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Vitamin Table 〜第31回 南阿蘇でのおはなし〜

2万2千ヘクタールに及ぶという広大な阿蘇の草原は、長い間人の手により維持されてきました。四季折々の自然の変化とともに、地域の人々による放牧・採草などの草原の利用や、野焼きなどの維持管理の営みが代々続けられることにより、阿蘇ならではの草原の風景が作り出されていると言われています。
そしてその草原は独自の文化を育み、希少動植物の生息・生育の場であり、水源かん養の機能を有する貴重なものです。
幼いころから慣れ親しんだ阿蘇の風景は、訪れる季節ごとに家族と、友人と…また、野菜ソムリエの資格取得以来、多くの生産者様と出逢い、産地アテンドを通してもたくさんのことを教わり導かれてきた、私にとって大切な地域でもあります。また、「世界農業遺産」登録を通じて、様々な活動を見聞し、知り得た阿蘇の歴史や文化、風物詩…。
そんな大好きな阿蘇の景観が、平成28年4月に、二度の震度7の地震に襲われ、その景色は一変してしまいました。

南阿蘇ヘの2つのルートが損壊、震災直後は一時孤立…とも報じられた

平成28年熊本地震により大規模な土砂災害が発生し、国道57号線が寸断され阿蘇大橋が崩落。一方の俵山ルートも、俵山トンネルの崩落や道路の大規模損壊…。
報道で目にする道路損壊はもちろんのこと、農地も住宅も大学も地盤が歪み、施設栽培のハウスはめちゃめちゃ、住宅も損壊し被害は尋常ではありませんでした。
にもかかわらず、地震から2カ月もたたないある日。伺った生産者さんは、『大変だった、大変だった。収穫しても出荷できないし、自家消費や近所にあげるといってもキリがある!たくさん捨てた』と話されました。でも続いて…『でもね、それ以外は大丈夫…南阿蘇は強かった!電気はなかったけど、食料はそれぞれの家にあるし、水はあるし…』。さすが!いい時も悪い時も365日自然と闘いながら、作物と向き合っている農家さんの覚悟と底力をこの短い言葉に感じたことでした。

報道で何度も目にした大規模温室ハウスの被害…

南阿蘇村にある大規模観光施設に隣接した
「阿蘇健康農園」は約八千二百平米のハウスが甚大な被害を受けました。
地盤は歪み、ハウス内の栽培棚は歪んだり損傷したり、壊滅状態の状況。ほ場に伺ったことはなかったものの67年前に展示会で出会ったポットに入ったハーブにはじまり、バジルペースト、ラスク、パスタ…等々、次々に加工品を生み出されており、その生産規模の大きさは想像に余りありました。そんなハウスが壊滅とは…。言葉を失ったのは昨日の事のようです。
1年後にご縁あり出逢った「阿蘇健康農園」原田大介社長は、それでも前を向くしかない!と、一度更地にして、震災前と同規模の温室ハウスを再建されるというお話を伺いました。機会をみてぜひ見学したい、との思いがこのたびやっと叶いました。

年中供給できる安心・安全な栽培を…

東海大学農学部出身の原田社長は、学生時代は有機栽培の研究室で研究に没頭されていたとか…。
隣接の阿蘇ファームランドに採れたて野菜を供給する農園をやってみないかと、母校からオファーを受けた原田社長。冬の阿蘇では露地栽培は難しいと考え、オランダやノルウエーなどの農業先進国を視察して、ヨーロッパ式の温室ハウスを採用することになったのだと・・・設立された2005年頃を邂逅するように語ってくださいました。

再建された温室ハウスへの中へ…

地震後には農林水産大臣も視察されたほど甚大な被害だった農園は、国の復興支援も受けてほぼ同規模で新設されたというフェンロ―型ハウスにご案内いただきました。
設立以来長く培ってこられた、コンピュータ―制御による温度や湿度のコントロール、さらには天敵の昆虫や微生物で病害虫を駆除するIPM(総合的有害物管理)などにより、安定的に供給可能な生産システムでの栽培を再開されています。
太陽光併用の明るい温室に入ると、まず通年栽培されるリーフレタスの区画…。2色のレタスが一面に広がっていました。ここでは、照明を使って10作以上生産可能という、まるで植物工場。液肥を流すといの上にポットの苗を並べ、その白いといが数百本並ぶ光景は壮観でした。

