチカラはココロとカラダを元気にする」をテーマに食育やセミナー、レシピ開発など食の周りで活動中。

野菜ソムリエとは

日本野菜ソムリエ協会が認定する資格。野菜・果物の知識を活かし自らの生活に活かす「野菜ソムリエ」、野菜・果物の専門家「野菜ソムリエプロ」、専門家の最上位資格「野菜ソムリエ上級プロ」と、3段階の資格がある。

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