ラテン語で緑の草を意味する「Herba」へルバが語源とされています。人とハーブの歴史は古く、古代ギリシャの医師ヒポクラテスの文献には267種類の薬草を使っていたことが記されているのだそうです。その後薬草はヨーロッパへ渡っていきました。医療は教会から生まれたとされ、薬局の役割を果たしていた修道院ではガーデンで数々の薬草(ハーブ)が栽培され、そこから数々のレシピが生まれていったということです。そういえばヨーロッパを旅した時、大きな教会の横には薬局があり、クリームなどを求めたことを思い出しました。
医学が発達していない時代、抗菌力をはじめとする薬効によって感染症に対処し、心身の失調を癒し、病気を治す薬草として使われてきた歴史があるのです。
ハーブは薬用のみならず、食用、祭儀用としてその用途は広かったようですが、日本でもヒノキやヒバなどの香り高い植物、民間療法として親しまれてきたビワやドクダミ、ヨモギなどの薬草があり、山椒やわさび、青じそなどの香草、それらを使った手当や健康食のレシピは全国津々浦々に存在しています。
Vitamin Table 〜第38回 ハーブのおはなし〜
新しい時代「令和」のスタートに相応しく新緑がキラキラと眩しい季節の到来です。楠若葉を渡ってくる風も爽やかですが、慌ただしく駆け抜けた春からふっと気が抜けて、心身の疲れを感じてはいらっしゃいませんか。
今月は、そんな「なんとなくの不調」にも助けになる「ハーブ」のあれこれを紐解きたいと思います。
「ハーブ」という言葉の語源と歴史は・・・
ハーブいろいろ・・・
スイートバジル
原産地はインド。一般に用いられるのは光沢ある緑の葉をつける、スイートバジル。イタリア・フランス料理に欠かせないハーブ。
ローズマリー
原産地は地中海沿岸。ヨーロッパでは魔除けの聖木として古くから知られていて花嫁が一枝身に着ける習慣がある。野生的な森林のような強い香りが特徴。イタリアでは頻繁に用いられるハーブのひとつ。肉類のローストや青魚類、じゃがいも、チーズなどにも向く。
チャービル
原産地はヨーロッパ中部。美食家のパセリとも呼ばれる。形はパセリに似ているが味はやさしく甘い。
オレガノ
原産地はヨーロッパ。ヴィーナスの手にふれたため今でもよい香りがし続けるという言い伝えがあるハーブ。トマトとの相性が大変良くイタリアやメキシコ料理には欠かせない。
セージ
原産地は地中海沿岸。ラテン語で治療するという意。臭み消しと防腐作用の目的でソーセージつくりには欠かせないハーブ。
タイム
原産地はヨーロッパ南部。香りは爽やかで野菜・肉・魚・卵とどんな素材とも合い、加熱しても風味が落ちたり変化しないので色々な料理法が楽しめる。生のままサラダでも…。乾燥させても香りも損なわれない。
ミント
原産地はヨーロッパ南部、ユーラシア。ミントの仲間は世界各地に自生していて、繁殖力が強く交配しやすいので品種は多数。清涼感あるスペアミントは爽やか、ペパーミントはピリッとした清涼感。フルーツの香りがするものも様々な種類がある。
カモミール
一年草のハーブで、可憐な白い花はリンゴのような香りがあり、風邪・頭痛・下痢などに薬草茶として利用されてきて、ドイツでは治療目的での使用も承認されている。
ハーブと花の生産者「ナチュラルハーブ香草園」を訪ねて
春の潮風を感じながら一路天草へ…。全国で数少ないハーブとエディブルフラワー(食用花)を栽培する市来さんご夫妻を訪ねました。
市来さんご夫妻は移住者。東京でビジネスマンとして活躍され、奥様はご自宅でいろいろなハーブを栽培、ハーブ教室をなさっていたそうですが、東京育ちの奥様に「ハーブが育つところなら…」とOKをもらって、4年前に温暖な天草にいらしたそうです。この地で新規就農者として取り組まれるハーブやエディブルフラワーの栽培は、農薬を使わない露地栽培。