観光と寄り添う農業の復活を目指して…

伺ったときは、数々受賞されているバジルペーストの原料でもあるバジルの作が終了していましたが、12月からオープンする観光いちご狩り用の定植準備が着々と進んでいました。
地震前には年間千六百万人も訪れていたという阿蘇の観光はまだまだ復活とはいえない状況です。原田社長の母校でもある東海大学農学部阿蘇キャンパスも、先頃「震災遺構」としての保存が決定されるなど、この地での再建はなくなりました。
お写真をと、お願いすると、全快パワーの笑顔にはまだほど遠いからとおっしゃいましたが、農学部の実習受け入れはじめ、村内の生産者とも協力し合って、地域全体の再生を目指したいと語られるお姿には、覚悟と信念を感じました。

 

登山用の開通など観光ルートの復旧も徐々に進んでいる南阿蘇…秋を感じに出かけてみませんか。

 

ぱぱっと簡単レシピ

レタスのポタージュ

<材料4人分>
レタス 60g
玉ねぎ 100g
じゃがいも 中1
水 500ml
固形スープの素 1
生クリーム 50ml
バター 10g
塩・こしょう 少々

<作り方>
⑴じゃがいもは皮をむき、薄切りにする。玉ねぎは薄切りにする。レタスはざく切りにしておく。
⑵厚手の鍋に、バターを入れ玉ねぎをしんなりするまで炒める。水と固形スープの素、じゃがいもを加え、ふたをして約15分コトコト煮る。レタスを加えて5分ほど煮たら火からおろし、粗熱とって、ミキサーにかける。
⑶鍋にもどして、生クリームを加えて温め、塩、こしょうで味を調える。

 

 

 

バジルのピザ

<材料(直径約23cm:1枚分)>
強力粉 50g
薄力粉 50g
ドライイースト 3g
砂糖 小さじ1
塩 小さじ1/2
牛乳 70ml(人肌程度にレンジで温める)
オリーブオイル 大さじ1
バジルペースト 大さじ3
中型トマト 4
ハム・ベーコン 好みのもの適量
モッツレラチーズ 80g
バジルの葉 適宜

<作り方>
⑴強力粉、薄力粉、イースト、塩、砂糖をボウルに入れ混ぜ牛乳を加えこねる。 まとまってきたら、オリーブオイルを加えてさらにこねる。
⑵ボウルに⑴を入れてラップをし、30分ほど室温におく。
クッキングシートの上に生地をのせ、めん棒でのばして、バジルペーストをぬりひろげ、ハム、トマト、チーズをトッピングする。
⑷190~200度に予熱したオーブンで約15分焼く。

 

 

 

レタスの生春巻き

 <材料4人分>
ライスペーパー 4
無頭えび 4
(日本酒少々入れた熱湯でさっと茹でて殻をむき、半分にスライスする)
生ハム 4
レタス 1ポット
チリソース 適宜

<作り方>
⑴ライスペーパーは、ぬるま湯につけて戻し、生ハムとレタスをのせてひとまき、えびを外向きにおいてさらにまきこむ。食べやすい大きさにカットして器に盛りつける。

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持田 成子Shigeko Mochida

野菜ソムリエ上級プロ
女子栄養大学生涯学習講師

女子栄養大学在学中に「野菜のビタミン分析」に携わったことがきっかけで野菜ソムリエ資格を取得。「旬の野菜果物のチカラはココロとカラダを元気にする」をテーマに食育やセミナー、レシピ開発など食の周りで活動中。

野菜ソムリエとは

日本野菜ソムリエ協会が認定する資格。野菜・果物の知識を活かし自らの生活に活かす「野菜ソムリエ」、野菜・果物の専門家「野菜ソムリエプロ」、専門家の最上位資格「野菜ソムリエ上級プロ」と、3段階の資格がある。

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