ご自宅の畑ではビオラやマイクロハーブたちが盛りを迎え、栖本湾を望む段々畑では、ボリジや豆類の白・紫の花、カーボロネロやアブラナ科の野菜たちの黄色や白の花たちが盛り…ミントもローズマリーも豊かな香りを放って迎えてくれました。
温暖な気候とはいえ、実はハーブたちは冷涼な気候を好むものも多く、天草の強い日差しや気温が生育に良くない結果をもたらすことも多々あるのだと…。それでもポジティブに、様々な試行錯誤をしながら取り組まれてきた結果、「90%はレストランへの出荷なんです」とおっしゃるように、県内外を問わずプロからの注文がひっきりなし。時には「こんな品種を栽培して欲しい」とのオーダーも来るほど…。技ありのベテラン生産者さまからの土づくりの助言もいただきながら、真摯に取り組まれるご夫妻が積み重ねられた努力の賜物なのだろうと感じました。
市来さんは、ちょうど栽培を始められた頃に「熊本産エディブルフラワー」を探し求めていてお知り合いになった生産者さまなのですが、畑に伺うのは何と初めて…。近くで高齢の生産者さんが困っていたらすぐさま駆け付けられる、声を掛け合う…そんな優しく温かいお人柄が、地域に受け入れられ、地域に根差していく。ご夫妻が紡いでいかれるこの地でのハーブたちとの歴史を想像しながら、畑を後にしました。
料理の風味付けだけでなく、香りを楽しんだり…。ハーブのビタミンやミネラルなどの栄養や香りによる心身のリラックス効果を日々の暮らしに役立ててみませんか。
ぱぱっと簡単レシピ
ミントとタコのマリネサラダ
<材料2人分>
ミント 小10枝
ゆでだこ 120g
ミニトマト 10個
サラダみかん はるか 1個
サラダ玉ねぎ(みじん切り) 大さじ2
◉ マリネ液
酢 小さじ2
オリーブオイル 大さじ2
レモン汁
塩・こしょう 少々
<作り方>
⑴たこは薄切りにする。ミニトマトは4つ切りにする。ミントは葉を摘む。
⑵ボウルにマリネ液の材料を合わせて、ミニトマト・玉ねぎ・ミントを加えて混ぜ、タコを加えてざっくり混ぜる。
⑶サラダみかんは皮をむいて薄切りに、器に並べて⑵を盛り付ける。
ハーブのサラダ寿司
<材料2人分>
イタリアンパセリ 2枝
ごはん 300g
サーモン 80g
たこ 60g
スナップエンドウ 4個
塩・こしょう 少々
オリーブオイル 大さじ1
すし酢 大さじ2
<作り方>
⑴ごはんはボウルに入れてすし酢を混ぜておく。
⑵イタリアンパセリは洗って水けをとり、みじん切りにする。
⑶サーモン、たこは1㎝角に切る。スナップエンドウは茹でておく。
⑷⑴のボウルに⑵と⑶を加えて、塩・こしょうとオリーブオイルを加えて混ぜる。すし酢で好みの酸味に整える。
ハーブチーズのカナッペ
<材料(作りやすい分量)>
クリームチーズ 100g
イタリアンパセリ・チャービル・ローズマリ―等のみじん切り 大さじ1
こしょう 少々
ミニトマト 適宜
ハーブ 適宜
好みのパン 適宜
<作り方>
⑴クリームチーズは室温でやわらかくしておく。
⑵⑴にハーブ(洗って水けをよくふいてみじん切り)とこしょうを加えて混ぜる。
⑶パンに適量ぬり、カットしたミニトマトやハーブをのせる。
- Vitamin Table
Vitamin Table
女子栄養大学在学中に「野菜のビタミン分析」に携わったことがきっかけで野菜ソムリエ資格を取得。「旬の野菜果物のチカラはココロとカラダを元気にする」をテーマに食育やセミナー、レシピ開発など食の周りで活動中。
野菜ソムリエとは
日本野菜ソムリエ協会が認定する資格。野菜・果物の知識を活かし自らの生活に活かす「野菜ソムリエ」、野菜・果物の専門家「野菜ソムリエプロ」、専門家の最上位資格「野菜ソムリエ上級プロ」と、3段階の資格がある。